いったい、民進党はなんど同じ過ちを繰り返すつもりなのか。今週末の23日に投開票日を迎える衆院東京10区補選で、民進党がまたしても野党共闘に二の足を踏んでいる。
2016年10月16日投開票の新潟県知事選では、共産・社民・自由(旧生活)の3野党と市民の会が結集し、米山候補を推薦した。自主投票を決めていた民進党も、終盤戦にはついに、蓮舫代表が駆けつけ応援に回り、曲がりなりにも「野党共闘」が実現した。結果は、見事、野党共闘の勝利となった。
しかし、米山氏が出馬するためには、県連が自主投票を決めてしまった民進党を離党し、無所属候補として立たざるをえず、さらに民進党の支持母体である連合新潟が自公推薦候補の森民夫氏を支持した事実は、有権者の記憶に鮮明に焼きついている。民進党抜き、連合抜きで、米山陣営は戦い抜き、大幅に出遅れて、圧倒的不利といわれながら、逆転勝利をおさめたのだ。
IWJは、連合新潟事務局長の牧野茂夫氏を直撃取材し、検証レポートとしてまとめた。インタビューは21日午後20時から再配信する。
- 【再配信】岩上安身による新潟県新知事・米山隆一氏インタビュー
(日時)10月21日(金)20:00~
(視聴)IWJ・Ch1:http://iwj.co.jp/channels/main/channel.php?CN=1
また、連合新潟の事務局長が語った「本音」の検証レポートは、10月22日まで特別に3日間、全編公開している。この機会にぜひ、あわせて御覧いただきたい。
- 日時 2016年10月20日(木) 19:00~
- 場所 豊島区立要町小学校(東京都豊島区)
今回の衆院東京10区補選の相手は、連日テレビのワイドショーをにぎわせている、小池百合子都知事の支援を受けた、自民党公認の若狭勝氏である。「厳しい戦い」であることは、誰の目にも明らかである。新潟県知事選挙の結果を見れば、野党が選挙に勝つ方法は、共産党も含めた「野党共闘」以外にないはずだ。
2016年10月20日、東京・豊島区の要小学校体育館で、鈴木候補の個人演説会が行われた。個人演説会の主催者によれば、要小学校は、蓮舫代表の父の母校であるという。同小学校は、豊島区要町出身の岩上安身の母校でもある。
個人演説会の行われる約2時間前には、池袋駅西口で野党の党首級が大結集して、鈴木候補の応援を行なった。そこには、日本共産党の志位和夫委員長、社民党の福島みずほ副党首、自由党の山本太郎共同代表、沖縄の風の糸数慶子代表、市民連合の佐藤学氏、生活者ネットワークの小松久子東京都議会議員らが集まった。
しかし、その場に肝心の鈴木候補の姿はなかった。民進党からは、安住淳代表代行の姿があるのみであった。
民進党は、なぜ、鈴木候補が野党共闘の同じ街宣カーに乗れるように対応できなかったのか。この日の個人演説会のあと、鈴木候補に直撃質問した。
「小池さんと若狭さんが相手だったら、勝てるわけないんですよ、こっちが今いくら束になっても」~「野党共闘では勝てない」という民進党の不可解な言い分
フリージャーナリスト・横田一氏「4野党の方が池袋で集まりましたけど、17時過ぎからならちょっと顔出すだけでもできたのでは…?」
鈴木候補「…と思ったんですけど、ちょっとスケジュール上、都合がつかなかったんで…ご理解いただければと思います」
横田氏「新潟県知事選でも野党共闘が勝利しましたが」
鈴木候補「ただ僕の中で、若狭さんと僕の戦いにしなければ勝負にならない。小池さんのブームの上に、安倍さんの人気と、自民党さんの支持率があります。1対1の戦いで政策の勝負にして、いいなと思ってもらう以外に、たぶん勝てる方法はない。こっちがその(野党共闘の)車に乗ってしまえば、向こうは小池さんと若狭さんじゃないですか。小池さんと若狭さん(が相手)だったら、勝てるわけないんですよ、こっちが今いくら束になっても。小池さんの支持率86パーセントです。
