翁長雄志沖縄県知事と菅義偉官房長官の初会談が実現した2015年4月5日、「辺野古移設は当時の沖縄県知事と名護市長の同意を得て閣議決定した経緯がある」と述べた菅官房長官。沖縄県の同意の元、辺野古移設が決定されたことを念押しした形だが、今、この発言が一部で波紋を呼んでいる。
1999年のこの閣議決定は、7年後の2006年、政府自らが廃止していたのだ。菅官房長官は誤認しているのか。または、都合の良い部分だけを抜き出した意図的な答弁なのだろうか。
「辺野古の海を守る緊急シンポジウム」が開かれた2015年4月7日、沖縄選出の赤嶺政賢衆議院議員が政府交渉に先立ち、菅官房長官のこの発言について防衛省を問いただす場面があったが、防衛省は回答を避けた。
▲「19年間、辺野古新基地建設賛成が多数になったことは、ただの一度もない」と菅官房長官の認識の誤りを追及する赤嶺政賢衆議院議員
- スピーカー 花輪伸一氏(ラムサール・ネットワーク日本)、安部真理子氏(日本自然保護協会)
「環境監視等委員会」副委員長が辞任、会の運営の不備が原因か
公益財団法人日本自然保護協会が主催したこの日の政府交渉では、辺野古新基地建設事業の環境保全対策について、防衛省の対応を追及。絶滅危惧種に指定されているジュゴンの保全措置や大浦湾に設置された45トンの巨大コンクリートブロックについて議論が交わされた。
また、基地建設事業に伴う環境保全対策を検討するために、防衛省が設置した「環境監視等検討委員会」について問われると、職員が答えに窮する場面が相次ぎ、防衛省の環境保全対策が、非科学的な判断に基づいている事実が露呈する形となった。
▲防衛省職員の撮影は原則「NG」の条件で行われた政府交渉
13人で構成される「環境監視等委員会」は、仲井真弘多前沖縄県知事が埋め立て承認の際に政府に求めたことを受けて、設置されたもの。設置に際し仲井真前知事は、「積極的に公開するなど広く地域住民、県民に対し周知に努めながら運営する必要がある」とも要求していた。
しかし、現状はそれと相反するもので、会議は非公開であり、議事録も公開されず、議論の一部を示す要旨と資料が公開されるのみ。さらに、これまで行われてきた3回の会議のうち、2014年6月に開催された第2回の会議については、資料が公開されたのが9ヶ月も後になってからというのが実態だ。どの発言が何の専門の委員によるものかも明記されておらず、前知事の要望は反故にされた形になっている。
さらに、今年2015年3月、同委員会の副委員長を務めていた東清二琉球大学名誉教授が、委員会からの辞任を表明。東氏は「環境監視等委員会では環境保全ができない。私の意図とは全くかけ離れている」と、辞任の理由を述べている。
「副委員長が自ら辞めるというのは、外から見れば適切な運営がなされていないということだ」
市民らが追及すると、防衛省は「個人の事情があるのでコメントは控えたい」と回答。明言は避けた。
45トンブロック投入は誰の判断なのか!? 防衛省の「非科学的」な説明
「岩礁破砕許可取り消し」の発端になった、大浦湾海底へのコンクリート製のブロック設置についても、市民らは防衛省を問いただした。誰の判断で、45トンにもなる巨大なコンクリートブロックを投入したのか。
▲海底に沈められた15トンブロック(写真:ダイビングチームレインボー)
那覇空港の滑走路増設工事でもコンクリートブロックが使用されているが、ほとんどが重さ1トンのもので、最大でも3トンだという。海面に浮かべるブイやフロートを固定するアンカーが過去、台風の影響で流されたことを受け、より重量のあるブロックを使用するよう環境監視等委員会も助言したというが、なぜ「45トン」にまで重量が飛躍したのか。
市民らの追及により、巨大ブロックの投下は防衛省の独断によるものであることが判明したが、45トンだからと言って45倍の影響を与えるわけではないという釈明まで飛び出した。これに対し、日本自然保護協会の辻村千尋氏は、すかさず反論。防衛省の稚拙な回答を批判した。