元最高裁判事・濱田邦夫氏「憲法に三権分立があるにもかかわらず、立法府で議論すべき問題を行政府がどんどん決めている」!! ~7.1 第二東京弁護士会主催シンポジウム「憲法改正問題に取り組む全国アクションプログラム『閣議決定10年 それでも安保法制は違憲だ』」 2024.7.1

記事公開日:2024.7.15取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2024年7月1日午後5時30分より、東京都千代田区の弁護士会館にて、第二東京弁護士会主催のシンポジウム「憲法改正問題に取り組む全国アクションプログラム『閣議決定10年 それでも安保法制は違憲だ』」が行われた。

 登壇者は、濱田邦夫氏(元最高裁判所判事)、宮崎礼壹氏(元内閣法制局長官)、小林節氏(慶応義塾大学名誉教授)、青井未帆氏(学習院大学大学院教授)、伊藤真氏(弁護士・安保法制違憲訴訟の会)、山岸良太氏(日弁連憲法問題対策本部副本部長)の6名。

 シンポジウムでは、登壇者によるリレートークとディスカッションや、第二東京弁護士会が行っている安保法制廃止を求める街宣などの活動についての報告が行われた。

 第二東京弁護士会の日下部真会長は、安保法制をめぐる政府のこれまでの動きと、それに対する第二東京弁護士会の対応について、以下のように概観した。

 「2014年7月1日に、『集団的自衛権』行使を容認する閣議決定がなされました。

 本日は、それからまさにちょうど10年目となります。

 『集団的自衛権』とは、政府解釈によりますと、『自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利』ですので、これを容認するということは、自国防衛だけではなく、他国を防衛するために戦争をする可能性があることを意味しております。

 この集団的自衛権については、この閣議決定がなされる前までは、政府は、『憲法第9条のもとにおいて許容されている自衛権の範囲を超えるものであって、憲法上許されない』としてきました。

 ところが、当時の安倍内閣は、閣議決定により、政府見解を変更しました。

 当時、『集団的自衛権』に関する議論が進むに際して、当第二東京弁護士会では、閣議決定に先立つ2014年5月3日に、憲法記念日を迎えて、「集団的自衛権」行使に反対する会長声明を発出し、さらに同年7月1日に閣議決定がなされたことを受けて、同日に『集団的自衛権』行使容認の閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明を発出しました。

 そして、閣議決定直後の7月3日から、内閣の閣議決定による『集団的自衛権』行使容認を阻止する街頭宣伝を始めました。

 翌2015年、この閣議決定にもとづいて、いわゆる安全保障関連法案が国会に提出されました。

 これに対しては、多くの憲法学者、歴代の内閣法制局長官、さらには元最高裁判所長官を含む最高裁判所判事経験者が、その違憲性を指摘する事態となり、多くの市民が国会を取り囲む大規模な反対運動が巻き起こりました。(中略)

 『集団的自衛権』の行使を容認する内容を含む安全保障関連法案に対しては、日本弁護士連合会、及び、全国52のすべての弁護士会が反対の会長声明を出しました。当会も2015年5月から8月にかけて、法案成立前に3つの会長声明を発出しています。

 しかし、様々な方面からの大きな反対の声にもかかわらず、2015年9月19日、安全保障関連法案は強行採決されました。

 当会は、この強行採決に対して抗議する会長声明を発出するとともに、同法が施行された翌2016年3月29日にも、安全保障関連法施行に抗議する会長声明を発出しております。

 第二東京弁護士会の会長声明については、以下のURLでご確認ください。

 当会の運動としては、安全保障関連法の成立後、2015年11月以降は、毎月の定例として、有楽町での街頭宣伝を再開し、現在までなお、東京弁護士会、第一東京弁護士会、日本弁護士連合会、関東弁護士会連合会との共催のもと、安全保障関連法を廃止し、立憲主義の回復を求める街頭宣伝を開催しております。そして、先月の6月10日には、通算100回目を迎えました。

 しかし、この10年間は、安全保障関連法の適用・運用は着々と進められ、特に、一昨年には、いわゆる『安保三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)』が閣議決定されました。そこには防衛費の大幅増額に加え、『敵基地攻撃能力保有』まで含まれております。

 しかしながら、『敵基地攻撃能力保有』は、憲法第9条のもとでは認められないというのが当会の主張であり、間接的な自国防衛の名のもとに、他国防衛のために攻撃能力が用いられ、我が国が戦争当事者となる現実的な危険が一層高くなることを、私たちは強く危惧します。

 10年前の閣議決定と、それにもとづく安保法制は、日本国憲法の恒久平和主義や立憲主義の観点から、大きな問題をはらんでいることを、私たちは忘れてはならないと思います」。

 その後のリレートークでは、各登壇者が「安保法制がなぜ違憲なのか」などについて、見解を語った。

 元最高裁判所判事の濱田邦夫氏は、以下のように述べた。

 「(前略)安保法制の問題だけでなくて、最近目に余るのは、『三権分立』という憲法上の建前があるにもかかわらず、本来、立法府で議論をすべき問題が、行政府であるところの内閣がどんどん決めてしまって、それについての世論の批判・反対というものがあまり聞こえないという、こちらの方が、この安保問題だけに限らず、非常に大きな問題だと思います。(中略)

 憲法上のバランスを取った三角形の権力の分立というものが、実際は、司法府は非常に、その時の政府の意向に、残念ながらうかがいを立てるような判決を、政府に言われてじゃなくて、自分でやるという傾向が、非常に強いわけで。(中略)

 司法が、行政、立法の問題について、自分の役割を超えた発言・行動をすべきだと言っているわけではないのですが、そもそも司法が果たすべき役割の中での、最大限の働きをすべきだと思います。

 それから立法府も、今のような状況ですと、何百人という議員を揃えて、歳費を払っているだけ無駄ではないか。実際、立法府での議論がないままに、行政府が突っ走っているという状況は、やはり問題があると思います」。

 シンポジウムの詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画 前半

■全編動画 後半

  • 日時 2024年7月1日(月)17:30~20:00
  • 場所 弁護士会館10階 1003会議室(東京都千代田区)
  • 主催 第二東京弁護士会(詳細1詳細2 pdf詳細3 pdf

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