海外メディアをも誤解させていた安倍首相のエジプトでの挑発的演説──元自衛官の泥憲和氏、安倍首相の中東外交に改めて苦言 2015.2.7

記事公開日:2015.2.13取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

特集 中東

※ 2月13日テキスト追加しました!

 「安倍首相の演説は、誤解を招いても仕方がない内容。また、外務省の英訳もおかしい」──。泥和憲氏は「イスラム国」による邦人人質事件について、安倍首相には重大な責任があると断じた。

 安倍首相は2015年1月17日、エジプトで中東政策に関する演説を行い、「ISIL(イスラム国)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援を約束する」と表明した。

「イスラム国」がインターネット上に、拘束した湯川遙菜さんと後藤健二さんの姿を公開して身代金を要求したのは、その3日後の1月20日のことだ。

 当初、日本のメディアは、安倍首相の演説と「イスラム国」からの脅迫との因果関係を探る立場をとったものの、一部の報道番組などを除けば、すぐにその立場から離れ、人質解放の可能性などに報道内容を集中させていった。

 そして、1月24日に湯川さん、2月1日に後藤さんが殺害されたとみられる動画がネットに公開されると、新聞やテレビは「イスラム国」の脅威を強調する姿勢を鮮明にした。国会で、野党が安倍首相の対応のまずさを批判しても、さほど大きなニュースにはならない。「イスラム国」による邦人人質事件を巡る、対安倍首相の責任論は、少なくとも大手メディアの間には、もはや再浮上しそうにない情勢だ。

 こうした新聞・テレビのあり方を強く非難する人物が、2015年2月7日、兵庫県姫路市で熱弁をふるった。元陸上自衛官の泥憲和氏である。この日は、泥氏の著書『安倍首相から「日本」を取り戻せ!!』(2014年11月、かもがわ出版)の出版記念講演会。

「邦人人質殺害事件での安倍首相の対応には、明らかに問題があった」と言い切る泥氏は、さまざまな資料を示して、説得力のある言葉を重ねていった。

記事目次

■ハイライト

  • 講演 泥憲和(どろ・のりかず)氏(元陸上自衛官)
  • 質疑応答

トルコ紙ですら「軍事支援」と理解した

 1月17日にエジプトで表明した「イスラム国」対策の2億ドル支援は、あくまでも避難民向けの人道支援(非軍事活動)であり、イスラム国は身勝手で筋違いな要求をしている──。

 「邦人2人が人質にとられていることを知りながら、安倍首相が『イスラム国』と闘う国々に総額2億ドルの支援を約束したから、湯川さんと後藤さんが殺される事態になったのだ」という批判をかわすために、日本政府は上記の点を強調している。

 これについて泥氏は、「安倍首相のエジプトでの演説は、誤解を招いても仕方がない内容。安倍首相には重大な責任がある」と力を込め、このように続けた。

 「あの演説をトルコの新聞は、『安倍首相は、日本は人道と軍事の支援を、次の段階として2.5億ドル規模で中東の国へ提供すると語った』と報じていて、記事には明確に『軍事支援』という言葉が入っている。海外メディアも、このように受け止めているのだ」

 泥氏は、湯川さんと後藤さんの動画がネットに流れた後に、日本の外務省が配った資料に、約2億ドルの使用目的は「難民・国内避難民への人道支援である」と記されていることを紹介した上で、「安倍首相による『人道支援』という言い分は間違ってはいないが、あのエジプトでの演説では、そう言っていないところに最大の問題がある」と指摘した。

外務省のおかしな英訳で「挑発性」が増大

 エジプトでの演説で安倍首相は、「『イスラム国』がもたらす脅威を少しでも食い止めるため」「『イスラム国』と闘う周辺諸国に支援を約束する」と発言している。また、これらの発言があったくだりの文章では、「人道支援」という言葉が使われていなかったことを強調する泥氏は、「(2億ドルの拠出を決めた)閣議決定では『国際機関を通じた支援』とされたのに、安倍首相の演説では、その説明もなかった。逆にスピーチで出た『脅威への対抗』という言葉は、閣議決定の文面にはないものだ」と言い重ねた。

 この演説は、日本の外務省によってすぐに英訳されるのだが、そこにも「『イスラム国』による脅威を抑制するための援助である」と書かれている。泥氏は「外務省のおかしな英訳によって(挑発に)輪がかかった」とし、あの英訳を読んだ『イスラム国』が驚くのも無理はない、と力説した。

 泥氏は「英訳を手がけた外務省の職員は、英語には堪能でも、中東問題には疎かったのではないか」と指摘する。

 「英訳には『われわれはまた、トルコとレバノンを支援しようとしている』とあるが、両国の難民はシリア内戦が原因で生まれた。あくまでも、シリアのアサド政権の圧政から逃れてきた人たちなのだ。また、トルコは『イスラム国』と闘う有志連合には参加していない点も見落とされている」と述べ、複雑な中東情勢への配慮が欠けていたのではないかと示唆した。

「イスラム国」に対抗する国を優遇?──支援金の内訳

 イラクに約9000万ドル、トルコに約1530万ドル、ヨルダンに約2800万ドル、レバノンに約1820万ドル、シリアに約3300万ドル。閣議決定で決まった約2億ドルの配分メニューからは、日本政府の本心が読み取れると、泥氏は強調する。

(…会員ページにつづく)

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「海外メディアをも誤解させていた安倍首相のエジプトでの挑発的演説──元自衛官の泥憲和氏、安倍首相の中東外交に改めて苦言」への3件のフィードバック

  1. ミヤガワ シンイチ より:

    素晴らしい講演です。ありがとうございます。

  2. @ittusattuさん(ツイッターのご意見) より:

    2015/02/07 泥憲和氏 出版記念講演『安倍首相から「日本」を取り戻せ!!』(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/231042 … @iwakamiyasumiさんから〜
    泥さんの素晴らしいお話。安倍首相が中東で行った事+平和憲法の意義について大変わかりやすい必見です!
    https://twitter.com/ittusattu/status/564089120746897408

  3. 清沢満之 より:

    なんちゅう外交展開してんだ、バカ首相、バカ外務省、バカ日本。 国民この事一切知らねえぞ。

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