やっぱり個人で戦っている構図になんとかもっていきたい。そういう(野党共闘の)話がいただけるのはありがたいんですけれども、僕はやっぱり個人で戦っている構図にもっていきたい」
IWJ「有権者の方の中には、野党共闘の車に鈴木候補が立たれなかったことに対して、『がっかりだった』という声もあるようですが」
鈴木候補「まあ、そういう声があるのは仕方ないですよね。僕は自分の信じた道以外に勝てる道はないと思います」
IWJ「今後また野党が『一緒に街宣カーに立とう』と言ったら、立つ可能性はありますか?」
鈴木「調整次第です」
IWJ「野党共闘について、民進党の上の方々はどんなことを言っているのでしょう?」
鈴木候補「僕も正直わからないです。
共産党さんには感謝してるんです。ただ、今回の戦いに関しては、やはり若狭さんと僕の戦い。そこの戦いに持っていくには、この前ドーンと、若狭さん、小池さん、安倍さんって、こないだ立ったじゃないですか。あの絵はすごいですよ。あの絵では、こっちが立ったとしても、今の党と党の力、勝てないですよ。だから、そこ(野党共闘)に関しては躊躇したというのが正直大きいです」
IWJ「今回の野党結集の街宣カーのお話は、直接あったんですか?」
鈴木候補「もちろんありましたよ、それは。いろんなところから声がかかっています。
けれども最後、僕が落ちようが勝とうが、責任取るのは自分じゃないですか。登ったほうがいいか迷った部分もありますが、ただ、登ってしまうと絵と絵の戦いになってしまいます。絵と絵の戦いでは、今の小池さんブームに勝てないと思いました。
だったら逆にこの絵がないほうが、逆に十分戦えると。ただ、共産党さんとか他の選挙区事情もありますから、今後そういうことになったら調整はさせていただくと思います」
横田氏「新潟県知事選の(野党党首らがそろい踏みした)あの絵にも、相当なインパクトあったんじゃないですか?」
鈴木候補「みたいですね」
IWJ「あれもやはり野党共闘でしたが」
鈴木候補「まあ新潟は新潟で、ここはここなんで。ただ絵として、僕は一人でで戦いたかった、ということです」
横田「年金の問題を争点に変えたら、野党共闘できるんじゃないですか?」
鈴木候補「そういう戦い方もあるんですけど、考えてみますけど。
とにかく民進党の候補として勝たないといけないので。これだけ厳しい選挙で自分が何をできるかというところを第一に考えてやらせていただいています。みなさんの思いもわかりますが、上に立たなかったからみなさんの思いを踏みにじった、とは思いません」
記者「池袋西口では、志位さんが『鈴木ようすけさんをよろしくお願いします』と言っていたようですが、どう思われますか?」
鈴木候補「純粋に嬉しいですよね。嬉しいです」
鈴木候補は、10月9日の岩上安身のインタビューに答えた際、野党共闘については「是々非々で」「私は蓮舫さんのリーダーシップに従っていくのが、やはり組織人のあり方であると思いますし、私もそれに賛成です」と発言していた。
鈴木候補は、今回、「自分の判断を強調していたが、政治的経験のない新人の鈴木候補が、党執行部の意向に逆らった自分個人の考えを通すことができるはずはない。
今回の補選での、「共産党抜き」の「野党共闘」の枠組みが、連合の意向を汲んだ、民進党執行部の判断であることに間違いはないだろう。
対する若狭候補は、この日、応援に駆けつけた小池知事の人気を利用して、池袋のサンシャイン通りを人で埋め尽くした。民進党の執行部は、いよいよ現実を見つめなければならない。残された時間は、あと2日である。