日刊IWJガイド・非会員版「高市早苗氏ではなく、まさかの玉木雄一郎総理誕生!? 立憲民主党の安住淳幹事長が、首班指名選挙で国民民主党の玉木代表の一本化を提案!」2025.10.9号~No.4631


┏━━【目次】━━━━
■はじめに~高市早苗氏ではなく、まさかの玉木雄一郎総理誕生!? 立憲民主党の安住淳幹事長が、冗談半分、本気半分で、首班指名選挙で国民民主党の玉木代表の一本化を提案! 国民民主党の榛葉幹事長はブチ切れ! 安住幹事長の言葉が軽かったにせよ、連立の観測気球の一つに過ぎないものに対し、そんなにキレることなのか!?

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■【中継番組表】

■欧米NATO対ロシアの戦争は、本当に近づいているのか!? 日本国民にとっても、他人事ではない現実!! ポーランド領空侵犯事件、ルーマニア領空侵犯事件に続き、ロシア軍機が「エストニア領空を侵犯」!? その真相と動機は!?(その3)国連安保理でも「国連憲章の明白な違反」とエストニアが非難すれば、ロシアは「ポーランド領空侵犯事件」の虚偽を指摘し「ワルシャワもブリュッセルも真実を必要としてはいない」と応酬! NATO第4条会合は「NATOとその同盟国は、あらゆる方向からのあらゆる脅威を抑止するために必要なあらゆる軍事的・非軍事的手段を用いる」と表明!

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■はじめに~高市早苗氏ではなく、まさかの玉木雄一郎総理誕生!? 立憲民主党の安住淳幹事長が、冗談半分、本気半分で、首班指名選挙で国民民主党の玉木代表の一本化を提案! 国民民主党の榛葉幹事長はブチ切れ! 安住幹事長の言葉が軽かったにせよ、連立の観測気球の一つに過ぎないものに対し、そんなにキレることなのか!?

 IWJ編集部です。

 立憲民主党の安住淳、国民民主党の榛葉賀津也の両幹事長は8日、臨時国会冒頭に予定される首相指名選挙への対応について国会内で協議しました。

 この席で、安住氏は野党候補の一本化を主張し、「国民民主の玉木雄一郎代表で(野党各党が)まとまるなら有力候補と考える」と述べ、玉木氏を野党統一候補とする案を提起しました。

※立民、玉木氏での一本化提案 首相指名、国民民主は慎重姿勢(時事通信、2025年10月8日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025100800395&g=pol

 この提案の背景には、自民、公明両党の連立政権継続協議が難航している現状があります。

 もっとも、自民と公明は、これまでも政策でもめているかのような話が出てきても、最後は元のさやに納まってきたのですから、これもまたいつものポーズかもしれません。

 しかし榛葉氏は、会談後、記者団に対して、「立民とは憲法、安全保障などで決定的に考えが異なる」と断言するとともに、「打算と数合わせで一緒に行動することは考えていない!」と、例の如くの「熱血漢」口調で述べ、安住幹事長の提案を一蹴したことを明らかにしました。

 榛葉氏は、会談後の記者会見の冒頭でこう述べています。

 「安住さんから、新しい総裁が決まって、与党の自公の協議がぎくしゃくしていますねと。

 その中で、仮に、自公連立が崩れた場合、冗談半分、本気半分で、首班指名を一本化したらどうかと。

 その際には、玉木ということも考えるとおっしゃったので、野党第一党の幹事長のお話ですから、当然、承りますけれど、この手の話は冗談半分で言う話じゃないね。

 ましてや、与党の自民党公明党の連立が崩れたら、という前提で。

 野党第一党は、政権交代とおっしゃっているわけだから、もう少し気概のある話かと思いましたが、そういう話でした。

 立憲さんの幹事長、国対委員長がどのような報告をするかわかりませんが、ちょっと私は拍子抜けしましたね、正直。

 本当に政権、取りに行くぞと。日本の政治変えるぞと。

 我々は、政策実現するぞと言っているわけだから、それを、冗談半分だけど、玉木って書いたらどうだろうかと。

 (立憲の)党内も全部、コンセンサス取れているんですかと聞いたら、どうもそうじゃないと。

 仮定の上に仮定を重ねた上ての提案なので。(後略)」。

※【リプレイ】国民民主党 榛葉幹事長・古川国対委員長 コメント 立憲民主党との会談をおえて── 政治ニュース(日テレNEWS)
https://www.youtube.com/live/d8bHNeAYUXE

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 私がIWJをスタートさせたのは、今から15年前の2010年でした。

 IWJをスタートさせてきてからのこの15年間、あるいはそれ以前から、私、岩上安身は、機会があるごとに米国の従属国の地位に甘んじることの危険性に、絶えず警鐘を鳴らしてきました。

 自民党の新総裁が、中国との戦争の話を絶えず繰り返し、「米軍が中国軍の矢面に立つのではなく、まず日本が正面に立つ」などということまで言い出している高市早苗氏に決まって、その懸念が、今、まさに現実になりつつあるのを痛感しています。

 東西冷戦の終わりによって、世界大戦の危機は遠ざかったと安堵して、約35年が経ちますが、現在、最も戦争の危機が近づいていると感じられます。

 ドイツのベルリンの壁が崩壊して、東西冷戦構造が少なくとも欧州では終わったのが1989年。米ソ全面核戦争の危機が去った、というだけで、世界は一時的な多幸感に包まれていました。

