2013/06/15 「流通している食品の中には産地偽装され、放射能検査をしていないケースも」 ~「市民と科学者の内部被曝問題研究会」研究報告会 1日目  

記事公開日:2013.6.15
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 2013年6月15日(土)16時20分より、東京千代田区にある日比谷図書文化館で、「市民と科学者の内部被曝問題研究会」研究報告会の1日目が開催された。この研究報告会は、6月15日、16日の2日間で行なわれる。1日目の特別講演では、宗教学者の島薗進氏が「福島は5重苦と言われている。地震、津波、原発、風評被害、離散・分断被害。とくに離散・分断被害は、科学者に責任がある」として、現在の放射能防護体制や御用学者を実例を挙げて批判した。

■内容

  • 16:20~ 沢田昭二氏「放影研の『黒い雨』に関する見解を批判する」
  • 16:40~ 牛山元美氏「内部被ばく問題に臨床医としてどう関わっていくか ― ベラルーシ研修、被ばく関連検診の報告」
  • 17:00~ 大沼淳一氏「市民放射能測定センター(Cラボ)が取り組んできたこと」
  • 17:30~ 特別講演 島薗進氏(上智大学 教授)「つくられた放射線『安全』論」

■主催 市民と科学者の内部被曝問題研究会 (ACSIR)詳細

 まず、名古屋大学名誉教授の沢田昭二氏が「世界で、内部被曝を過小評価する一番の根拠にされるのが、放射線影響研究所の原爆被爆者の研究だ。原爆被爆者認定裁判で、もっとも批判されたのが、御用学者による『彼らに、放射線降下物の影響はなかった』という証言だ。今、厚労省で、原爆症認定基準を改訂中だが、放影研は放射線降下物の影響はないことにしようとしている」と述べ、「われわれは、ねじ曲がった科学を正しいものにしていこう」と呼びかけた。

 次に、さがみ生協病院医師の牛山元美氏が登壇。牛山氏は、今年3月、ベラルーシの医学アカデミーで医師向けの研修に参加した際、ある教授から「チェルノブイリ原発事故当時、原発から300キロ離れたミンスクに住んでいた。何も知らない6歳の息子は外で遊び回り、家に帰ってくると吐き気を催した。ほかの多くの子どもも同様だった。その原因は25年たっても不明だ」と聞いたという。

 その上で、「自分が住む神奈川県相模原でも、3.11以後、子どもの鼻血の症例を多く聞いた。医者の常識では、放射能が原因の鼻血は200ミリシーベルト以上の急性被曝をしないと起こらない。相模原ではありえないはずだが、自分にも子どもがおり、母親の感覚としては『おかしい』と思う」と語った。また、被曝の健康被害を調べるスクリーニングが福島県内でしか行なわれていないことを問題視。さがみ生協病院でスタートした「放射線被ばく関連健診」について説明した牛山氏は、「被曝による健康被害を減らすために、医師としてできることを行ないたい」と語った。

 大沼淳一氏は、市民放射能測定センター(Cラボ)の取り組みについて説明し、「当センターは、この1年半の間に1600検体ほどを測った。これは国の測定数の1%にあたる。現在、日本には100ほどの測定グループがある。明らかに国の実施数は少なすぎる」と指摘した。さらに、同センターの検査で汚染が判明した、愛知県の放射性セシウム含有腐葉土、春日井市の学校給食、メディアに大きく取り上げられた、岡崎市竹の子幼稚園の給食で使用された乾燥シイタケについて、経緯を報告。「乾燥シイタケを調べたら1260ベクレル/キロが検出され、保健所に通報した。行政での再測定の結果は1400ベクレル/キロ。流通ルートを調べると、メーカーは当初、仕入れ先をごまかしたが、茨城県JAから仕入れた乾燥シイタケを、放射能検査をせずに他産地のものに混ぜて出荷していたことが判明した」と振り返った。

 宗教学者で前東京大学大学院教授の島薗進氏は、近著『つくられた放射線「安全」論』を上梓した理由について、「原発事故後、『原子力工学のムラ』では反省の色が伺えるが、『放射線の健康影響はないとするムラ』があり、今なお強固に牙城を守り、政府に対する影響力を保っているのが不思議だった。いまだに権力を持ち続ける山下俊一氏や東京大学准教授の中川恵一氏らの、発言の背景を調べてみた」と述べた。

