TPP知財草案で浮かび上がる米国の「保護主義」~第22回国民の医薬シンポジウム 2013.11.24

記事公開日:2013.11.27取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJ・野村佳男)

特集TPP問題

 「あきらめることはない。まだ、TPP交渉は止められる」――

 11月24日、東京都文京区の平和と労働センター・全労連会館にて、医療関係者らによる「第22回国民の医薬シンポジウム」が開催された。

 午前の部には、民間の医薬品監視機関である薬害オンブズパースン会議の水口真寿美事務局長、東京大学の醍醐聰名誉教授の二人が登壇し、「医薬品の安全性確保とTPP」をテーマに講演を行った。午後の部のシンポジウムでは、「『子宮頸がん予防』ワクチンの必要性・安全性・有効性」と題し、子宮頸がん問題に取り組む医師や科学者らによる討論が行われた。

 安倍政権によって日本が2013年7月から交渉に参加している環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は、医薬品の分野でも、日本的な「国民皆保険」制度が崩壊し、米国的な「格差医療」が推進されると言われている。TPP締結により、数々の薬害訴訟を経て確立してきた日本独自の規制システムが危うくなることも指摘されており、医薬品の安全性確保が脅かされるという危機感が、医療業界に高まる中での開催となった。

記事目次

■ハイライト

  • 午前の部「医薬品の安全性確保とTPP」
  • 講演 水口真寿美氏(弁護士、薬害オンブズパースン会議事務局長)
  • 追加報告 醍醐聰氏(東京大学名誉教授)
  • 日時 2013年11月24日(日)
  • 場所 全労連会館(東京都文京区)
  • 主催 第22回国民の医薬シンポジウム実行委員会

TPPは「米国の企業や投資家の利益を守るための条約」

 始めに講演に立った水口真寿美弁護士は、2010年3月に始まったTPP交渉の経緯を説明し、後発の日本が交渉で独自性を発揮できるわけがないと主張。事実、重要5品目の関税撤廃や、自動車の輸入数値目標、ISD条項など、当初自民党が受け入れないと公約していた条件が次々と合意されそうな動きであると指摘した。

 さらに、TPP問題の本質は「非関税障壁」にあるとし、国の規制や法制度に干渉し、憲法秩序を脅かすものであると説明。TPPは自由貿易協定であると言われているが、実際は、米国の企業や投資家の利益を守るための条約というのが本質だと述べた。

ISD条項で国の政策までもが争われる

 水口氏は、TPP協定違反による損害賠償請求制度であるISD条項は、仲裁手続きにおいてどのように議論され何が決まっていくかは公開されず、上訴もできない仕組みであることに懸念を表明した。

 ドイツの脱原発政策に対してスウェーデンの電力会社が起こした37億ユーロ(5000億円)の賠償請求など、ISD条項によって一国の政策までもが争われる事態も起きているという。賠償額の大きさもさることながら、仲裁の透明性や結果が予測できない中で、国の政策を決めていかなければならないという、「萎縮効果」が問題だと訴えた。

 国は訴訟を回避するためには、先回りして法律を改正し、それにより過度の規制緩和をもたらす可能性がある。「それはもう始まっている」と、水口氏は語る。「『TPPに違反してしまうかもしれない』といえば、規制緩和推進派との勝負がついてしまうだろう」と述べ、ISD条項がTPP全体の枠組みの中で、危険な使われ方をされることを指摘した。

 水口氏によると、実際、韓国では、米韓FTA締結後に63もの法律が改正されたという。たとえば、韓国政府のエコカー補助金制度に対して、米国は「阻害要因だ」と主張、制度が棚上げにされてしまった。また、学校給食における地産地消の条例が、自由競争の障壁だとして、撤廃するよう韓国政府が自治体に指示したことも紹介された。

医療の自由化とは「保険が売れるシステムにすること」

 医薬品の安全性にとって、TPPはどのような影響を及ぼすのか。水口氏は、TPPには医療分野という項目はないが、知的財産権や物品アクセス(関税)、横断的事項などの項目に関連していると解説。また、TPPは「ネガティブリスト方式」といい、個別に規制をかけるものを限定的に記載するやり方であるため、書かれていなければ原則自由化であると説明した。

 水口氏は、医療の自由化について、米国は日本に対して、TPP以前から一貫して自由化を求めており、TPPは懸案事項を片付ける機会となると指摘。混合診療が解禁されれば、健康保険適用外の「自由診療」の領域が大きくなり、民間業者の保険が売れる。医療自由化とはすなわち、「保険が売れるシステムにすること」であると評した。

 薬価を抑えるためのさまざまな制度が、自由化の旗の下に撤廃されれば、保険財政が圧迫され、保険給付の範囲が縮小する。国民皆保険の「空洞化」である。水口氏は、「韓国では実際に薬価の引き上げが起こっている」という。「患者の利益より株主の利益が優先」という構造が根付いてしまうと警笛を鳴らした。

薬害事件の教訓はどうなるのか

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入よりご覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 300円 (会員以外)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です