京大の自治が死ぬ?総長選挙の教職員投票廃止か ~京都大学教職員緊急集会 2013.12.24

記事公開日:2013.12.24取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 松本紘京都大学総長は、今まで行なっていた、総長選考のための教職員意向投票を突如廃止し、学内委員6名、学外委員6名の密室会議により、総長を決めようとしている。さらに、6年限りの任期も再任可能にするという。選考会議は非公開で行われるため、京大職員組合、全大教、京都総評、教職員、学生たちが反対を訴えた。

 全大教の長山氏は「文科省は、国立大学改革プランで、産業競争力の強化のためとし、国立大学の株式会社化を目論んでいる」と指摘。また、教職の菅原氏は「政府はファシズムへと突き進む。そんな危機的状況を、一番最初に感じ取り、反乱を起こすのが学生だったが、今、学生たちは自分の未来を安定させることしか考えていない」とも述べた。

 2013年12月24日12時より、京都市左京区にある京都大学吉田キャンパス本部構内の時計台前にて、民主的な総長選挙の存続を求める「総長選挙学内意向投票廃止阻止 12・24緊急集会」が行われた。今回、京都大学総長の選出を、学外委員6名(政策研究大学院大学教授 有本建男氏、日本学術振興会理事長 安西祐一郎氏、西日本電信電話株式会社取締役相談役 大竹伸一氏、京都市長 門川大作氏、立命館大学教授 土岐憲三氏、堀場製作所最高顧問 堀場雅夫氏)と、学内委員6名(経済学研究科長 植田和弘氏、教育学研究科長 前平泰志氏、薬学研究科 佐治英郎氏、工学研究科長 北野正雄氏、アジア・アフリカ地域研究研究科長 梶 茂樹氏、東南アジア研究所長 清水展氏)だけで決めようとする、選考会議(12月25日13時)への反対集会である。

■ハイライト

大学はグローバル化のための経営組織へ?

 集会は、京都大学職員組合副委員長 高山佳奈子氏の意見表明で始まった。「大学側が情報を隠しているため、マスコミもまったく取り上げない。総長選考会議はまったくの非公開で、情報統制が敷かれている。そんな京大は、賃金および研究費削減、非常勤職員の5年雇い止め、夏休みの無給化と通勤手当廃止などで、150億円留保している」。

 「情報公開を求め、非人道的扱いに反対する。その賛同を求めたネット署名では、現在700筆が集まった」と訴えた。(12月20日から24日、ネット署名と署名用紙で募った『民主的な総長選挙の存続を求める緊急アピール賛同署名』は、結果1000筆を超えた。)

 次に、全国大学高専教職員組合(全大教)書記長 長山泰秀氏がマイクを握った。「今回、京大で起こっている事象は全国にも共通し、根は一緒だ。2004年に国公立大学法人化となり、国が予算で縛るようになった。文科省は、国立大学の産業競争力強化のための改革だという」。

 長山氏は「この動きは、グローバル化、イノベーション創出、人材養成のためのガバナンス改革だ」と述べ、さらに、「12月17日、経団連は発表文書の中で、大学を経営組織体と定義し、学長選考、任期にも触れている」と、政府と産業界が押し進める大学改革の真意を読み解いた。

株式会社化する京都大学

 京大名誉教授 加藤利三氏の、学内意向投票廃止を批判したメッセージを紹介した後、京都総評事務局長 梶川憲氏がスピーチした。「大学の民主的自治が潰されることは、社会そのものへの巨大な乗っ取りが始まっている証左でもある。日本経団連は安倍政権の元で増長し、大学組織を経済活動の一端に組み込もうとしている」。

 その上で梶川氏は「第1次安倍内閣で教育基本法を改悪し、そして現在、門川大作京都市長(学長選考委員)とともに、大学自治を潰そうとしていることは断じて許せない」と声を荒げた。

 人環(人間環境学部)有志の会の坂上氏は、「今回も、一般教養科目を改革するための国際高等教育院設置の時と同じように、松本紘総長の強引なやり方で進められている。京都大学を株式会社に変えようとしている」と反対を訴えた。

 また、人間環境学研究科の菅原氏は「国際高等教育院の目的は、英語圏の教師を大勢、雇い上げるため。これは安倍政権と文科省の方針であり、政府はファシズムへと突き進む。従来は、そんな危機的状況を一番最初に感じとり、反乱を起こすのが大学生だった。今、学生たちは、自分の未来を安定させることしか考えていない」と指摘した。

誰も気づかない方法で変わっていく大学

 次に、京都大学職員組合中央実行委員長 西牟田祐二氏が、「今回の情報を得たのは1週間前だった。誰も気づかない手口で、京大が変わっていく。合法性の仮面をかぶってやって来るので、気をつけなくてはならない。総長選考会議も、突然、非公開になった。暴挙だ」と訴え、総長選考委員12名(学外6名、学内6名)の氏名を読み上げた。

 傍聴していた理学部学生が進み出て、「若者たちが率先して、元気に声を上げていかなくてはいけない」と述べた。高山氏は、ネットで寄せられた応援メッセージを紹介した。

 西牟田氏が「民主的な総長選挙の存続を求める緊急集会アピール」を読み上げ、「学内委員6名、学外委員6名のみの総長選考会議の議決で、5000名以上の全職員の権利を奪おうとしている。12月25日の教職員意向投票廃止を強行しないこと。総長選考会議の議事録公開。京大全教職員の意見を聞くこと」と訴え、盛大な拍手によって文言が採択された。最後に、参加者一同でシュプレヒコールを上げて終会した。

 

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