 続けて、「100ミリシーベルト以下の被曝は健康被害はないという説は、電気中央研究所が筆頭になり、現在は放射線医学総合研究所にいる酒井一夫氏が旗振り役で進めている。1999年、『低線量放射線影響に関する公開シンポジウム』が、米仏日の機械学会共催、電事連のバックアップで開催された。これは、放射線防護のために使っている多額の予算を減らす目的の国際学術会議だ。チェルノブイリ原発事故以降、衰退した原発業界の復興計画の一端だった」と、放射能推進の方向へ進む学会の動きを説明した。その上で、3.11による放射線リスクコミュニケーションの破綻を受けた日本学術会議の動きを例に挙げて、「学者たちも自己反省し始めた」と解説した。

 島薗氏は、原発事故後の福島の現状について、「福島は5重苦、と言われている。地震、津波、原発、風評被害、離散・分断被害。とくに離散・分断被害については、科学者に責任がある」と語り、発災後、専門家や日本学術会議のとった年間20ミリシーベルト基準の指針や、安心安全を流布した学者たちの態度を批判した。

 また、住民の健康調査について、島薗氏は「福島同様に被曝している茨城県、岩手県、千葉県の住民などは含まれていない。福島の県民健康管理調査でも、白血球分画検査などの上乗せ健診は、浜通りの住民しか対象にしていない。中通りは検討中だという。山下氏が秘密会議で『20ミリシーベルト以上の地域に4ヶ月いた住民が対象』としていたものが、消えているのだ」と述べた。さらに、「山下氏がチェルノブイリで行った健康調査では、子どもに白血球系異常が多数認められていたにもかかわらず、福島では、それをまったく話題にしていない。だが、福島でも、すでに白血球異常は見つかっている」と指摘した。【IWJテキストスタッフ・関根/奥松】

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コメント “2013/06/15 「流通している食品の中には産地偽装され、放射能検査をしていないケースも」 ~「市民と科学者の内部被曝問題研究会」研究報告会 1日目

  1. 島薗進氏(上智大学 教授)の過去の学会発表の題目を追った結果の話しで、「3.11福島事故の前に「放射線リスクコミニュケーション」が推進され、世の中の経済的影響で研究者の研究費の国家予算が削減される中で「放射線はそんなに悪さをしないと言う方向の研究」へ業界団体からの寄付が増え、それに頼る割合が多くなった。学会の中で、原発推進側に寄与する研究題目へ業界団体からの寄付の金が流れる仕組みが構築され、それに放医研が中心的役割を果たし、まず広島、長崎の大学、研究組織への抱き込み政策が実行された。この様な歴史的経過を経て放射線は怖くないという事が喧伝される様になった」由。御用学者が育成された仕組みが分かる。
     放射能安全神話はこのような歴史を辿って形成され、研究者は学問的真理よりも日常の研究資金や地位が得られる方向へテーマを変えたことで生まれた。広島、長崎の研究者たち特に山下氏が、安全神話を福島の放射能被害を実際に受けた地域に講演して廻った背景が良く理解できた。ここで注目すべきは「国家予算が削減」という話しである。税金の本来の正当でクリーンな使う手番、つまり、研究者が予算提案して折衝して査定し、国会で議決することで決まるルートではなく、原子力業界団体(結局これも税の別枠)経由の寄付に入れ替わったことで、どちらも国家予算の税を使っている事に変わりは無いが、税金の流れるルートを変えるだけで、ある特定の利益・利権団体がこのような学会、学者の研究方向を自分に寄与する方向のみに変えてしまえるとう事に、国民は気がつくべきである。これは恐ろしい事実である。国民は、税金の使途を国会を利用して決める権利を実際には喪失していたという事であろう。
     大沼淳一氏「市民放射能測定センター(Cラボ)が取り組んできたこと」の話しで、スパーやコンビニに並んでいる定番商品にも基準以下であるが放射能が検出されるという事実は恐ろしい。産地偽装もある。測定器にも優劣があり、結果が信用できないものもある由。もし地方の行政が悪意で検出感応性能が悪い機器を採用すれば実質的に基準を甘くできることを示している。今後、市場に出回る商品は全て、性能確認された機器で全数検査し、使用機器と測定結果の数字を表示すべきである。少なくとも消費者が購入時点で商品の可否を表示内容の数値で判断できる仕組みを構築されるべきだ。これは事故直後より、放射能が自然環境で全国に拡散してくるこれからの仕組みとして必要になると思う。このような地道な努力は後の貴重な資料になる。

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