アジア・太平洋戦争において、日本軍は占領した中国、東南アジア、太平洋の島々で「慰安所」を設置。現地女性や他の植民地および内地から調達した女性たちを「慰安婦」という名の「性奴隷」として扱い、「皇軍兵士」の性のはけ口とした。
その一方で、大日本帝国は、「銃後の妻」に対しては一転して「貞操」を強要し、国家的な監視を徹底していた。戦時中、警察は出征兵士の妻の情報を「出征軍人家庭調査表」などで管理。妊娠していないかどうか、監視の目を光らせていたのである。
戦前・戦中の書籍や広告などを取り上げ、大日本帝国が繰り広げてきた「戦争プロパガンダ」の実態に迫ってきた、岩上安身による早川タダノリ氏へのインタビュー・シリーズ。2016年12月9日に行われた第3弾では、個人の最もプライベートな領域であるはずの性愛まで、国家による監視と管理を徹底するという、性とドラッグにまみれた「戦争プロパガンダ」の実態を浮き彫りにした。
また同様に、大日本帝国がアヘンなどの薬物の栽培を奨励し、侵略した先の中国国内で乱売して戦費を稼ぎ、国内でも日本発の発明品である覚醒剤を大量生産し、「特攻」兵士や、軍需工場で勤労動員させられ過労で倒れそうになる工員らに服用させて長時間労働を強いていた事実も、当時のあっけらかんとした宣伝広告で明るみに出した。
- インタビュイー 早川タダノリ氏(プロパガンダ資料研究者、編集者)
- タイトル 岩上安身による『神国日本のトンデモ決戦生活』著者・早川タダノリ氏インタビュー 第三弾
- 日時 2016年12月9日 (金) 19:30〜
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
人権も人格も否定し、女性を「兵士を戦わせるための道具」とだけみなした大日本帝国
婦人本然の美徳であります徹底的な愛は、兎角一面に於て盲目的であり、熱狂的であり、偏狭である恐れがあるのであります。一時的の愛に溺れて、永遠の幸福を忘れたり、或はあるものを偏愛するとかいふやうな事例がないではないのであります。(中略)詰らぬ劣情や、一時的の感情に左右されての事が多いのであります。此の偏狭な熱狂的な愛は、婦人として最も慎まねばならぬ所であります。
これは、1939年に帝国在郷軍人会本部が刊行したパンフレット『軍国家庭読本 締めよ、こころ』に記された一節である。女性の恋愛感情を「詰まらぬ劣情」「偏狭な熱狂的な愛」と表現するなど、徹底的な女性蔑視観で貫かれている。
なぜ、戦時中の女性はここまで蔑視され、恋愛や再婚まで禁止されたのか。その理由を、早川氏は次のように説明した。
「日本の兵士はなぜ『強い』のか。それは、残してきた妻の『貞操』が守られているからだ――。当時、大日本帝国はそのようなプロパガンダを展開していました」
戦前・戦中において、大日本帝国の女性は人権や人格が認められず、兵士を戦地に駆り出し、戦わせるための「道具」に過ぎなかった。そのため、最も人間らしさが表れる性は、国家による管理の対象とされたのである。
▲インタビューの様子――12月9日、IWJ事務所
IWJではこの間、「プロパガンダの研究シリーズ」として、早川氏の他にも、『原発プロパガンダ』の著者である本間龍氏と、『大本営発表』の著者である辻田真佐憲氏に、岩上安身がそれぞれ単独インタビューを行っている。ぜひ、あわせてご覧いただきたい。
岩上安身が『「日本スゴイ」のディストピア』著者・早川タダノリ氏に訊く 後編 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/350850 … @iwakamiyasumi
これが過去の話なら笑って済ませれるが、近い未来の話になりそうで笑えない。「日本スゴイ」が取り戻すのはこのような社会だ。
https://twitter.com/55kurosuke/status/818416293900521472