「コロナ禍で文化庁の『継続支援事業』に申請したフリーは8万人! アンケートではインボイス導入で2割が『廃業を考える』と答えている!」~11.16「STOP!インボイス」漫画・アニメ・声優・演劇4団体の記者会見 2022.11.16

記事公開日:2022.11.18取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2022年11月16日、午後1時より、東京の千代田区立日比谷図書館文化スタジオプラスにて、「インボイス制度を考えるフリーランスの会(「STOP!インボイス」)」の主催で、漫画・アニメ・声優・演劇4団体による「STOP!インボイス」記者会見が行われた。

 会見は、エンターテインメント4団体(漫画・アニメ・声優・演劇)の合同名義で行われたが、各業界団体が発足したのも、そして、業界を超えて、横の連携・連帯をするのも、エンタメ業界においては初めてであるとのことで、業界としての危機感の大きさがうかがわれた。

 登壇者は、「インボイス制度を考える演劇人の会」代表世話人で劇作家・演出家・俳優の丸尾聡氏、「インボイス制度について考えるフリー編集(者)と漫画家の会」代表で漫画家の由高れおん氏、「アニメ業界の未来を考える会」世話人の植田益朗氏、および大塚雅彦氏、そして、VOICTION(※)共同代表で声優の岡本麻弥氏らが登壇し、各団体が実施したアンケートをもとに、業界の現状とインボイス制度が及ぼす影響等について訴えた。

 登壇者それぞれの発言の詳細については、全編動画を御覧いただきたいが、ここでは、演劇業界の状況ついての丸尾聡氏の発言を紹介する。

丸尾氏「3年前ですね、安倍元首相の『イベント自粛』により、多くの公演が中止・延期となりました。また、当初は補正予算などで、文化・芸術に特化した助成というのはゼロだったんですね。ですから、そういう中で、多くの働きかけが必要でした。

 何とか継続の道を探ろうとしている舞台芸術に関して『不要不急』という声もたくさんいただきました。それは、僕らにとっては大変なショックだったわけなんですけれども、その後もコロナの波が来るたびに講演が突如中止せざるを得なくなったり、数カ月準備していたことが一瞬にして無になるということもたくさんありました。

 毎日中止になるんじゃないかと思いながら、稽古を毎日、毎日しているというストレスもまた大変なものだったと思います。そういった中止や延期による経済的損失というのは確かに大変なんですが、また、このコロナで劇場に足を運ぶお客さんが減ったと。

 そして、それはいまだに戻りきってはおりません。文化庁や経産省の助成というものをしていただいて、何とか息をついてきたというのが現状です。しかも、先の第7波では、短期間でこれまでで最大の影響があって、少なくとも8月から9月の
途中までで、100以上の公演が中止延期となっているという現状があります。(中略)

 その中で、賃金も上がらない、ギャラも上がらない、物価高、そして業界の7割を直撃する『インボイス制度』がまた始まろうとしている、という状態です。

 まあ、これ(と言ってパワポを示す)、『仕事はどうなるんですか? 皆さん、どうなると思います? これ(インボイス制度)がされたら?』というアンケートですね。これに関しては、何と、『廃業せざるを得ない』、あるいは『廃業を考える』という方が2割。これはえらいことです。2割の方がそれを考えざるを得ない。

 その状況の中でインボイス制度が始まる、と。これね、ちなみに、令和2年に、文化庁がコロナ支援のために行った『継続支援事業』というのがあるんですけれども、これに申請したフリーランスが約8万人いると言われています。(中略)

 この国の文化は、それは、本当に憲法で国民に保障されている『文化的な生活を享受する』ということが守られるのか? そして、いったんなくなってしまったら、技術者ですからね。舞台関係の人たちって、俳優も含め、この技術が失われる。後進が失われる。特に、若い人がいなくなる。

 これで、『インボイス制度』がそこにさらに重くのしかかってくる。ということは、『インボイス制度』をやったら、人がやめちゃうということなんです。これは、このままだと、本当に、日本の文化・芸術の未来というのは、もう先細っていくということが明らかだと思います。

 そして、ちょっともう時間がないのであれですが、あと(『インボイス制度』についての)認知、つまり、これは演劇界の中でですね、ほとんど認知が広がっていないということがあります。もちろん、僕たちの勉強不足もあるでしょうが、やはりこの制度を実施するとなったとき、一体どうなるのかという説明が足りなかったということも事実ではないかなと思います。

 ちょっと、本当はまだまだ話したいこともあるんですが、時間なので、ここまでにします。インボイス制度には反対します!」

 政府は、「インボイス制度」の導入を巡り、2023年10月の導入時に、小規模事業者向けに、少額の取引であれば、仕入れ時にかかる消費税額の控除をインボイスがなくても受けられるように「猶予措置」を設け、中小零細企業の事務負担を軽くする方向で調整に入ったといわれている。あくまでも、「導入ありき」の姿勢だ。

 『インボイス制度』の導入の前に、長引く不況とコロナ禍、そして、昨今の物価高などの影響により、個人事業主を含む中小事業者は、すでに大きなダメージを受けている。そのような中で、政府はなぜ、今、『インボイス制度』を導入しようとするのだろうか?

 国税庁によれば、「取引の正確な消費税額と消費税率を把握すること」が『インボイス制度』導入の目的だとしているが、これだけでは、明らかに説明不足である。

 当たり前のことだが、日本の経済・文化を担っているのは大企業だけではない。それは、多くの小規模事業者たちの提供する技術、労働によって支えられている。その小規模事業者たちを『廃業』に追い込むような制度を導入するにあたって、まずは、対象となる事業者の不安の声に耳を傾け、制度について丁寧に周知・説明することが必要ではないだろうか。

 記者会見の詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2022年11月16日(水)13:00~14:00
  • 場所 千代田区立日比谷図書文化館スタジオプラス 小ホール(東京都千代田区)
  • 主催 インボイス制度を考えるフリーランスの会(「STOP!インボイス」)

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