8月15日、午後4時半過ぎから、「『統一教会』から『家庭連合』に名前を変えても実態は変わらず…むしろ悪化!? 日米政界との関係をより深めるこの反社会カルトを今後どうすべきか? 岩上安身による全国霊感商法対策弁護士連絡会 代表世話人 山口広弁護士インタビュー」を、東京共同法律事務所から、生中継配信した。
山口弁護士は、1987年から全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長として、統一教会の問題に取り組んでこられた。ご著書『検証統一協会』は、1993年に初版、2017年に第2版が出ている。
7月8日に起きた安倍晋三元総理銃撃事件のあと、7月12日に全国霊感商法対策弁護士連絡会は、『安倍元首相銃撃事件に対する声明』を出した。山口弁護士は、次のように事件当時の状況を振り返った。
山口弁護士「その日の夕方あたりのニュースで、特定団体、宗教団体に対する恨みがどうこうという言い方はしていましたけれども、とにかく、統一教会の『と』の字も日本のメディア、新聞・テレビには報道されなかったわけですよ。
私は、これは統一教会だろうなと思いましたけれども、報道されなかった。そういう中で、ネットにはどんどん流れているし、イギリスあたりの放送局では『Unification Church』ということをはっきり言っていた。
なんなんだよ、日本の報道は、それ自体が問題じゃないか、と。質の低下を本当に痛感しました」
岩上「質の低下というよりも、忖度なんじゃないでしょうか。長い間のお付き合いで、警察も含めて」
山口弁護士「はい。そういうことから、なんらかの形で発信しなきゃいけないと思っていたんですが。統一教会が11日に、ああいう白々しい記者会見をしましたので、もともと弁護団で翌日(12日)会議を予定していたのを急遽、記者会見に切り替えさせていただいて。
この声明も急遽、みんなで議論して作って」
岩上「一晩で作ったんですね」。
山上徹也容疑者の母親が統一教会に多額の献金をして破産し、家庭を崩壊させられていたことも明らかになってきた。
山口弁護士「こういう形で、統一教会の説得、あるいは、不安を煽るような献金・勧誘を拒否できなくて、子ども達にまで貧困を押しつけるような結果になるということがわかりながらも、全財産を教会に献金するということは、私どもは多くの被害者から聞いてきました」
岩上「同様のケースがある、ということですね」
山口弁護士「そうです。その中で1番の被害者は、統一教会信者の子ども達なんですよ。その子ども達の苦しみを少しでも理解していただけるならば、安倍晋三さんも含めて、ああいう言動をすることにはならなかったんじゃないかと。私も期待して、何回も、安倍晋三さんをはじめとする政治家に…」
岩上「『ああいう言動』というのは、統一教会を讃えたり、祝福したり、あるいは協力関係を持ったりとか、そういうことでしょうか?」
山口弁護士「そういうことです。前の年、2021年9月、教会の別働隊のダミー組織の天宙平和連合UPFの会合で、安倍晋三さんはトランプさんの動画とあわせて、自ら動画撮影に協力して、韓鶴子(ハン・ハクジャ)さん、要するに今の統一教会のトップに対して『敬意を表する』ということまで言われた」
岩上「なぜ日本の国民が、外国発のカルトで、その教義の中では日本は素晴らしい国だと書いてあるわけではなくて、『日本はサタンの国だ』、『贖罪をしろ』と迫ってくる。『日本は悪魔の国で、我々(韓国人)は選民』であると言ってるカルトって、日本に新興宗教はたくさんあれど、統一教会しかない。
統一教会は勝共連合で、最初から政治的な動きをしていたし、アメリカとのつながりもあった。宗教的な衣と政治的な衣を持ちながら、自民党にべったり、と。
これ、統一教会側から見てもおかしな話で、憎むべき『サタンの国』でありながら、一番、日本のナショナリズムの強い政党にすり寄り、それを助ける。
日本ナショナリズムの政党であるはずの自民党が、日頃、韓国が色々な賠償請求など問題を持ち出すたびに、跳ね除けているくせに、個々の人間を洗脳して、『お前たちは韓国を支配した人間の子孫なんだから、ずっとこの怨みは消えないんだから、その先祖の怨み、子孫の怨みを全部解怨しろ』、と言って金を巻き上げていく、そういうことをしている反日カルトに乗っかって自民党があるっていうことに、なんで矛盾を感じないんでしょうね」。
山口弁護士は、政治家は統一教会の教義をよく理解していないんだろう、ある程度知っていても反日的な教義には目をつぶって選挙協力を頼む、統一教会側も選挙協力をするときなどは反日的な教義を強く前面には出さないようにしているようだ、と答えた。
山口弁護士「中には反日的な教義もあるということは、嫌でもわかっていると思うんだけども。そこには目をつぶって、選挙協力してくれるし、あるいは自分たちの保守的な考え方と相通ずるところがあるということで利用し、利用される関係に立つということになっている政治家。
とりわけ安倍晋三元首相も含め、タカ派といわれる方々の中には、統一教会の日本における被害に目をつぶって、エールを交換する、協力するという政治家がかなりの数いた、という現実があったので。
安倍晋三さんがこうやって銃殺されたという事件を見て、『来るものが来ちゃったのか』と、本当にそう思いました」。
山口弁護士はこれまでもずっと、統一教会の被害を拡大するような言動を避けるように、政治家には働きかけてきたと述べた。
山口弁護士「統一教会信者の子ども達の苦しみを、もう嫌というほど見てきましたからね。これは何とかしなきゃいけないっていう思いがずっとありました。それがこんな形で、本当に残念です」
岩上「先生方は、何度も何度も警告されてきたんですね。それを跳ね除けてきた。聞こうとしなかったわけですね」
