2023年4月3日、岩上安身は、東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授にインタビューを行った。
鈴木教授は、2022年11月に『世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか』(講談社+α新書)という、衝撃的なタイトルの新著を上梓。「日本には食料安全保障がない」と訴えている。
冒頭、岩上安身は「日本を5つの安全保障上の危機が襲う」として、軍事、エネルギー、食料、経済・財政、原発の5つの要素を示し、ウクライナ紛争勃発後、大きく世界情勢が変わっている中で、エネルギー資源を持たず、食料自給率の低い日本は世界でみても、最もリスクの高い国ではないか、と問題提起した。
財政上の課題や原発の安全保障問題なども含めて、「エネルギーや食物の確保も含めた戦争に対応する国家づくり」はまったくできていないという岩上安身の指摘に、鈴木教授は、日本の食糧安全保障を考える時に、「これまではお金を出せば輸入ができたが、これからはそうはいかない」と応じた。
鈴木教授は、日本の食料安全保障が危機にさらされる4つの要因「クアトロショック」について、以下のように説明した。
第1の要因は『生産資材の輸入が止まれば、食料生産量が激減する』という問題である。
鈴木教授「コロナショックで一番わかったのが、『種』なんです。日本の、例えば『野菜の自給率8割』と言ってますけども、その『種』は海外の畑で9割『種採り』してもらったのを入れてるんですよね。
コロナショックで物流が止まりそうになって、『種が入ってこない』って大騒ぎになったわけですよ。これ、本当に止まったらどうなるかっていうと、実は自給率8割じゃなくて、8%分しか作れないということですよね」
鈴木教授「もちろん、(畜産の)餌の穀物もそうですし。
鶏の卵を、『自給率は97%』と言ってますが、餌のトウモロコシは100パーセント輸入ですからね。これ止まったら、実質(の自給率は)どうなの、という話です」
岩上安身が「野菜の種が9割輸入という実態は、即切り替えなければ」と述べ、種子法廃止をあげると、鈴木教授は多国籍企業による種の支配の問題を指摘した。
鈴木教授「自分たちで米・麦・大豆の種を作らないで『もうやめなさい』と。『企業に渡しなさい』と。その種を『企業から毎年買いなさい、自家採取しちゃダメよ』という方向になってるんだから、まさに野菜と同じような状況を、もっともっと進めるような形で。
アメリカ発のグローバル種子農薬企業のなどの要請なんでしょうけどね。そういうことが逆に進んじゃってるというのが、今の状況です」
第2の要因は『中国の爆買いによって、価格も上昇し、買い負けしている』という問題である。今はまだ東アジアは「平時」だが、食料と肥料の争奪戦が世界で起こっていると鈴木教授は指摘している。
鈴木教授「今はもう、中国の需要がまだどんどん増えているので、もう穀物も、魚も、肉も、牧草とかも、日本が買いに行っても、『残ってない』。中国のほうが先に、高い価格で大量に買い付けちゃって。もう日本の部分がないと」
「なぜ、中国はトウモロコシを大量に買い付けているのか?」という岩上安身の疑問に、鈴木教授は次のように答えた。