 その際、ソ連共産党と、ソ連邦の解体を見て、政治が先に解体し、経済が後回しにされると、米国主導のグローバル資本の餌食になると、見抜いていたのが中国でした。

 中国はソ連とは逆に、経済を開放して、市場経済を取り入れ、逆に政治の統制は変えませんでした。

 その結果、あの貧しかった中国が、米国や日本の直接投資や台湾からの迂回投資を受け入れて、またたく間に成長し、今や購買力平価では、中国のGDPは米国を抜き去って1位の38,154,219百万USドルで、2位米国の29,184,900百万USドルを大きく引き離しています。

 しかも、中国経済の成長率は、過去よりも鈍化した、とはいえ、今なお、西側諸国より高い成長を続け、中国と米国の経済力の差は今もなお開き続けています。

 国力の差の拡大は、軍事力に直結します。第2次大戦後の、パックスアメリカーナ(米国の覇権のもとの平和)を大きく揺るがし、米国の焦りを呼んで、中国やロシアを敵視することが、もはや米国の国是となってしまっています。

 太平洋をはさんで、米国と、ロシア、中国、という核超大国に囲まれている日本としては、この経済的な国力の差と、資源をもたない宿命、そして地政学的現実を、ありのまま認めて、その地政学的運命に不自然に逆らわずに、欧米だろうが、グローバルサウスだろうが、全方位の平和外交を推し進めてゆくべきであるはずです。

 歴史をふり返ってみましょう。

 日本は、外征にはめっぽう弱い国です。戦術だけはあっても、戦略がなくて、目先のことしか考えられず、常に敗れ続けています。

 歴史的には、日本は3度の、国の存続にかかわるような大きな外征と、敗北を経験しています。

 まず、古代では、7世紀の663年に、朝鮮半島を戦場として、当時の日本(倭国)にとって特別な同盟国であり、親戚のような国でもあった百済(くだら)を救援するため、現代でいう「集団的安全保障」を発動し、唐と新羅(しらぎ)の連合軍と、白村江(はくすきのえ)で、東アジアでの準世界大戦ともいうべき戦いを行い、大敗を喫しました。

 その次が、豊臣秀吉の、明の征服を目的とした朝鮮出兵です。

 これも、明を征服するどころか、秀吉が「通り道」くらいに考えていた朝鮮で激しい抵抗にあい、大軍を2度、繰り出しても、戦争目的を達成できませんでした。

 日本側にも、朝鮮側にも、多大な損害を出した、まったく無益な戦争でした。特に侵略された朝鮮側には、深い傷と怨恨を残しました。

 そして3度目が、明治維新というクーデターによって誕生した「大日本帝国」によるアジア侵略と、米英とソ連までも敵に回しての戦争と、その結果としての無惨なまでの完全な敗北です。

 この3度の戦争は、日本の帝国主義的拡大を目的とした外征によるものです。

 日本は、一度、帝国となりたいという野心的な狂気にとりつかれると、まったく、彼我の現実的な力の差が見えなくなってしまいます。

 そして、その直後に、自国内のそれまでの体制がひっくり返る手痛い経験をしてきたのです。

 白村江の敗戦のあとでは、壬申の乱が起こりました。古代最大の内戦です。

 朝鮮への出兵を決断した、いわば「戦争責任者」である天智天皇が、息子の大友皇子(おおとものおおじ)に皇位を継承したいと考えました。

 当時は、同母兄弟間での皇位継承が慣例でしたが、嫡子への相続を目指したことで、同母弟の大海人皇子(おおあまのおおじ)は危険を察知して、吉野に隠遁しました。

 天智天皇が崩御すると、挙兵し、内戦に勝利して即位し、天武天皇となります。外征の敗戦と内戦を経て、天武天皇は、中央集権制を強化します。

 2度目の外征と敗北の結果は、関ヶ原の合戦を経て、豊臣家が滅亡し、徳川家康による徳川幕府が開かれ、長期政権が敷かれるようになったことです。

 3度目の外征と敗北の結果は、もはや言うまでもありません。

 日本は占領軍として駐留してきた米軍を、サンフランシスコ講和条約とともに、日米安保条約を結び、米軍の駐留を受け入れ続けて現代に至ります。

 米軍の影響下で、日本は半ば主権を回復しましたが、80年経っても、米軍は日本列島に居座り続けて、従属国として組み敷いたままです。

 これでは独立主権国家とは言えません。古代以来、ここまで、外国軍に居座わられたことは、ありません。その上で、中国との戦争に向かうとか、正気の沙汰ではありません。

 日本は、古代から現代に至るまで繰り返してきた、この外征の失敗に学ぶべきです。

 他方で、日本は、理不尽な侵略に対して水際で防御することには、成功してきた歴史的経験があります。

 蒙古の侵略に対しても、単に台風(神風)の到来だけが幸いしたのではなく、抗戦能力をもった鎌倉武士団が活躍し、上陸も侵略も許しませんでした。

 同じく、811年から新羅が滅亡する935年まで1世紀以上も続いた、新羅の数次に渡る入寇(侵略)も、1019年の刀伊(とい=女真族)の入寇も防ぎました。

 ついでにいえば、蝦夷(えぞ=現在の北海道)の地を侵略してきた蒙古に対しても、アイヌ人は果敢に戦い、北の地を守り抜きました。

 縄文人の遺伝的・文化的特色を色濃く受け継ぎ、縄文人と弥生人の混血である本州の和人と共通の祖先をもつアイヌが、蒙古に負けて侵略を許してしまっていたら、そして北海道から南下してきていたとしたら。

