6年間、TPP反対の節を曲げずにずっと動き続けているが、何がそこまでさせるのか?―2016年10月26日、岩上安身の緊急インタビューに応えた山田正彦・元農水大臣は、岩上の質問に「TPPを許したら、日本の独立が危うくなるからです」と断言した。
安倍政権が何としてでも、今国会会期末までの成立を目指すTPP承認案。10月28日衆議院での強行採決は回避されたものの、政府・与党内には週明け11月1日の採決を目指す声もある。11月1日までに衆議院を通過すれば、国際条約であるTPPは憲法が規定する「衆議院の優越」により、参議院で議決されなくても、30日経つと自然成立する。
自民・公明両党は10月28日、「衆議院での審議は尽くされつつある」として、11月4日の採決に向けて調整を始めている。これに合わせ、11月末の国会会期末の「延長」も視野に入れているという。
しかし、TPPの中身について国民の理解が進んでいるとは、到底言えない。なぜ、政府・与党は「審議は尽くされつつある」と明白な嘘を付き、中身の議論を徹底的に避けながら、拙速にTPP承認案の成立を目指すのだろうか?
「中身の議論をしたら、政府が国民に出している情報が『嘘』だということがバレてしまう。政府が出している6300ページの仮訳を読むと、いたるところに『罠』が仕掛けられています。また700カ所以上の誤訳があるとの指摘も。それほどいいかげんなのです」
インタビューで山田氏は、政府がひた隠す、TPPのあまりに「売国的」な内容を次々明かしていった。
- 日時 2016年10月26日(水) 21:00~
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
日本が「遺伝子組み換え小麦」の人体実験場に!?
山田氏は、岩月浩二弁護士や三雲崇正弁護士ら多くの弁護士、PARC(アジア太平洋資料センター)の内田聖子・事務局長などの専門家と共に「TPPテキスト分析チーム」を結成。海外のNPO団体などとも連携し、膨大なTPP協定の「原文」の解読にあたっている。IWJも、微力ながら、この文書の翻訳に協力をしている。
山田氏はインタビューで、TPPによって、遺伝子組み換え作物が日本に大量流入する可能性に言及した。
TPP協定第2章27条8項には、「遺伝子組み換え農産物の貿易の中断を回避し、新規承認を促進すること」と記されている。つまり、たとえ健康被害などの問題が生じたとしても、遺伝子組み換え作物の「貿易の中断」は「回避」されるようにと、輸出促進が明記されているのだ。さらに遺伝子組み換えの「表示」や「安全基準」について、政府が決定する場に、なんとモンサントなどの外国企業が介入できることも、明記されているのだ。
そして山田氏はさらに踏み込んで、「遺伝子組み換え作物の壮大な人体実験が、日本で行われる」と語った。
山田氏は、「全米小麦生産者協会が遺伝子組換え小麦の輸出について、将来は日本も視野に入れる」という、2013年10月7日付けの日本農業新聞の小さな記事に着目する。
それまで米国は、「小麦は人間が直接食べるものであり、家畜が食べるトウモロコシや大豆とは違って、遺伝子組み換え種子は使わない」と断言していたという。しかし山田氏が2012年に全米小麦協会のアラン・トレーシー会長と会談した際、会長から、「これからは、米国は、小麦も遺伝子組み換え種子に切り替える。まずは日本に食べてもらう」と言われたというのだ。
つまり、日本人は、人間が直接口にする遺伝子組み換え小麦の安全性の、人体実験場にされようとしているのだ!!
TPPで脅かされるのは、日本の「食の安全」だけではない。
5時間半にも及んだロングインタビューで山田氏は、自民党を支える土建業界がTPPで「焼き払われる」事実や、日本の医療や雇用、漁業、水道など、ありとあらゆる産業、文化、社会保障、公共インフラにまでわたる「壊滅の危機」について、警鐘を鳴らした。