2025年11月25日午後6時より、東京都千代田区の「NO NUKES PLAZAたんぽぽ舎」にて、東アジア共同体研究所理事・所長の孫崎享氏による講演「国際情報と外交、そしてスパイの物語」が開催された。
孫崎氏は、「日中の台湾問題を目がけて、おかしいことが起こって、相当深刻になりましたから、前座でスパイをちょっとやって、それで、日中関係をお話しさせてもらおうかと思います」と述べ、次のように続けた。
孫崎氏「余りにも、日本側が知らない。日中関係、約束がどうなっているかというものを知らない。
中国側は、当然、一国の首相が、過去の約束がどうなっているかぐらいは知っていると思っている。たぶん。
だけど、高市さんは、知らないんだから。知らないで、過去の約束を踏みにじっているから、向こうが怒り狂うというのは、当然だと思うんですよね」
孫崎氏は、さらに続けて、次のように説明した。
孫崎氏「ここで大きなことは2つあります。
1つは、『約束違反』。日本が中国との間で行った『約束』の違反。
もう1つは、台湾正面を中心として、米国が動いていく。その中に、日本が確実に巻き込まれてしまった。
その2つの流れだと思いますね。
それで、かなり重要なことが、1972年の『日中共同声明』を破っているんですね」。
- 日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明(外務省)
孫崎氏「今、日本のメディア、テレビあるいは新聞を御覧になって、『日中共同声明の約束を破った』ということを、メディアで書いているのを見たことがある人は、手をあげて…。(中略)
それだけじゃなくて、(中略)外務省の栗山さん(栗山尚一・元駐米大使)が、2007年ぐらいに、国際問題研究所でしゃべっている内容があったんですよ。
要するに、『理解し、尊重する』。その後に『ポツダム宣言を守って』と、書いているんですけど、これは私のブログで書きましたけれども…。(中略)
ポツダム宣言は、カイロ宣言を遵守する。そして、カイロ宣言を遵守するということは、何を書いているかというと、『台湾を中国に返す』と書いてあるんですね。国際法的には、政権が交代したら、政権は前の約束を引き継ぐんです」
- 台湾問題についての日本の立場―日中共同声明第三項の意味― (公益財団法人 日本国際問題研究所 コラム、2007年10月24日)
- ポツダム宣言(国立国会図書館)
- カイロ宣言(1943年)(内閣府ホームページ)
孫崎氏「これは、ジュネーブ条約か何かで決まっているから(※編集部注:ウィーン条約法条約)、よく、X(旧ツイッター)なんかで、『中華民国が約束したことなので、中華人民共和国とは関係がない』ということを言うんですけれども、国際的な基本は、『政権が交代して、特別なことを言わない限りは、前のものを継承する』。
だから、日本が、台湾というものを、中国に返すと。『中華民国に返す』ということを言ったということは、日本政府が台湾を中国に返す、『中華人民共和国に返す』ということを、書き込んだんですね。
何で、『理解し、尊重する』というのが書いてあるだけで十分じゃないかと思ったんだけれども、それで、周恩来は納得しなかったんですよ。
日本がコミットしてくれなきゃいけない。コミットは、ポツダム宣言を遵守するということで、日本が台湾を中国に返す。
そして、それは、中華人民共和国が引き継ぐ、ということが、『台湾は中国の一部だ』ということを、日本政府が認めたということなんですね。
彼(栗山氏)は、国際問題研究所の報告の中に、これでもって、『もちろん日本は、中国の独立、台湾の独立とか、そういうものには関与しないという意味合いです』と書いているんです。(中略)
第2次世界大戦が終わったあと、アメリカから賠償委員会が来て、日本はどのレベルの賠償までやったらいいか、というのを調査したんですね。
ものすごい被害を与えているわけだから、あるべき水準に行くまでには、すべて賠償の方にお金を出さなきゃいけない。(中略)
日本が侵略して、あの人達を痛めつけたんだから、その人達の生活水準より上に行くことは、許さない。そのぎりぎりのところで賠償を決める、というのが、1946年のアメリカの賠償委員会の結論なんです。
そして、サンフランシスコ平和条約になる。たぶん、サンフランシスコ平和条約のその部分を読まれた方は、ほとんどおいでにならないと思いますけど、賠償は、日本は連合国側に払う義務がある。だけど、さっきの話につながっているんですが、日本の経済はそれにまだ十分に達していないことも、我々は認める、と書いてあるんですね」
孫崎氏「だから、日本は賠償を払わなきゃいけないんですよ。賠償を払うなんてとんでもない。国際的に言うと、賠償を払わないのが通説だ、なんていうのが、ほとんど日本を覆っているんだけれども、そうじゃない。賠償は、払わなきゃいけないんです。
それを、周恩来は、『東アジアの安定、あるいは中国の安定のために、賠償を求めない。賠償の権利は放棄する』。これをやったわけですよね。
それの対(つい)になっているのが、『台湾は中国の一部だ(ということ)。これを日本が理解して、尊重する』。このバーターなんですよ」
講演の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。





