 日本列島の歴史、日本の国家としての歴史は、まったく変わっていたかもしれません。

 ただ、こうした水際で上陸を食い止める「専守防衛」戦の成功体験があるのに、どういうわけか、「蒙古襲来」は語り伝えられても、「新羅の入寇」も「刀伊の入寇」も「アイヌによる蒙古撃退」も、ほとんど歴史として語り伝えられることも、学校で習うこともありません。

 他方では、台風を「神風」と呼んで、あげく「神国日本」と、まったく非現実的な妄想の中に閉じ込もってしまいます。これは、現実の否認です。

 外征の失敗と「専守防衛」の成功と、その重要性について、歴史から学ぶ必要があります。

 そうでないと、安倍晋三元総理が持ち上げた、長州の吉田松陰のような、外征の野心を説く、狂信的な神国思想のイデオローグに鼓吹されて、また無謀な戦争へと踏み出しかねません。

 明治国家の出発点から近隣諸国に対する侵略を始めてしまったのは、それ以前の幕末の時代、あるいはそれ以前から、現実を否認した、神国思想の狂信を抱え込んでしまってきたからです。

 どこまでもブレーキを踏むことなく、侵略を中国大陸へとエスカレートしたあげく、日本は、国力の差がありすぎて、勝つ見込みのまったくない、米英相手の戦争へと踏みきってしまいました。

 その結果、古代から近代まで何とか保ってきた独立を、日本は失うことになってしまったわけです。

 深刻な問題は、米軍が80年間も、日本に居座り続けていることに、日本政府も日本国民も、疑問も問題意識も持たなくなってしまっていることです。

 日米安保条約があろうと、米軍が日本を守るも、守らないのも、米国の都合次第で、どうにでもなります。それはウクライナ紛争における米国の態度を見ていれば、明白です。

 しかも、米国の国力が相対的に衰退し、パックスアメリカーナが危うくなればなるほど、米国に頼るしかないんだ、「日米同盟基軸」しかないんだ、あとは、頼れる友好国も、同盟国もいないんだ、などという、自立志向からさらに自ら遠ざかる方向へと逃避していっている有様です。

 日本国民の中には危機感を覚えている人はもちろんいますが、政党には、右も左も、危機感がまるでありません。米国の「飼い犬」になっている支配的エリートと、マスメディアの80年にわたる「洗脳」の凄さを、つくづくと思い知らされます。

 「戦後」が遠ざかり、新たな「戦前」の危険性が近づいてきています。

 ウクライナを「道具」として使ったロシアの弱体化戦略と、台湾や日本を「道具」として用いての中国の弱体化戦略は、米国内でパラレルに進められてきた戦略です。

 もはや『前夜』などではなく、今まさに波濤が砕けるような時が来ていることに、身震いする思いがいたします。

 少数与党の自民党は、当然のことながら、公明党だけではなく、他党と連立を組む必要がありますが、維新や、国民民主党は、改憲による緊急事態条項の導入に賛成なので、連立内閣とはいっても、緊急事態条項導入を含む憲法の改悪が、実現に向かって進んでいってしまいます。

 緊急事態条項が憲法に加えられ、実際に発布されれば、議会制民主主義は完全にフリーズします。選挙も延々と延期され、立法府は機能せず、法律の代わりに、内閣が一方的に政令を出して、国民はそれに問答無用で従わなければならなくなります。国民は、主権者ではなくなってしまうのです!

 これはファシズムそのものであり、しかも自民党案では、その解除や出口は定められていません。「どこの国にも、国家緊急権の条項はある」などとうそぶく輩もいますが、日本のずさんきわまりない緊急事態条項案は、各国の戒厳令とは、その本質からしてまったく違います。

 そもそも、第2次大戦中の「大日本帝国」であっても、帝国議会は開かれていました。

 大政翼賛会による全体主義に覆われていても、大政翼賛会の推薦を受けずに無所属で立候補して当選する人物もいました。

 そうした人物のひとりが、安倍寛(かん)氏です。元外務大臣の安倍晋太郎氏の父親であり、安倍晋三元総理にとっては、父方の祖父にあたります。

 安倍寛氏は、政治家として、安倍元総理の母方の祖父の岸信介氏とは正反対の立場に立つ政治家です。

 「戦争反対」を叫ぼうものなら、「非国民」扱いされる戦時中時代に、「戦争反対」「金権不敗政治反対」「東條内閣退陣」まで訴えて、それでも有権者の支持を得て当選し、国会議員となった人物でした。

 軍国主義まっただ中の日本でも、このような人物が当選することができたのです。

 しかし、今度の緊急事態条項が通れば、そもそも選挙も開かれず、国会も空洞化するのですから、安倍寛氏のような、「非戦」「戦争終結」「東條内閣の退陣」までも主張した人物が国会議員になることは、ありえない話になります。

