総務省が2021年11月30日に発表した国税調査の集計によれば、「生産年齢人口」が総人口の60%を切り、第二次大戦直後と並ぶ落ち込みとなっている。
そのうえ、65歳以上の割合は世界最高水準に上昇、15歳未満人口は世界最低水準に落ち込んでいる。このままでは、今後生産年齢人口はますます減少するだろう。
問題解決のために、「生産性」を高めることが提唱されている。しかし生産性向上だけで問題は解決しないのではないか?
岩上安身は1990年代から、講談社『現代』や産経新聞社『正論』の連載等で、少子化問題に警鐘を鳴らし続けてきた。
そして岩上安身が2018年7月にエコノミストの田代秀敏氏に行ったインタビューでは、2018年3月に日銀が英文で発表したワーキングペーパー「日本の自然利子率」をめぐり、人口動態と経済成長について詳細に議論した。
その中で、日銀が2003年9月に発表したワーキングペーパー「我が国の人口動態がマクロ経済に及ぼす影響について」を話題にした一節は、問題の本質を非常に良くあらわしていた。田代氏は同論文の内容について、「今の人口動態が将来も続いた場合、現行の社会保障制度は維持できない」「人口減少はマクロ経済の成長率を低下させる」と解説している。
また、岩上安身は、民主党政権時、「生産性を上げるしか手はない」と主張する政権メンバーに対して、「大前提の、子どもを増やす話はどうなるんだ」と嚙みついた経緯を語った。
田代氏は「2003年の日銀の論文で、問題の本質はすでに突かれていた。なのに、『生産性』を上昇させればいいんだとは、まさに戦前と同じ発想」とも指摘している。
インタビューで岩上と田代氏はさらに、生産年齢人口が多く、高度成長をもたらした「人口ボーナス」期は二度と訪れない「ワンチャンス」だったことを指摘した。逆に生産年齢人口が減少する「人口オーナス」期に突入した現在、これを真剣に考える必要性を、岩上は「僕はもう20年くらい前に書いていた」と述べている。