「たかが電気に、命をかけるのは馬鹿げている」 ~田中優氏講演会 未来を創る自然エネルギー 2013.11.27

記事公開日:2013.11.27取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 「原発に頼らなくても、やっていける。パーソナルにエネルギーを自給する時代になる」──。

 2013年11月27日、茨城県ひたちなか市のワークプラザ勝田において、田中優氏講演会「未来を創る自然エネルギー」が行われた。田中氏は、自給率の低いものが国を滅ぼすとし、「自然エネルギーによるエネルギー自給が、日本復活につながる」と述べた。

■Ustream録画(09:58~ 2時間39分)

電気を作ることより、消費しないことを考えよう

 田中優氏は、東京電力の時間あたりの電力消費量を調べた結果から、「8760時間(1年間)の電力消費を、多い方から順に並べてみた。発電量の余裕が100万キロワット以下に落ちた時間は、5時間だけである。1年間に5時間しかないピークのために、発電所を再稼働させたり、作ったりするのは合理的といえない」と指摘した。

 ピーク電力を減少させる簡単な方法として、「その5時間の対策をすること。ピーク時の電力消費の9割は企業であり、その時間帯は、夏場平日の午後1時から3時にかけてだけ、である。だから、その時だけ、事業者の電気料金を高くすればいい。そうすれば、(企業努力で)ピークを下げることは可能である」と提案した。

 また、実際の取組みに関して、「北九州市の一部では、ピーク時になると電気料金が通常の10倍高くなる仕組みを作り、ピークを17%減少させている。アメリカやヨーロッパでも、同様の取り組みをしている。ピーク時だけ電気料金を高くする仕組みにすると、事業者は節電するのだ」と述べ、「これにより、原発をなくすことが可能」と指摘した。

自然エネルギーを組み合わせることで日本の電力を賄う

 自然エネルギーに関しては、まず、風力に触れて、「大規模にやるのは、風車が良い。風車は効率がよく、安く発電できる方法のひとつである。海上は抵抗になる建物がなく、風が強く吹くので、そこに風車を並べる。さらに、低周波騒音が出ても、人がいない。だから、海の上がいい」と話した。

 続いて、地熱発電について、「日本の場合は、発電と温泉の元がぶつかってしまう。それで、お湯を吸い上げると温泉が枯れてしまうこともある。そこで、100度の源泉を入れて、60度で出す機械を使う。温度が下がる間に発電をすれば、100度で沸いている温泉を40度に下げるために水を足してる分を、発電に利用できる。実は、工場などの排熱も、その70%は200度あるので、工場が出している排熱を機械につなげば、発電できてしまう」と活用法を提示した。

 田中氏は、もうひとつ、大きなポテンシャルを持つエネルギーとして、海流を挙げ、「黒潮の流れは、世界でもっとも強い流れである。そこに機械を設置すれば、水力発電のように発電に利用できる。また、水は空気の800倍の密度があるので、効率的に発電できる」と述べ、これら自然エネルギーを使うと、日本のすべての産業が使う電気を賄うことは可能、と主張した。

エネルギー自給が将来の家庭の姿

 田中氏自身の電気に関する取組みについて、「わが家では、電力会社のメーターがなくなった。太陽光発電にバッテリーを導入して、自給できる仕組みを作った。今は、電力会社の電気とはつながっていない」と述べ、「『原子力発電を止めると原始時代に戻る』とか、『江戸時代の暮らしをしたいのか』と言った人がいるが、今や、たかが電気に命をかけるのは馬鹿げている。原発に頼らなくても、やっていける時代が来た」と電気の自給が現実的であるとした。

 さらに、「将来は、家庭の電気製品を省エネ製品にして、そこに太陽光発電で電気を入れる。余った電気はバッテリーにプールし、さらに余ったら、電気自動車にプールし、自給していくのが当たり前になる。電気料金を、誰かに払うことはなくなる。エネルギーが、どこからか届くことは終わりにして、パーソナルにエネルギーを自給する時代になる」と、未来の電気供給のあり方に言及した。

 この仕組みが原発廃炉につながるとして、「東京電力の利益は、家庭や小さな商店での消費が91%を占めている。これらが電気の自給を始めると、電力会社は焦り始める。利益が得られなくなるからである。そうすると、コストを意識せざるを得なくなり、今まで発電コストがかかっていた原発を止めるしかなくなる。家庭で電気を自給すれば、『東京電力の電気はいらない』と言うことができる」と述べ、その方向性を提示した。

ヒーローはいらない。個人ができることを持ち寄る社会が理想

 田中氏は「自給率の低いものが、国や地域をダメにしていく」として、「日本で、もっとも自給率が低いのはエネルギー。わずか4%である。そのエネルギーのために、日本は莫大な金額を海外に払っている。2008年が過去最大で24.5兆円を海外に支出。日本は実質国家予算が40兆円レベルなので、24.5兆円も海外に払うと、貿易収支に影響が出る。2011年は、31年ぶりに貿易赤字になった。2012年は、4兆円の赤字である。日本は、明らかに世界から消えようとしている。ダメな方向へ邁進している」と現状を危惧した。

 「ここから脱するためには、自然エネルギーによるエネルギー自給が必要だ」と主張する田中氏は、「(自給すれば)24.5兆円が国内に回る。雇用は増え、地球温暖化は止まり、エネルギー奪い合いの戦争も起こらない。今後、安心して暮らせるようになる。これだけで、社会は変っていく。だから、私たちは、未来の社会をきちんとイメージして、多くの人に、このイメージを伝えていかなければならない」と力説した。

 田中氏は、「自然エネルギー推進に必要なのは、『自分にできることを、考えること』である。ヒーローを待ち望む社会は、ダメな社会。ヒーローは、必ずファシストになる。だから、望んではいけない」と警告し、「みんなが少しづつの力を出し合って、社会を変えていくことが重要である。いろんな人たちが、自分のちょっとした才能を持ち寄って運動を作っていくことが、これからの社会のあり方である」と主張した。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

「「たかが電気に、命をかけるのは馬鹿げている」 ~田中優氏講演会 未来を創る自然エネルギー」への1件のフィードバック

  1. @garirouさん(ツイッターのご意見より) より:

    内容がとても素晴らしいので、オススメ
    2013/11/27 田中優氏講演会 未来を創る自然エネルギー
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/113652
    内部被曝の問題や、その解決法、電気の問題など、非常に有益な話があります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です