 自民党が用意している緊急事態条項による内閣独裁とは、結局のところ、戦時体制であり、国民総動員体制です。

 戦争に突入しても、国民は反対もできませんし、今のウクライナのように、負けがこんで、国民の大半が嫌気がさしていても、止めることができません。

 戦費調達のための増税、人権の制約、徴兵、戦時国債の強制、何から何まで、内閣が出す政令一つで決まりますし、逆らう手段はすべて禁じられます。

 しかも、今度、戦争となれば、日本の内閣の上には、その上位の権力として、日米安保条約と地位協定のもと、米軍の権力が存在します。解釈改憲によって、集団的自衛権が認められてしまい、米国の戦争はイコール日本の戦争になってしまいました。

 しかも戦時の指揮権を、日本は早々に米国に明け渡してしまっています。この指揮権を米軍が握るということと、日本の民主主義を殺す緊急事態条項は、表裏一体のものとして考えるべきです。

 しかも、ウクライナ紛争を見ていればわかる通り、米軍自らは後方へ下がり、同盟国なり、手下となる国々に血を流させます。自衛隊に対する指揮権を握ったまま、後方に下がって、日本の自衛隊だけが前面に押し出されるのです。

 日本は中国と、その同盟国のロシア、北朝鮮、下手をすると、中露と急接近したインドまでも敵に回してしまいます。これら4ヶ国はすべて核保有国であり、戦う前からすでに敗北しているようなものです。

 非核保有国は、核保有国を相手にしての通常戦争で、どこかの局面で、一時的に有利に立っても、それ以上、核保有国に攻め込んで、降伏に追い込むことはできません。

 第2次大戦までの戦争と、核兵器の登場以降では、戦争のルールは、根本的に大きく変わってしまったのです。

 ウクライナ戦争でも、NATOに全面的にバックアップされたウクライナ軍が、優位に立った局面もありました。

 しかし、ロシアを本気でおびやかすと、ロシア側は戦術核兵器を使うかもしれません。その懸念によって、ウクライナ軍も、ドイツのヴィースバーデン基地内から、実はウクライナ軍に指示を下していた米軍の将官も、立ち止まらざるを得ませんでした。

 核保有国の軍を相手にした場合、通常兵器の戦争で優位に立っていたとしても、非核保有国の軍は、核による反撃を恐れて、それ以上は踏み込めなくなるのです。

 この現実を、IWJは『IWJ号外』で報じているので、以下、御覧になってください。

※【IWJ号外】『ニューヨーク・タイムズ』の「ウクライナ戦争における米国関与の秘史」(第1回)ウクライナ紛争は、2022年4月から、ドイツのヴィースバーデンの米陸軍基地「クレイ・カザーン」が総司令部だった! 2025.9.17
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/529182

※【IWJ号外】『ニューヨーク・タイムズ』の「ウクライナ戦争における米国関与の秘史」(第2回)米軍ドナヒュー中将「ロシアを倒せば、君達(ウクライナ軍)を青(NATO軍)にしてやろう」と言った! 2025.9.22
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/529230

※【IWJ号外】『ニューヨーク・タイムズ』の「ウクライナ戦争における米国関与の秘史」(第3回) 2025.9.24
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/529247

※【IWJ号外】『ニューヨーク・タイムズ』の「ウクライナ戦争における米国関与の秘史」(第4回)日本のメディアは、米国とウクライナ軍との間のヴィースバーデン体制が存在したことすら知らぬ、存ぜぬ! 2025.9.26
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/529260

 日本は、自前のエネルギー資源もなく、食料自給率も低い島国であり、海上封鎖されれば、通常兵器での戦闘など、物理的に続けられません。

 では、日本も核武装すればいいではないか、プルトニウムの蓄積はあるし、技術もあるのだし、「短期間で核兵器はもてる」などという、口だけ勇ましいことを言う保守・右派の政治家や論客は過去にもいましたし、現在もいます。

 しかし、今年6月に勃発したイラン・イスラエル間の「12日間戦争」が、そうした可能性を打ち砕きました。

 核濃縮の可能性があるというだけで、イスラエルは、イランの核施設を爆撃し、さらに米国も、バンカーバスターでダメ押しするように核施設を爆撃しました。

 国際法に違反する軍事攻撃ですが、誰も非難できず、国際社会の誰も食い止められません。

 こうした先例が、できあがってしまったのですから、日本が、プルトニウムを利用して、核兵器を作り始めた、とわかったら、それが事実でも、事実でなくても、日本にとっての「敵国」から、日本の核施設を含む、軍事基地やエネルギー施設などの重要拠点を、ミサイルで空爆されることは絶対にない、とは、言い切れなくなりました。

 核施設への攻撃というタブーも、米国とイスラエルが先例を作ってしまい、もうなくなってしまったのです。

 日本は、核自爆施設ともいうべき、原発を海岸線にずらりと並べています。これらの原発に、ミサイルやドローンなどによる空爆が行われた時、各原発を守るミサイル防衛システムは配備されていません。

 たとえ配備したとしても、イラン・イスラエル戦争で証明されたように、囮(おとり)のドローンと、通常速度のミサイルの飽和攻撃により、迎撃ミサイルを撃ちつくしてしまい、その後に極超音速ミサイルを撃ち込まれてお手上げです。

 しかもドローンはきわめて安価であり、米国のパトリオットミサイルは1発で6億円近くもします。大量生産もききません。

 既存のミサイル防衛システムでは迎撃できない、極超音速ミサイルは、ロシアとイランは実戦ですでに用いており、中国も配備していますが、米国やイスラエルは保有していません。米国はいまだに開発に成功しておらず、最近になって共同開発を日本に持ちかけているところです。

