「大東亜戦争は、白人国家による、有色人種の国の植民地化に対抗する『聖戦』だった!」「国際法に照らして、現行憲法は無効!」~6.24 2024東京都知事選挙街頭演説―登壇: 田母神俊雄候補者 2024.6.24

記事公開日:2024.6.25取材地: テキスト動画
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(取材・文、木原匡康・IWJ編集部、文責・岩上安身)

 東京都知事選に立候補した田母神俊雄氏による、選挙公約発表の記者会見が、2024年6月24日、東京都千代田区の秋葉原駅前で行われた。

 はじめに、「日本のための選択肢」代表の中村和弘氏が、応援演説を行った。中村氏は、「円安や逆累進性の消費税などで、日本は悲惨な状態になっている」「今の政治は、お金だけを正義とする新自由主義者や、国家すら否定する共産主義者が跋扈している」などと批判。「田母神候補は、我々保守の受け皿として、唯一の希望だ」と、投票を訴えた。

 田母神候補がはじめに訴えたのは、地震等の災害対策で、「予備消防官」制度などの施策を提案した。

 2つ目にあげたのは、教育を「日本人として自信と誇りを持てるものに直したい」という主張だ。これは国政の話題であって、都政の話題ではないと思われるが、一応、耳を傾ける。

 田母神氏は、「戦後、『日本が悪いことをした。やらなくてもいい戦争をアメリカとやった、負けるとわかっている戦争をやった』と教えられているが、それはみんな嘘だ」と戦後教育を批判。日本の戦いは、「白人国家による、世界中の有色人種の国の植民地化」に対抗するためだったと主張した。

 やはり、国政課題として、国会で論じるべき課題のようだ。今回は都知事選であり、場違い感は否めない。

 また、「やらなくてもいい、負けるとわかっている戦争を、アメリカとやった』と教育されているが、それは嘘だ」というならば、米国相手の戦争は勝ち目があったのだろうか?

 狭い意味での軍事力、資源や人口、科学技術力を含めた国力、情報力、すべてを総合して、当時の米国に当時の日本が勝てる要素があったとは、ひとつも思えず、当時の日本人の多くも、当時の軍人達も、思っていたとは考えにくい。

 さらに、「白人国家による、有色人種の国の植民地化に対抗するため」だというなら、対英米戦(太平洋戦争)に突入する前から、有色人種の日本は、白人の帝国主義に見習って、有色人種の国・土地(台湾、韓国・朝鮮、満州等)を植民地化していた。たしかに1919年(大正8年)、第1次大戦直後の、パリ講和会議の国際連盟委員会において、人種差別撤廃条約を提案し、米国に反対されて否決されたが、台湾割譲は1895年、朝鮮併合は1910年のことで、すでに日本は、有色人種の国・土地を植民地化していた。そのため、田母神氏の発言は、中学校の教科書で習うべきレベルの歴史すらねじ曲げた話であり、傾聴に値しない。

 田母神氏はさらに、「第二次世界大戦直前に、アジアで独立国家は、英仏の緩衝地帯として意図的に残されたタイを除けば、自力で残っていたのは日本だけ」「日本が戦わずに植民地になれば、今、我々は植民地で生活していた可能性がある」と訴えた。

 そして、「日本は負けたが、その結果として、世界中で国家が独立し、人種平等の世界ができあがった。それは日本が戦った結果」「日本の人類史における大きな功績を、我々は誇っていい」と訴えた。

 さらに、「『日本が朝鮮半島、中国大陸、東南アジアを侵略した』という教育は嘘」だと断定し、「東南アジアでは、インドネシアを占領していたオランダと戦い、フィリピンを占領していたアメリカと戦い、ベトナムを占領していたフランスと戦った。日本は東南アジア諸国と戦争したのでなく、白人国家と戦った」「大東亜戦争は聖戦であった。これを子供たちに教えなければ」と主張した。

 そのほか、都民税減税や、外国人優遇政策の廃止、「AI目安箱」による都民の意見の政策への反映を訴えた。田母神氏は、「AI目安箱」によって、都民が知らない間に進められた神宮外苑の再開発や、LGBT法案、パンデミック条約などの問題にも、意見が反映できるとした。

 さらに田母神氏は、「憲法改正ができないために、正規軍を持てず、国の守りをアメリカに頼り、アメリカの要求を全部受け入れている。しかし、アメリカは日本のことは考えない」と主張。「正規軍を持って、戦う意思を持っていることが、侵略を許さない抑止力だ」と訴えた。

 そのためには、憲法改正が必要であると田母神氏は言う。「アメリカの要求を全部受け入れている。アメリカは日本のことは考えない」という指摘はその通りだ。

 しかし、正規軍をもって、「戦う意思を持つ」ことが、「侵略を許さない」ことにつながるというが、すでに「アメリカの言いなりになっている国」というのは、アメリカに敗戦し、占領され、その占領を継続するために、日米安保条約というオブラートに包まれて、占領・従属が継続している、という認識なのだろうから、米国からの独立戦争をも勝ち取る、という目的をもった「正規軍」なのだろうか?

 単に米国の従属国として、米国の「敵」を、自国の「敵」のように見なして、「鉄砲玉」になるというならば、それは、独立主権国家として、あるべき姿を取り戻したことにはならないと思われる。憲法改正の前に、日米安保を破棄して、真の独立を勝ち取る勇気があるのか? と問いかけたいが、そうした日米安保には言及せず、ただ戦後憲法批判にのみ、言葉を費やします。

 田母神氏は、「憲法96条の、国会議員の3分の2の賛成が必要というのは無理だ」と指摘。そうではなく、「占領国が非占領国に恒久法を強制してはいけないという国際法に照らして、(米国に強制された)現行憲法は無効」「だから、国会で、今の憲法は無効だと、教育勅語廃止と同様に、過半数で決議すればいい」と主張した。

 その他、国税不要論や、株主資本主義への反対論も訴えた。株主資本主義反対論としては、「外国人労働者導入」の慎重化や、「女性が輝く社会」ではなく、「お父さんが働けば家族が食っていける社会」などを主張した。

 いずれも、異論が四方八方から飛んできそうな奇想天外な主張ばかりであり、何よりも都政の議論ではなく、国政レベルの議論ばかりだったのが、少々残念であった。

 詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2024年6月24日 16:00〜
  • 場所 秋葉原電気街改札UDX側(東京都千代田区)
  • 詳細

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