「避難計画と、避難者受け入れ計画は車の両輪である」――。
原発の再稼働に向け、原子力規制委員会による適合性審査が進行中である。原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた新しいエネルギー基本計画も閣議決定され、安倍政権による原発推進政策が明確に打ち出された今、事故を起こした際に住民の命や安全を守る避難計画の速やかな策定が望まれる。
新しい原子力災害対策指針では、原発から30km圏内(UPZ)にある自治体にも、新たに避難計画の策定を求めた。しかし、現在でも、該当する自治体の4割が未策定の状態だという。避難計画とは、避難する市町村だけではなく、避難者を受け入れる自治体の計画がともなって初めて完成する。
「脱原発をめざす首長会議」は4月11日、記者会見を開き、独自に調査したアンケート結果を報告。アンケートの内容は、30km圏内にある自治体と受け入れ自治体に対し、計画の策定状況や抱えている課題を聞いたもの。30km圏内にある市町村は135あり、そのうち、「脱原発をめざす首長会議」のメンバーとなっている現職首長の自治体約70団体を対象にしたが、約30団体から回答を得たという。
- 出席者 高杉徹氏(茨城県常総市 市長)/井戸川克隆氏(福島県双葉町 前町長)/上原公子氏(東京都国立市 元市長)/佐藤和雄氏(東京都小金井市 前市長)
避難者受け入れ自治体の課題
東海第二原子力発電所から30km圏内に位置する、茨城県城里町。アンケートの中で、避難計画の策定は「未着手」と回答した。「原発から30km圏内の昼間人口は約98万人。この巨大な人口の避難策の見通しがつかず、県による広域避難計画が策定できていない」ことを、その理由にあげた。
受け入れ側の自治体としても、問題が山積みだ。この日、記者会見で発言した、高杉徹・常総市長は、避難者受け入れ計画の作成は極めて困難だと話す。
高杉氏は、「東日本大震災が発生した3年前、何が起こったか。携帯が使えない、ガソリンが手に入らない、道路が分断され、橋は危険で渡れなかった。こういう条件を想定して、避難計画を作ることそのものが、大変な作業」だと語り、さらに、「原発事故の避難は長期化する。その場合、設備や予算を確保できるのか。また、事故の程度によっては、常総市自体が避難を求められるケースもあり得る。その二重負担をどう考えるのか」など、現職の市長として複数の問題を提起した。
福井県からの避難者を受け入れる自治体の実態