 原発と同じく海岸線にむき出しに立っている、6ヶ月分しかない石油備蓄タンクも、軍事的標的として狙われる可能性があります。日本はエネルギーを一挙に失います。第2次大戦末期のように、海上封鎖されてしまえば、エネルギー資源はまったく入ってこなくなります。戦争遂行どころか、産業活動も、物流も、日常生活も、すべて止まります。

 しかも通常弾でも、原発を攻撃されれば、核攻撃を受けたと同様の放射性物質が大量かつ広域に拡散し、「不沈空母」どころか「死の列島」と化します。

 海上封鎖されている時、日本人には、ウクライナ国民のように、陸続きで難民として逃げる道も残されていません。食料自給率も低く、輸入に頼っている食料が途絶えたら、ただちに降伏しない限り、我々日本人は飢餓地獄に陥ります。

 しかし、そんな危機感は、自民党の新総裁となった高市氏からはまったく感じとれません。

 総裁選の間中、メディアに出ては中国に対して、日本が戦争してもわたりあえるかのような発言ばかり口にしているのを見ると、寒気がしてきます。

 さも、安全保障についてわかっているかのような口ぶりですが、リアルな戦争について、知識と理解を欠いていることは明らかに見てとれます。対抗馬かまったく知力を欠いた小泉進次郎氏だったから、引き立って見えただけの話だと思います。

 公平を期すために言っておけば、保守・中道・リベラルのどの政党であっても、正面から、自民党の米国頼みの安全保障政策に対し、対案を提示する党はありません。

 最大野党の立憲民主党は、創設者の枝野幸男氏自ら、「日米同盟基軸」と立党の時から今に至るまで言っていて、思考停止したままです。

 個々の党員の中には、現実に学んでいる政治家もいるでしょうが、そうした人が積極的に表に出てきて発言し、世論を変えようとしている気配はありません。

 米軍こそは世界最強であり、米国こそは軍事テクノロジーの最先端に位置している、という幻想に与党も野党もしがみついているのでしょう。

 しかし、極超音速ミサイル開発の遅れに現れているように、そんな時代はすでに終わっているのが、悲しいかな、現実です。米国が敵視している国々、特に中国に追い越されてしまっています。

 この現実を、目の前で見ているはずなのに、米国も日本もその現実を否認し続けたままです。

 米国が世界中に対し覇権を唱えていられたのは、世界各地の米軍基地の存在と、米国自慢の空母打撃群の存在でした。

 しかし、米軍基地も、洋上の基地である空母も、現在では極超音速ミサイルを中核とした飽和攻撃の絶好の標的となります。

 米軍の空母の建造価格は、最新かつ最大のジェラルド・R・フォード級の場合、1隻あたり1兆9000億円もします。

 その空母を取り囲む船団全体では、300億ドル(約4兆5700億円)とも言われています。

 そんな高コストな空母打撃群を、米軍は11個保有し、ライバルを圧倒してしていると胸を張り、日本のような同盟国も頼りにしてきたわけです。

 しかし、米国の製造業の空洞化と、高価な兵器による軍事費の増大による米国の財政危機によって、いつまで維持できるのか、危うくなっています。

 米国はもはや、造船業をほとんどもっていません。世界の造船業のうち、米国のシェアは、70年代半ばまでは世界最大だったと言われていますが、現在はわずか0.1%にしか過ぎません。

 それに対して、ライバルの中国のシェアは年々上昇し、現在は55%も占めています。実に、米国と中国との間には、550倍もの差があります。

 しかもサプライチェーンは、同盟国だけに依存しているわけではなく、米軍の艦船、戦闘機、レーダー、戦車、その他の軍備に用いられている膨大な数の半導体の多くが、中国製です。

 トランプ政権は、中国を関税政策で苦しめ、自国を強化できるかのように宣伝していますが、現実には中国に対してだけは、関税率を抑え、米中貿易は相変わらず続いています。

 輸出している中国側が、レアアースだけでなく、輸出を本気で控えたら、米軍も、米国もお手上げです。

 まして中国と戦い、虎の子の空母を失っても、自力では再建はできません。国内に造船場もほとんどないのですから。

 米国の財政危機の深刻さについては、日々、報じられているので、くわしくは述べません。

 トランプ大統領は、財政が危機にもかかわらず、富裕層にとって有利な減税を行い、貧富の格差はますます拡大して、社会は荒廃し、税収は減り、それを関税で埋めようとして、関税率を高め、輸入品の価格が高騰、インフレは止まらないという悪循環です。

 「モノ造り」を何から何まで空洞化してしまい、金融に特化して儲けようとしたあげく、米帝国は、急速に自壊しつつあると思えます。それをなぜ、政治家の誰もまともに直視して、認め、議論しようとしないのでしょうか。

 こうした空洞化した帝国に対して、どうして「断固として日米同盟基軸」などと依存を深めようとするのか。

 ここまでくると、現実の否認は、狂信とか、病的なレベルに達しているのではないかと思われます。

 それこそ、神国思想の狂信とか、聖書原理主義者の終末論とメシアの再臨への狂信とか、それらとほぼ変わらないレベルにまで、「神聖なる日米同盟」教と、「最強の米軍への依存」は、狂気を帯びているように感じられます。

