「民主主義とは何か」を問い直す~国連・人権勧告の実現を目指し、有識者らが提言 2013.12.14

記事公開日:2013.12.14取材地: テキスト動画
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(IWJ・安斎さや香)

 国連人権勧告の実現を求めた報告会が14日に開催され、270名の市民が参加。朝鮮学校無償化排除問題、アイヌ・琉球問題、福島原発事故後の「健康の権利」問題、日本軍「慰安婦」問題など、日本の人権状況について、テーマ別に報告が行われた。

■ハイライト

  • 基調講演 荒牧重人氏(山梨学院大学教授)「国連人権勧告と日本」
  • 連帯アピール
    ブライアン・ベッカー (Brian Becker) 氏(ANSWER事務総長)
    マーラ・バーヘイデン=ヒリアード (Mara Verheyden-Hilliard) 氏(Partnership for Civil Justice Fund)
  • 報告
    宋恵淑(ソン・ヘスク)氏(在日本朝鮮人人権協会事務局)朝鮮学校無償化排除問題
    上村英明氏(恵泉女学園大学教授、市民外交センター代表)沖縄・アイヌ問題
    寺中誠氏(人権共同行動事務局長)国際社会から見た日本の人権状況
    伊藤和子氏(ヒューンマンライツ・ナウ事務局長)国連人権理事会グローバー勧告を受けて福島原発事故後の「健康の権利」と被災者支援を問い直す
    渡辺美奈氏(女たちの戦争と平和資料館 [wam] 事務局長)日本軍「慰安婦」問題
  • 主催 「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会
  • 告知 国連・人権勧告の実現を!~すべての人に尊厳と人権を~(集会のお知らせ)

 「国連人権勧告と日本」というテーマで基調報告した山梨学院大学の荒牧重人教授は、主要な人権条約に基づく国連勧告を受けての日本政府の対応などを報告。政府が国連勧告を履行しておらず、人権NGOとの対話も形式化していることから、日本政府が国連勧告やNGOを軽視し、不誠実な対応に終始している姿勢を批判した。荒牧教授は、国連勧告が「法的拘束力を持つものではない」、「従うことを義務づけているものではない」としている日本政府の認識を問題視し、NGOの取り組みなどを通して世論を啓発・形成することで、国が動かざるをえない状況をつくっていくことが重要だと訴えた。

朝鮮学校の無償化排除をめぐる問題

 在日本朝鮮人人権協会の事務局を務める宋恵淑(そん・へすく)氏は、日本政府の高校無償化政策から朝鮮学校が排除されている問題について報告し、国連勧告を無視し続け、勧告に反論の意向を示している日本政府を厳しく批判。朝鮮学校への適切な資金援助が行われるべきと訴えた。

アイヌ・琉球の先住民族の権利をめぐる問題

 先住民族の問題に取り組む市民外交センター代表で恵泉女学園大学の上村英明教授は、冒頭、「安倍政権であり、日本社会がどういうクオリティを持った社会なのかという議論をしないと、モグラたたきになってしまう。我々が10年20年30年経験したことは、モグラたたきの歴史。いいものが出てきたかと思うと、その反動的な動きが出てきてしまう。それをどうやって息の根をとめるか、ということを考えなくてはいけない」と呼びかけた。

 先住民族の権利に関する一番大きな問題は「(先住民族という)存在の認知がないと議論が始まらない」ことだと上村教授は指摘。アイヌは2008年に日本政府が先住民族だと認知したが、「名目だけの認知で実体の権利は全く進んでいない」とし、「逆行しているといってもいい状況が続いている」と報告した。上村教授によれば、政府は「アイヌ文化の振興はするが、アイヌ民族の経済・社会的状況、教育、土地など具体的な問題に関してはほとんど何もしていない」という。

 琉球民族の場合は、「いまだに沖縄県民、日本国民の一部であると言われている」と、先住民族との認知すらされない現状があり、米軍基地がたくさんあるのは「地理的な理由」だとして片づけられていることを批判。琉球では歴史的な清算がされておらず、「構造的差別」が100年も昔から存在し、米軍基地の異常な集中の背景には、そうした差別の構造があることを問題視した。

平等な社会の実現のために

 「日本という国は国内に公正さを実現するためのシステムを持っていない」。上村教授はこう問題提起し、「人間は同じ平等性を持つが、一人一人の人間は、違う歴史や違う文化や違う観念を持って育ってきた。それを尊重しなければ本当の意味での平等の世界にならない。いろんな歴史や文化を持った人たちが平等に暮らせる社会をつくっていかなくてはならない」と、平等な社会の実現のためには、人々の多元性・多様性を公正に扱うことが重要だと提言した。

 上村教授はさらに、「日本は植民地主義に対する根本的な反省が足りない」とも主張。「民主主義とはなにか、市民社会とはなにかということを根本から考えなくてはならない」と指摘し、人権の基準をどう実現するかという問題について、一人一人の人権の自由をきちんと位置付け、国連をはじめとする国際的な流れを日本の中できちんと導入することが大事であると呼びかけた。

福島原発事故後の「健康の権利」をめぐる問題

 人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士は、福島原発事故後における「健康の権利」について、国連特別報告者アナンド・グローバー氏の勧告に従おうとしない政府の対応を「被害者切り捨てのやり方ではないか」と批判。政府が定めた年間20ミリシーベルトの基準は今も生きており、2014年からはこの基準を下回っている場合、避難区域設定が解除され、帰還しない住民の賠償金が打ち切られてしまうため、帰還の強制が起きることに懸念を示した。

 最後にあいさつしたピースボートの野平晋作氏は、ノーベル平和賞を受賞したネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領の逝去に哀悼の意を表した安倍総理のコメントに、「お前が言うなよ。安倍総理とマンデラ元大統領とは真逆な存在だ」と、誰かが返信コメントをしていたと紹介。「安倍政権が進めることを黙認するのであれば、我々がキング牧師やマンデラ元大統領とは真逆な存在になる。彼らを尊敬しているのであれば、デモに参加しよう」と、人権運動への参加を広く呼びかけた。

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「「民主主義とは何か」を問い直す~国連・人権勧告の実現を目指し、有識者らが提言」への1件のフィードバック

  1. こいけた七味 より:

    これは重要な提言。
    これほど為政者とその地に住む人々の意志との乖離が際立ついまこそ、経済戦略だの防衛軍だの外へ向けた拡大指向ではなく、ひとりひとりの権利を丁寧に確立し、しわ寄せのない”本当”の民主主義を力をあわせて創りあげていく転換期にしたい。
    記事だけでも、ぜひ。

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