統一教会の被害者の救済を念頭に置いた、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の改正と、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律、いわゆる被害者救済法が、臨時国会会期末の2022年12月10日、成立した。
これに対して、統一教会の被害者の弁護に当たっている、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、法律成立直前の10日午後5時から記者会見を開き、拙速にまとめられた被害者救済法に対する批判の声明を発表した。
- 「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」の成立に対する声明(全国霊感商法対策弁護士連絡会、2022年12月10日)
全国弁連の声明は、この法律の重大な欠陥を指摘している。
全国弁連がもっとも問題視している点は、今回の法律が、あくまで寄付に対する規制であり、統一教会問題の本質である、正体隠しの伝道によるさまざまな人権侵害などの被害を防げないことだ。
また、会見では、マインド・コントロール下の寄付についても、禁止ではなく「十分な配慮」にとどめたため、「統一教会との裁判実務では、ほとんど使い物にならないだろう」と指摘する声もあがった。
阿部克臣弁護士は、国対ヒアリングなどで何度も被害者や信者2世から話を聞いてきた野党に対し、政府・与党が被害者からの声を聞いた時間、量が圧倒的に少なかったことを指摘した。
「なぜ、このような中途半端な法律になったのか?」という、キリスト教新聞の記者の質問に対し、山口広弁護士は、公明党・創価学会を念頭に「はっきり言って、某宗教団体が『明日は我が身』ということで反対したということは、否定できないと思います」と語った。
その上で山口弁護士は、「ただ、私が申し上げたいのは、この法律は、某宗教団体、あるいは他の既成の宗教団体は、関係がない法律であるということを、きちんと認識して自信を持って、宗教的なニーズに応える宗教活動をやっていただければいいのであって、『明日は我が身』なんてことを考えなくていいじゃないか。自分達が正しくやれば、何の問題もないはずだ」と、憤りを露わにした。
■全編動画
IWJ記者は、記者会見で、統一教会の資金が北朝鮮の核・ミサイル開発に使われているのではないかという国会での参考人発言について、質問した。
■ハイライト:IWJ記者質疑応答部分
IWJ記者「昨日の参議院(消費者問題特別委員会)の参考人として、小川さゆりさん(仮名)が、意見陳述の最後に、統一教会の資金が北朝鮮に送られていることに言及し、『核兵器やミサイル開発資金となっているとの指摘がある』ということまでお話しされました。
- 消費者問題に関する特別委員会(参議院インターネット審議中継)
今回のこの法律で、統一教会の国際的な組織犯罪にまで、何かしら踏み込んで対策することはできるでしょうか? それとも、まったくゼロから、別の問題として、政府は考えなければいけないのか。どのようにお考えでしょうか?」
川井康雄弁護士「今回の新法の関係で言うと、端的に言って統一教会問題については、ほぼ役に立たないと申し上げているところですし、したがって今の被害の結果、統一教会側に行ったお金がどう使われるかということは、新法に関しては関係ないということになるかと思います」
渡辺博弁護士「確かに北朝鮮が文鮮明の生誕地ということで、生誕地訪問を、さかんにやらせていました。それは日本人信者にお金を持たせて、北朝鮮に渡すというものもありましたし、それから、文鮮明が北朝鮮訪問の時に、3000億円だ、5000億円だという大金を持って行くと。
そしてまた今回、韓鶴子さんが招待されていて、おそらく多額の、まあ日本人の献金が大部分でしょう、お金を持って行くということが、今後あると思います。
それがいろいろ、北朝鮮でのミサイル開発資金とかにつながっていくという可能性も、もちろん大きくあると思います。
あと、韓国では清平(チョンピョン)に、ここは聖地とされていますけど、日本人を大量に送って、あるいは多数回、一人の信者を何回にもわたって送り込んで、そこで献金させると。
あるいは、昔でいえば、南米のウルグアイで、お金の運び役として、何千人もの日本人女性を送り込むとか、そういうこともありました。
そういうことの規制が、きちんと、私はできなきゃいけないと思っていますが、今回の法律では、それは埒外になっています。献金という意味では、清平の献金とかは関わりがあるとは思いますけど、直接の規制対象ではない。
今後、私どもとしては、そうした被害事例をたくさん、きちんとまとめて、こういう実態があるんだということは、政府の方に伝えていかなきゃなと思っています」
紀藤正樹弁護士「今回の法律の建て付けというのは、まず献金被害。いわゆる霊感商法の物品被害については、消費者契約法にそもそも入っているので、それに加えて献金とか、お金についての規制をしたというのが、今回の消費者契約法の改正と、救済新法の2つでやっていることです。
しかし、その他に統一教会問題には、いろんな問題が絡んでいるんですね。
例えば、児童虐待の関係については、児童虐待防止法の改正問題が提起されていますし、海外に送金する問題、あるいは外国に献金する問題については、外為法の改正、もしくは運用の問題が絡んできますし、それから海外で、統一教会が何かいろいろと日本の政策に絡んでくる問題に関しては、当然それはセキュリティクリアランスの問題に絡んできていて、それは外務省とか、防衛省とか、そういうところが絡んでくる問題であるし、それから教育の問題とか、宗教法人法の改正問題については、当然文科省が絡んでくると。
そういうことで、いわゆる省庁横断的に、この問題については、議論が必要なので、そういう意味で第2ステージが当然あるっていうことを前提に、今回はその意味で、第1ステップに過ぎない。
そこは各省庁あげて検討中でもある。ただ、どこまで現実にしてくれるかは別ですよ。そこは、むしろメディアの方が、報道し続けることが大事だと思います。
だからメディアの方はぜひ、関心を持ってほしい。統一教会問題っていうのは、お金の問題だけではなくて、人権問題とか、日本の防衛の問題であるとか、国家秘密に絡む問題であるとか、それから海外での日本人信者たちが、亡くなっている方もかなりいらっしゃるんですけど、そういう邦人保護の問題であるとか、そういうことがいろいろ絡んでいますので、ぜひ、いろんな観点から取材を継続していただくことが、官僚の人たち、政治家の人たちも、今は関心を持っていますけど、1年後に関心を持っているかと言ったら悩ましいんですね。
ですから政治資金規正法とか公職選挙法の改正問題とか、まさに政治家が絡んでくるわけだから、一番、たぶん難しい領域だし、ロビイスト規制法というのも、いつか議論になると思いますが、ぜひ、メディアの方々は関心を持って、いろいろ継続して取材していただくことが、この問題についてとても大事だろうと思います」