「自死を含む死を意識したコメントが、29件確認されている」――「インボイス制度を考えるフリーランスの会」の阿部伸氏は、実態調査で明らかになった深刻な現状を、関係省庁の官僚に向けて語った。
2024年4月26日、東京都千代田区の衆議院第2議員会館で、「インボイス制度を考えるフリーランスの会」が、2024年3月22日から4月5日にかけて行ったオンライン調査の結果を発表した。インボイス問題検討超党派議員連盟の会合の一環で、会場には政府交渉のために呼ばれた、財務省、国税庁、中小企業庁、公正取引委員会など、関係省庁の官僚が並んだ。
「インボイス制度を考えるフリーランスの会」によると、インボイス制度に対する実態調査には、7000人超が回答を寄せ、そのうち8割がフリーランス・自営業者だったとのこと。
調査が行われたのは、昨年10月にインボイス制度が導入されてから、最初の確定申告期間の直後であり、消費税の納税期間と重なる。
国税庁は、インボイス制度の導入に際し、「激変緩和措置」として、2023年度から消費税課税事業者となる売上高1000万円以下の事業者に対し、本来の消費税の8割を控除する「2割特例」を、2026年までの期間限定で設けている。
それでも、不景気・物価高の中で導入されたインボイス制度は、フリーランス・個人事業主らに、深刻な影響を及ぼした。
自由解答欄に寄せられた4500人以上のコメントの中には、「インボイスによる負担増で莫大な借金をしており、利息と取り立てで毎日自殺を考えている」「(インボイス制度で)寝る暇もなくなるほどの事務作業が増え、このままでは過労死してしまうと感じる」「生活が成り立たないときには年齢的に再就職も難しいため自殺しかないと思っている」などの死を意識したコメントが、29件もあったというのである。
しかも実態調査では、インボイス登録をした事業者のうち、203人が消費税を支払うために、何らかの形で借り入れをしたことも明らかになった。
阿部氏は官僚らに向かい、「これが正しい税制ですか?」と問いかけ、「危険な制度」だと訴えた。
中小企業や自営業者らからの多くの反対の声にもかかわらず、インボイス制度の実施を強行した岸田文雄総理は、実施直後の2023年10月25日の参議院代表質問で、立憲民主党の田名部匡代参院幹事長の質問に対し、「廃止することは考えていない」と明言した。
- 首相、インボイス制度「廃止考えず」 参院代表質問(日本経済新聞、2023年10月25日)
インボイス問題検討超党派議員連盟会長の末松義規衆議院議員(立憲民主党)は、この4月26日の政府交渉で、「立憲民主党政権になったら、インボイス制度は廃止する」と明言した。
れいわ新選組の櫛渕万里衆議院議員は、「大事なことは、これだけ今、現場から悲鳴が上がっていて、政府が実態 調査するのかしないのかここが聞きたい」と述べ、次のように訴えた。
「『正しい税制なんですか』という問いかけは、本当に、深刻すぎると思います。
この問いかけは、本質的だと思います。税金を払うために借入れして、そのために倒産したり、あるいは自死を考えてしまう、あるいは意識をしてる人がいるという、これは、間違ってる税制以外の何ものでもないじゃないですか」。
「各関係省庁において、業界の状況をきめ細かくフォローアップしている」という財務省の答えに対し、櫛渕議員は「より細かな、これまで以上の実態調査」を要望したが、財務省の担当者は「この場で(調査を)やる、やらないとお答えするのは難しい」「議連から要望があったことは認識させていただく」と答えるにとどめた。
その後、「インボイス制度を考えるフリーランスの会」メンバーから、出席した関係省庁の官僚へ、報告書が手交された。