 米国にのみ、頼り、米国の戦略に従って動かされて、米国から80兆円ものリターンなき投資をしぼられ、防衛費を増やし、対中国との戦争の矢面に立て、と言われて、「代理戦争」の駒とされる、そんな道を歩まされようとしているのに、政府も、与野党も、メディアも、こんな現実否認をしていては、日本は生き残れません。

 連日、書いていることですが、国難は避けられない、としても、大難を小難にとどめることはできるはずです。日本が対米自立を果たし、「敵国」ばかりになっている周辺国と和解して、各国と平和条約を結び、「敵」と戦うのではなく、「敵」と和解して、「敵」を消し去ることができるかどうか。

 対米自立と、周辺国との自力での平和構築に失敗すれば、日本は、大きな試練に直面します。平和の上にしか、国家としての繁栄も、国民としての日々の穏やかな暮らしも、築くことができません。

 間に合うでしょうか。懸念は尽きません。

 肝心なことは、前向きな希望を信じる力が残っているかどうかではないかと思います。

 厳しい経営の続くIWJの行方も、その希望をもてるかどうか次第だと思います。

 IWJの活動運営費は、約半分が、会員の皆様からの会費によって支えられています。残りの約半分が、ご寄付・カンパによって支えられています。

 困難は、迫ってきています。向こう10年以内が、東アジアにおいて、日本が、「代理戦争」の駒として使われてしまうかどうかの正念場です! そうした事態は、絶対に回避しなければなりません。

 今期16期もIWJは、日本だけでなく、西側に広がるプロパガンダにのみこまれず、真実をお伝えしていきたいと思います!

 どうぞ、緊急のご支援のほど、よろしくお願いいたします!

 岩上安身 拝

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**2025.10.9 Thu.**

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「トランプ関税」の衝撃波が世界を襲う! 貿易政策と安全保障政策の融合!? 逆に米国と同盟国に、経済破綻と社会崩壊の危機が迫る!? 岩上安身によるインタビュー第1188回ゲスト エコノミスト・田代秀敏氏 第1弾 2025.5.2
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/527367

40年間続いた米国債の価格上昇が、下落へ! 世界一米国債を保有する日本には、巨大な含み損が発生! 米国債務は対GDP比100%を超え、利払い費だけで、米防衛費を超過!「アメリカの、世界に対する覇権を支えている財政システムが、大変動を起こしている」! 岩上安身によるインタビュー第1195回ゲスト エコノミスト・田代秀敏氏 第2弾 前編 2025.6.8
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/527763

フォン・デア・ライエン委員長は「我々が知っていた西側は、もはや存在しない」と宣言!「日本人がもっと真面目に考えないと。日本の立ち位置って何ですか?『西側の一員です』と。でも、その『西側』はないんです」! 米国債がクラッシュしてしまえば、最大保有国である日本は、最大の被害国に! 岩上安身によるインタビュー第1195回ゲスト エコノミスト・田代秀敏氏 第2弾 後編 2025.6.8
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/527782

ヒンドゥー至上主義のインド・モディ政権によって酷い差別を受けているカシミールは、ユダヤ人至上主義によって民族浄化を受けるガザと共通性がある! パレスチナ問題とカシミール問題はともに大英帝国支配の負の遺産! しかし、英国は責任を果たさない! 岩上安身によるインタビュー第1194回ゲスト 現代イスラム研究センター理事長 宮田律氏 第1回 2025.5.30
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/527633

イスラエルは、トランプ米大統領のリゾート開発構想のために、ガザ戦争を再開! 毎日100人単位でパレスチナ人を殺害しているのに、主要メディアではほとんど報じられず、批判もされない! ユダヤ教の極右政党と連立するネタニヤフ政権は、UNRWA施設を破壊し、職員も殺害! 人道援助を妨害し、ガザは「国際法の墓場」に! 岩上安身によるインタビュー第1194回ゲスト 現代イスラム研究センター理事長 宮田律氏 第2回 2025.6.6
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/527726

「トランプは戦争をしない」は嘘! 米大統領がバイデンでもトランプでも、イスラエルのやることは全部支持! キリスト教に妥協したユダヤ教徒と、キリスト教シオニストの福音派の猛烈な支持を抜きには考えられず、イスラエルの利益を最大限に追求!~岩上安身によるインタビュー第1176回ゲスト 現代イスラム研究センター理事長・宮田律氏
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/526058

「戦争をやめさせる」はずのトランプ内閣が、ウクライナ紛争を剛腕で停戦させようとしているのに対し、イスラエルのジェノサイドはなぜ野放し!? その謎に迫る!!【ガザ戦争とハマス】15ヶ月に及ぶ戦争は中東地域に何をもたらしたか? トランプ政権によってパレスチナはどうなるのか? 岩上安身によるインタビュー第1184回ゲスト 現代イスラム研究センター理事長・宮田律氏 2025.2.25
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/526531

2024年を振り返る! そして1ヶ月後に始まる第2次トランプ政権で、米国は、そして世界はどう変わる!?~岩上安身によるインタビュー第1175回 ゲスト 元外務省国際情報局長・孫崎享氏
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/525988

ハミッド・ダバシ氏が指摘「ガザのおかげでヨーロッパ哲学の倫理的破綻が露呈した」!「ガザ攻撃における植民地主義の視点」~岩上安身によるインタビュー第1145回 ゲスト 東京経済大学教授 早尾貴紀氏 2024.2.7
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/521575

