2013年10月4日、岡山市の長泉寺で、元東電技術者の木村俊雄氏をメインスピーカーに迎えて、講演会「メルトダウンは津波ではなく地震で引き起こされた!」が開かれた。この8月にようやく公開された、福島第一原発の過渡現象記録装置のデータ解析を終えた木村氏は、「地震による原子炉停止直後に、本来自然循環するはずの炉内の水が止まっていた。地震で細い配管の破損が起きた可能性が非常に高い」と力説した。これは、「福島第一原発のメルトダウンは、想定内の地震によるもの」ということを意味し、フクシマショックの原因を、津波から「東電の怠慢」へとシフトさせる力を持つ新事実である。
- 主催あいさつ 大塚尚幹(おおつか・しょうかん)氏
- 講演 木村俊雄氏(元東電原発技術者)
- 鼎談 木村俊雄氏/田中優氏/大塚尚幹氏
- ライブ 津軽三味線 蝦名宇摩(えびな・うま)さん
「大学で、学問の形で原発を学んでも、『現場での実務』を知らなければ、福島第一原発事故の真実は見えてこない」。大手メディアにも登場している木村氏は、過去にこのような発言をしている。約10年前、原発運営を巡る職場のあり方に嫌気が差して、東京電力を退社。従事していたのは、福島第一原発の挙動解析などの業務だった。今は高知に暮らし、自給自足型のライフスタイルを実践する木村氏は、この日、開口一番「東電、原子力規制庁、原子力規制委員会が作った原発再稼動に向けた新安全基準に、とても腹が立っている」と怒りを表明した。
東電が公開を渋った重要情報とは
「原因は『津波』ではない。福島第一原発は、まず地震で深刻なダメージを受けた、という仮説を立てて、私は解析を行ってきた」。木村氏はこう振り返り、このほど得た結論を、「見立て通り『地震』で配管が破損していたことがわかった」と説明した。
木村氏は、この解析結果を、元国会事故調査委員の田中三彦氏(科学ジャーナリスト)と後藤政志氏(元原子炉格納容器設計者)にぶつけたことを報告。「昨日、広島であった人権擁護の集会で2人と話したが、理解してもらえなかった。彼らのプライドが理解を妨げたのかもしれないが、真実はひとつしかない」と述べた。
東電の事故調査報告(今年6月発表)が、「福島第一の原子炉は、地震の影響を受けなかった」としていることに、木村氏が疑問を抱いたことが出発点だったという。「報告書には、私が福島第一原発で働いていた時に、日々接していた、炉心内の水の流れを示すデータが含まれていなかった。私は、東電の情報公開の姿勢をよく知っているから、『これは何かを隠している』と、すぐ思った」。
木村氏は、7月、東電にデータの全面公開を要求。「過渡現象記録装置」と呼ばれる、航空機のボイスレコーダーのような記録装置が、100分の1秒単位で、津波の襲来で電源が失われるまでの状況を詳しく記録したものを入手しようとしたのだ。東電が全面公開に応じたのは8月末のことで、木村氏は、それからの約1カ月間を公開されたデータの解析に費やすことになる。
どう考えても「再稼動」はあり得ない
木村氏が着目したのは、原子炉内で水を強制循環させるジェットポンプの中を流れる水量の異常。「地震が起きる前は、1時間で約1万8000トンあった。その後、地震の発生を受けてポンプが止まるが、通常は自然循環で同約2100トンは残る。が、あの事故では結局、ゼロ以下で安定してしまったのだ。東電は、この事実を隠したかったのだろう」。
木村氏が得た結論はこうだ。地震発生から約90秒後、つまり、津波襲来前の時点で、原子炉圧力容器につながっているジェットポンプの配管が破損している可能性が極めて高い──。
「地震による配管破損こそが、フクシマショックを非常に深刻化させた要因だ」と力説した木村氏は、「どんなに津波対策を強化しようが、配管の耐震性に問題があれば、原発の安全確保には至らない。つまり、(今の規制基準を刷新して)原子炉まわりを走る数多くの配管の耐震性評価を、もっときちんとやり直さない限り、原発の再稼動は絶対にあり得ない」と訴えた。ただ、木村氏は、たとえ評価をやり直しても既存原発の配管の耐震性を引き上げることは、コストなどの面で極めて難しいとも指摘。「原発再稼動はあり得ない」と重ねて強調した。
さらに木村氏は、国会事故調や原子力規制庁、原子力規制委員会が、東電の報告書の矛盾に気づかないことに苛立ちをみせた。「報告書は、『格納容器から放射能が漏れ出すのは、3月12日の未明』としているが、一方では『津波襲来後の3月11日17時19分、原子炉建屋に入ろうとした運転員は線量が高くて引き返している』ともしている」。配管破損によるメルトダウンは、津波襲来前か襲来と同時点で始まった、というのが木村氏の主張だ。
原発推進派の致命的な誤りを証明
木村氏は、こうした解析結果を「東京電力『福島原子力事故調査報告書』の考察」と命名してインターネット上に公開中である。今後は、原発再稼動の阻止に向け、多面的な働きかけを行っていくという。「それでもまだ、(東電をはじめとする原発推進側が)耳を貸さないのなら、あの人たちはどうしようもないが、そうさせないためにも、理解のある国会議員の協力が不可欠。市民有志には、私の解析結果の共有による世論の喚起をお願いしたい」。
続く第2部は、田中優氏(文筆家・環境活動家)と、この集会の主催者で木村氏と昵懇の間柄である大塚尚幹氏(建築士)を加えての討議を行った。田中氏は「今、原発推進側は津波対策に力点を置いているが、木村さんの原因究明で、配管に問題があることが浮き彫りになった。要するに、津波対策に注力して再稼動させても、また地震があれば、第2、第3のフクシマショックが起きる可能性があるのだ。私たちは、この重大事実を広く知らしめていかねばならない」と訴えた。
そして、木村氏が「今日の話は、1号機に関するものだが、2号機と3号機でも、やはり水の自然循環は止まっていた」と伝えると、田中氏は「ジェットポンプの配管は耐震上、重要系統として扱われないのか」と疑問を呈した。これに対し、木村氏は「クラス3だから重要度は低い。その前提には『微少な漏洩は問題ではない』という原発推進側の見識があるが、今回の私の解析で、彼らの見識が間違っていることが証明された」と応じた。
木村俊雄さまの実に適切なご説明大感激です。
そして、このような解析結果を公表する勇気にも大感激です。
泉田新潟県知事との御共闘でも、頑張って下さい。
お願いして申し訳ありませんが、当日の会場でお配りになった資料が入手できないものでしょうか?
それをもとに、私なりに、私の周囲の人たちにも、木村さまの”原発事故は、大津波が原因ではなく、地震が原因である”との御説を広めたく存じます。
このコラボを高知でも再現したい★