山口弁護士「無視されていました」
岩上「(統一教会の)反日の部分は、目を見開いてそうだねと思っていたのか、片目をつぶって、と見て見ぬふりをしていたのか。
でも、そんなことを知らない人たちを信者にして、生き血を吸っている団体から、さらに自分たちは利得を得て、(選挙では)マンパワーだったり金だったり、を得ると。そういうことをしていながら、自分たちは日本のナショナリズムのど真ん中の政党ですよ、『誇らしい美しき日本』なんて言っている。この矛盾」。
岩上安身は、日本会議、神道政治連盟などをあげて、自民党に群がるそのほかの愛国的な団体の矛盾をついた。岩上安身は「国際勝共連合の街宣車と任侠右翼の街宣車が同時にがなり立てているのを何度も見てきましたよ」と付け加えた。
山口弁護士「霊感商法の被害者救済、あるいは被害の抑止という弁護団の立場あるいは弁護士の立場からしますとね、政治家のことは右でも左でも何でもいい、統一教会の悪徳商法の応援をしないでください。被害者が増えるような、政治行動は取らないでください、こういうことが願いだったわけですよ。
ところが岸信介さんを含めた(自民党の)政治家の中には、日本の消費者被害の化粧品の被害の深刻さや重大性に目をつぶって、それよりも自分たちの政治理念を実現することを優先する。それに使えるならば、反社会的な団体であろうが、こういう問題を起こす宗教団体であろうが、利用して協力するという姿勢。
これは我々としては許せないと言いますか。やめてくださいということを繰り返しお願いしてきたんですが、こういう形になって本当に残念です」。
山口弁護士は、政治家だけではなく、警察や文科省の宗務課にも繰り返しお願いをしてきたが、動いてもらえなかった、と付け加えた。
山口弁護士は、これまで統一教会関係で合計13件、罰金刑や懲役刑になった事例を積み上げてきたが、「大事件が起こってというところまで、まだ至ってない」とされている、と述べました。オウムが起こした地下鉄サリン事件のような破壊的な事件には至っていない、とされてきたというのである。
岩上安身はここで、統一教会をどうするべきなのか、「法の華」や「オウム真理教」のように解散命令が出た例もあるのに、統一教会には解散命令は出されないのか、とたずねた。
宗教法人法81条は、解散命令に関する条文です。その第1項は以下の通りである。
「第八十一条 裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。
一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」
- 宗教法人法(e-GOV、2022年8月15日閲覧)
山口弁護士はこの条文があまりにも「抽象的」であることが、なかなか解散命令を出しにくい理由だと指摘した。
山口弁護士「宗教法人法81条1項なんですが、著しく公序良俗に反する行為を明らかに組織的にやってるって事を認められる場合、という非常に抽象的な条文なんですよ。
文化庁宗務課は、『刑事事件になって、それが犯罪として認められた場合でなければ、なかなか(解散命令の)運用はできない』というわけです。
確かに、明覚寺(本覚寺)の問題も、主犯・トップが、刑事事件の詐欺罪で摘発されたり、あるいは集団殺人事件ということで摘発されていましたけれども。
我々が『統一教会だって、13件、30人以上が逮捕・拘留されて、懲役刑になっている幹部信者もいますよ』って言ったら、『いや、幹部信者じゃダメなんですよ。トップが刑事罰になるか、あるいはその組織自体が詐欺集団ということで、刑事事件で認定されるかじゃなきゃ、ダメなんです』というわけ」。
山口弁護士は、民事裁判では統一教会に法的責任を認めた判例がたくさん出ており、これだけ広範な被害が出ているのに、と憤りを見せた。
岩上安身は、「反カルト法」のようなものがあればいいのだろうか、と問うた。
山口弁護士は、新たな法律ができなくても、抽象的で文部科学大臣の裁量次第になっている宗教法人法81条第1項1号の、運用ガイドラインがあればいいと回答した。その運用のガイドラインをどうすればいいかを現在、(法的に)議論しているとのことである。
山口弁護士は、統一教会がキリスト教の一派であるように見えながら、実はその教義は「霊界解怨」というシャーマニズムに貫かれている、と指摘した。
山口弁護士によると、統一教会の教義のツボは「怨みを残して亡くなった先祖は地獄で永遠の苦しみの中にあり、それが現世での事故や病になって不幸をもたらす。先祖を地獄の苦しみから救うためには、『富(浄財)』を積み『解怨』することが必要」だとする「霊界解怨」の教義で、その献金のシステムは組織化されているということである。
献金によって「解怨」をすれば、信者自身は、死後は中間霊界にいて、地獄の苦しみに落ちることがないというのである。
もうひとつ、「地上天国」を実現するために、米国の政治家や韓国にお金を送る必要があるという教えもあるという。
山口弁護士は、統一教会の教義における非常に重要な要素は、信者に「罪感」を教え込むことだと指摘した。アダムとイブの原罪、連帯罪、遺伝罪、自犯罪の4つの罪である。
この中の遺伝罪は、第2次世界大戦期の植民地化だけではなく、豊臣秀吉の朝鮮出兵などの罪も、現在の(日本人)信者には伝わっているとするものである。
インタビュー後半では、実際に「日本が韓国を植民地化した罪を贖うのは日本人女性だ」と教え込まれたという元・統一教会信者による証言、合同結婚式の被害の実態、数千人に登る日本人女性が非常に厳しい環境に置かれていること、合同結婚式で生まれた2世の子どもたちの問題などに踏み込んだ。
旧統一教会に対して、今度どう対処するべきなのか。山口広弁護士へのインタビューは、今後も継続して行う予定である。