「イスラエルがどんな戦争犯罪、人道に対する罪を行っても一度も裁かれなかった。こういう国際社会の『伝統』がジェノサイドを可能にしている」!!~岩上安身によるインタビュー第1144回 ゲスト 早稲田大学文学学術院教授・京都大学名誉教授・岡真理氏 2024.2.2
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/521515

イスラエルがパレスチナ・ガザ地区に対して行なっているのは「民族浄化」! イスラエルによる「報復」でもなければ、ハマスとの戦争でもない!~岩上安身によるインタビュー第1138回 ゲスト 東京経済大学教授 早尾貴紀氏 2023.11.13
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/519713

「絶望」に突き動かされたハマスがイスラエルを急襲! イスラエルは、「報復」の名のもとに「民族浄化」を開始! パレスチナ人の「完全追放」まで至るのか!?「第2のナクバ」に~岩上安身によるインタビュー第1137回 ゲスト 放送大学名誉教授 高橋和夫氏 2023.11.9
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/519653

対等な者同士の「ハマス・イスラエル戦争」ではない!「植民地主義とそれへの抵抗であるという基本的な視点が必要」~岩上安身によるインタビュー第1136回 ゲスト 東京大学名誉教授 板垣雄三氏 2023.11.2
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/519527

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■欧米NATO対ロシアの戦争は、本当に近づいているのか!? 日本国民にとっても、他人事ではない現実!! ポーランド領空侵犯事件、ルーマニア領空侵犯事件に続き、ロシア軍機が「エストニア領空を侵犯」!? その真相と動機は!?(その3)国連安保理でも「国連憲章の明白な違反」とエストニアが非難すれば、ロシアは「ポーランド領空侵犯事件」の虚偽を指摘し「ワルシャワもブリュッセルも真実を必要としてはいない」と応酬! NATO第4条会合は「NATOとその同盟国は、あらゆる方向からのあらゆる脅威を抑止するために必要なあらゆる軍事的・非軍事的手段を用いる」と表明!

 9月19日に、ロシアのミグ31戦闘機3機が、12分にわたってエストニアの領空侵犯をした、とエストニアが訴えた件について、22日に国連安全保障理事会が緊急会合を開催し、北大西洋条約機構(NATO)は23日に、NATO第4条協議を開催しました。

 9月30日のこの『日刊IWJガイド』でお伝えしたように、エストニア領空侵犯事件をめぐっては、ロシア側は、飛行は「国際規則に厳密に従って」行われたと、領空侵犯自体を否定しています。

※欧米NATO対ロシアの戦争は、本当に近づいているのか!? 日本国民にとっても、他人事ではない現実!! ポーランド領空侵犯事件、ルーマニア領空侵犯事件に続き、ロシア軍機が「エストニア領空を侵犯」!? その真相と動機は!?(その2)一方ロシア側は領空侵犯の事実さえ否定! スコット・リッター氏はこれらの領空侵犯事件は「100%仕組まれたもの」で「政治的なゲーム」であり、ポーランドへの西ウクライナ移譲のための準備だと独自見解を披露!(日刊IWJガイド、2025年9月30日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20250930#idx-3
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/iwjmailnews/55124#idx-3

 ロシアの主張は、エストニアの主張とは真っ向から対立しています。国連安保理とNATOは、どのようにこの事件について議論を交わしたのでしょうか。

 9月23日更新の『CNN』は、22日に開催された国連安保理の議論を伝えています。

 英国のイベット・クーパー外相は「(モスクワは)NATOとロシアの直接の武力衝突」のリスクを冒している、と主張しました。

クーパー英外相「我々の同盟は防衛的だが、誤解してはいけない…もしNATOの空域で、許可なく飛行している航空機に対抗する必要があるなら、我々はそうするだろう」

 米国のマイケル・ウォルツ国連大使は、米国とその同盟国は「NATO領土を隅々まで防衛する」と表明しました。

 ポーランドのラドスワフ・シコルスキ副首相は、ロシア代表団に直接、「我々は、あなた方が国際法を気にかけておらず、隣国と平和に暮らすことができないことを知っている」と述べました。

シコルスキ副首相「あなた方の狂気のナショナリズムには、支配欲が宿っており、帝国の時代は終わり、あなた方の帝国は再建されないと悟るまで、その欲望は消えることはないだろう。

 ウクライナ軍の英雄達―――神のご加護がありますように―――によるドローン攻撃のたびに、この日が近づくのだ」

 エストニアのマルグス・ツァクナ外務大臣は、「国連憲章の明白な違反」だとロシアを非難しました。

ツァクナ外務大臣「国際社会は、さらなる緊張の高まりを防ぐために、国連憲章のこうした明白な違反行為の終結を、断固として要求しなければならない。(中略)

 ロシアの脅迫や挑発によって、ウクライナを支援するという我々の決意が弱まることはない」

 エストニア出身のカヤ・カッラス欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表(外相相当、カッラス氏は、欧州委員会の副委員長でもある)は、この事件は「意図的な挑発」であり、「ロシアは欧州の国境を試し、安全保障を損なっている」と非難しました。

 これらの非難に対し、ロシアのドミトリー・ポリャンスキー国連次席大使は、ロシア軍機は国際空域にとどまっていた、と主張。「欧州はあからさまな嘘を広めている」と非難しました。

 ポリャンスキー国連次席大使に対して、エストニアのツァクナ外相は、「ロシア軍機がエストニアの領空に侵入したことを示す地図とレーダーの録画」と「ロシア軍機の写真」を示し、同機は「戦闘態勢」にあり、ミサイルを装備していると反論しました。

