「誰かに犠牲を強いる社会を変えていく」 ~福島原発告訴団集会「これでも罪を問えないのですか? 不起訴処分に抗議する!」 2013.9.29

記事公開日:2013.9.29取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・荒瀬/奥松)

 「いばらの道は覚悟している」──。福島原発告訴団の団長、武藤類子氏は静かに決意を語った。

 2013年9月29日、福島県郡山市の郡山ユラックス熱海で、福島原発告訴団による集会「不起訴処分に抗議する!」が行われた。昨年、福島原発告訴団は、福島第一原発事故に伴う被害について、東京電力と同社幹部や元原子力安全委員会の委員長ら計33人を告訴したが、検察庁は9月9日に「全員不起訴」とした。会場には不起訴処分に抗議する約300人が集まり、武藤氏は検察審査会へ申し立てを行うことを表明。さらに、福島第一原発の汚染水海洋放出について、新たな告発を行ったことも報告した。

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  • 登壇者
    武藤類子氏(福島原発告訴団 団長)
    保田行雄氏(弁護士)
    河合弘之氏(弁護士)

この2年半、幾度となく裏切られ、見捨てられた

 武藤氏は「福島原発告訴団の1万4716人は、福島地方検察庁に対し、東京電力の勝俣恒久前会長、清水正孝元社長など同社幹部や、元原子力安全委員会委員長の斑目春樹氏ら33名を業務上過失致傷罪などで告訴した。しかし本件は、9月9日に突然、福島地検から東京地検に移送され、その連絡を受けたわずか1時間後に『全員が不起訴処分』との決定がなされた」と報告した。

 さらに、「不起訴理由の説明会に参加したが、検察側の説明は『不起訴』という結論のために理由付けされたような印象で、決して納得できるものではなかった。原発事故から2年半、私たちは幾度となく裏切られ、見捨てられた思いを経験した。さらに重ねられた今回の処分には、深い怒りと悲しみを感じざるを得ない」と話した。

汚染水海洋放出により、公害罪で新たに東電を告訴

 この件が東京地検に移送されたために、今後、告訴団は東京の検察審査会に申し立てを行うという。武藤氏は「福島県民が不起訴の妥当性を審査する機会は奪われてしまった。だが、東京都民による検察審査会が、被災者に寄り添った判断を下してくれると信じている」と述べ、「私たちの悲痛な声は、検察には届かなかった。いばらの道は覚悟の上で、更なる道へと続けたい。そのために、あらゆる努力をしていく」と決意を表明した。

 また、武藤氏は、9月3日に福島県警に対し、汚染水海洋放出事件として、東京電力元幹部32名と1法人としての東京電力株式会社を公害罪の被疑容疑で刑事告発したことを報告した。「東電は、東日本大震災の前に、福島第一原発の津波対策ができたにもかかわらず、コスト削減のために行わなかった。原発事故直後には、地下水対策の必要性が指摘されていたのに1000億円を惜しんで先送りした。これらは同じ考え方だ」と批判。「真実と責任の所在を明らかにし、誰かに犠牲を強いる社会を変えていこう。私たちは手を取り合って、ひるむことなく事故の責任を問い続けていこう」と呼びかけた。

検察庁の見解は、極めて不当なもの

 次に登壇した保田氏は、検察庁が告訴された33人と1法人のうち、福島第一原発の吉田前所長(故人)を除いた32人中19人を嫌疑不十分、13人に嫌疑なし、という見解を示したことに対し、「嫌疑不十分の根拠については、(地震と津波の)予見可能性に関わってくるので、今後も強く追求していく」と延べた。

 また、検察庁の見解が「専門家の間で地震と津波に関する十分な知見が得られていなかった」としていることについて、「そもそも、その専門家たちが東電と一体となり、地震や津波に対する過小評価を繰り返して、対策を骨抜きにしてきたことを明らかにすべきなのに、家宅捜索や差し押さえもなされないまま、抽象的な法律論をもてあそんでいる。極めて不当な見解だ」と強く批判した。

福島地検から東京地検へ「送致」された意味とは

 河合氏は「この告発を福島地検にしたのは、福島県で働いている検事たちに判断をしてもらいたかったからだ。もし、不起訴処分になった場合には審査を申し立てるので、福島の検察審査会で、福島の人たちに審査してほしい、と公言してきた」と話した。

 「検察庁は、福島地検は被害の捜査を、東京地検は過失の捜査をする、と言っていた。だが、9月9日に突然、事件を東京地検に送致するという連絡があり、その1時間後に東京地検が不起訴処分を決定した。東京オリンピックが決まったタイミングで処分を出したことも含めて、2点において汚いやり方だ。政治的な判断があったと考えている」と憤った。

 そして、東電本社や福島第一原発に強制捜査を行わない理由を、検察側は「東電が協力的だから」「事故の収束作業の妨げになるから」としている、という。これについて河合氏は、「理屈にもならない」と斬り捨てた。

東京オリンピック招致の意外な効果とは?

 河合氏は「汚染水問題については、充分に業務上の過失が問える」と言う。「事故当初、原発事故対応補佐官だった馬淵澄夫議員(民主党)が、放射性汚染水対策として、原発を粘土の遮水壁で囲う計画を進めていたが、東電は『その費用1100億円を負債として計上すれば、株主総会を乗り切れない』と泣きついた。馬淵議員が折れて、汚染水対策については株主総会であっさりと触れただけで先送りとなってしまった。その後も、東電が対策の実行に至らなかったことは、故意に汚染水を垂れ流したといえる。水俣病問題と同じく、公害罪に問える」と自信を見せた。

 また、「オリンピックが東京に招致されたことは、むしろ良かったと思いたい。7年後まで、ずっと国際的な目が福島に注がれることになるからだ。世界のトップ・アスリートが集まるからには、必ず安全でなくてはならない。海外から『他の原発も止めろ。汚染水をなんとかしろ』と言われると、日本は外圧に弱いので好都合なことである」とし、「決して思い詰めずに、粘り強く闘いを続けよう」と締めくくった。

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