※European allies warn they will shoot down Russian jets or drones that violate NATO airspace(CNN、2025年9月23日更新)
https://edition.cnn.com/2025/09/21/europe/estonia-un-security-council-russian-jet-incursions-latam-intl

 『DRMニュース』は、同国連安保理緊急会合をライブ中継しています。

※LIVE: UN Security Council Emergency Meeting on Russia’s Estonian Airspace Violation(DRM News、2025年9月22日ライブ配信)
https://www.youtube.com/live/e4FF3-LsXiI

 ロシアのポリャンスキー大使は、「いかなる出来事も、即座に反ロシア的な文脈で解釈」され、「ロシアとの戦争は、避けられないという考えが、ヨーロッパ市民の頭に激しく叩き込まれ」ていると述べ、「欧州のパラノイアは、前例のない極限に達している」と非難し、「ポーランドの領空侵犯事件」は「虚偽」であると指摘しました。

 ポリャンスキー大使は、「ワルシャワ(ポーランド政府)も、ブリュッセル(EU)も、真実を必要としてはいない」とも非難しました。発言の一部を、抜粋でご紹介します。

ポリャンスキー大使「議長、かつてヨーロッパは、私達の多くにとって、ルネサンスや啓蒙時代、そして高度な哲学、文化、科学と結びついていました。

 ところが、今日では、残念ながら、それらすべてが取り返しのつかない過去のものとなってしまいました。

 ヴォルテール、ルソー、カントといった進歩的な思想家達は、フォン・デア・ライエン(EU委員長)やカッラス、ジョンソン(ボリス・ジョンソン元英首相を指すと思われる)といった、卑小で狭量な、ロシア嫌いの人物に取って代わられました。

 彼らの熱心な取り組みによって、我が国に対する原始的な憎悪と、我が国をヨーロッパ全体の安全保障に対する最大の脅威として描き出そうとする試みが、ヨーロッパ諸国の唯一のイデオロギーになりつつあります。(中略)

 いかなる出来事も、即座に反ロシア的な文脈で解釈されます。ロシアとの戦争は避けられないという考えが、ヨーロッパ市民の頭に激しく叩き込まれています。

 ロシアにはレッテルが貼られ、『敵』であるというイメージが、事実や証拠を一切顧みることなく、形成されています。そして、彼らの主張が虚偽だと判明しても、明白な嘘を広めたことについて、謝罪しようとする者は誰一人いません。

 本日、私達はこれを確かめる絶好の機会を持つことになるでしょう。この会場を埋め尽くしているヨーロッパの『喝采団』は、いつものようにあらゆる手段を尽くして『ロシアの脅威』とやらを妄想するからです。

 この偏執症は、前例のない極限に達しています。

 ほんの先週、私達はこの場で、ロシアのドローンがポーランド領空に侵入したという根拠のない非難を聞かされました。しかし、これらのドローンがロシア製であることを裏付ける証拠は、今日に至るまでひとつも示されていません。

 さらに注目すべきことに、その数日後、(ポーランドの)ルブリン県で、住宅ビルの屋根が損傷した事件―――この反ロシア的キャンペーンの重要な要素となっていた―――は、実際には、ポーランド空軍の戦闘機による誤ったミサイル投下が原因であったことが判明しました。

 そして今日、ポーランドのトゥスク首相自身が、発見されたドローンには、ひとつとして爆発物が搭載されておらず、民間人に対して脅威を及ぼすものではなかった、と認めました。

 ポーランドの野党は、『事の本質は、ポーランドを戦争に引きずり込もうとする露骨な挑発行為にある』と、直接、指摘しました。

 議長、私達は、自国の軍隊に対する非難を、非常に真剣に受け止めています。そして、最終的に何が起こったのかを理解するための事実を、常に得ようと努めています。

 したがって、この事態を解明するため、私達は直ちにポーランド側に2国間協議を提案しました。しかし、このイニシアチブに対するワルシャワからの適切な反応は、一切ありませんでした。

 これは、ただひとつのことを物語っています。ワルシャワも、ブリュッセルも、真実を必要としてはいないのです。彼らが必要としているのは、新たな『反ロシア・キャンペーン』の口実だけです」

※”Paranoid and Pathetic”: Russia Responds to Estonia Airspace Allegations  RU-EN(Freelensia、2025年9月22日ライブ配信)
https://youtu.be/rFS8nAIVcXQ

 9月23日に開催されたNATOの第4条協議会合は、ロシアを強く非難し、NATOの強力なロシア対応を表明する声明を出しました。

 「北大西洋理事会は、ワシントン条約第4条にもとづき、エストニアの要請により今朝会合を開き、協議を行った。9月19日のロシアによるエストニア領空への危険な侵犯を強く非難する」。

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■<臨時休刊のお知らせ>10月10日発行の『日刊IWJガイド』は休刊いたします。

 10月10日発行分の『日刊IWJガイド』は、臨時休刊とさせていただきます。

 岩上安身の体調が、思わしくなく、爆発音のような、ひどい耳鳴りがする状態です。働き過ぎを控えて、安静にし、足りない睡眠と休養を取るようにします。

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 それでは、本日も1日、よろしくお願いします。

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IWJ編集部(岩上安身、六反田千恵、尾内達也)

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