「生産性が低いフリーランスはいなくなって下さいと言われているように感じる!」消費税免税事業者を追い詰めるインボイス制度で「1ヶ月分の収入を失う」!!~12.16《STOPインボイス!》財務省への署名簿提出及び記者会見 2021.12.16

記事公開日:2021.12.17取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2021年12月16日午前10時半より、東京都千代田区の衆議院第一議員会館にて、「フリーランス・個人事業主の市民の会」が、2023年10月に導入される「インボイス制度」に反対する3万1570筆の署名を財務省に提出し、その後、記者会見を行った。

 「インボイス」とは、政府が導入する「適格請求書」制度のことである。

 この制度導入により、2023年10月1日以降、事業者が仕入れ税額控除(課税売り上げから課税仕入れに関する消費税を控除すること)を受けるためには、「適格請求書等保存方式」という、新しい要件を満たした請求書や納品書で取引をしなくてはならなくなる。

 この「適格請求書」には、「インボイス制度の登録番号」が記入される。登録番号は、消費税の課税事業者登録をしなければ発行されない。

 ここで問題になってくるのが、売上高1000万円以下の小規模事業者だ。現在、売上高1000万円以下の小規模事業者は、原則消費税の納税が免除されている。

 しかし、インボイス制度が導入されれば、事業者(発注側)が免税事業者(受注側)から仕入れた場合、仕入れ税額控除ができなくなる。

 これを避けるためには、売上高1000万円未満の小規模事業者(フリーランス、個人事業主)であっても、課税事業者登録をして、消費税を納税しなければならなくなる。あるいは、「課税事業者登録をしなければ、取引をやめる」と、発注側が受注事業者に登録を強要することも考えられる。

 消費税のインボイス制度が実施されれば、全国約500万の免税業者や約1000万人いるといわれるフリーランスに、消費税の納税義務が広がる。コロナ禍で苦しんでいる中小業者や個人事業主など、幅広い人々から制度の中止を求める声が上がっている。

 「個人事業主とフリーランスは、インボイス制度で今、まだ始まる前なのに、不安と苦しみをすごく覚えています。その声を届けに来ました。どうぞよろしくお願いします」。

 署名サイト「change.org」で「《STOPインボイス!》弱いものから搾取し、多様な働き方とカルチャーを衰退させるインボイス制度を廃止してください!」というキャンペーンを立ち上げたライター・編集者の小泉なつみ氏は、そう言って財務省の担当官に署名簿を手渡した。

 続いて、財務省の担当官が質問に答える形での意見交換が行われた。

 しかし、「インボイス制度の導入は、平成28年度の法律改正、およそ6年前の法律改正で決まったこと」など、その回答は誠実なものとは程遠い、一方的な内容だった。

 参加者からは、「これで納得する方がいらっしゃるんですか? 私は何一つ納得できなかった」、「はっきり言って今の説明の何パーセント理解できたか自分でもわからない」などの意見が上がった。

 意見交換に参加した日本共産党の宮本徹衆議院議員は、財務省担当官に、次のように語った。

 「『色々な対策はとりますよ』とおっしゃいますけど、現状は、今の日本社会の大企業と中小企業、フリーランスの皆さんとの力関係のもとでは、なかなか皆さんがおっしゃるような状態になっていないまま推移してきているわけですよ、ここ数年ね。

 そのもとで、見直しを始めなければいけない時期に私は来ていると思いますので、先ほど、『出版業界の実態調査をしてくれ、働いている方の話を聞いてくれ』という話がありましたけれども、本当にですね、ぜひ、現場の皆さんの声をもっとたくさん聞いて、本当にこのままやっていいのかということを真剣に検討して頂きたい」。

 その後の記者会見には、小泉氏、グラフィックデザイナーの中村健(たけし)氏、フィナンシャルプランナー・ライターの菊地季美子氏、以前からインボイス制度の導入に反対してきた税理士の佐伯和雅氏と全国商工団体連合会・常任理事の中山眞(まこと)氏が登壇した。

 会見冒頭、小泉氏は次のように訴えた。

 「まず私がインボイス(適格請求書)を発行する事業者になれば、私の場合ですが、大体、約一月分の収入を失います。つまり、一月分タダ働きすることになるわけです。それが嫌なら、発注元から切られるかもしれないリスクを背負うことになります。

 この制度は、『AかBか選んでいいよ』と言っているように見えるのですけれども、AもBも無傷ではいられません。むしろ、どちらも大怪我をします。そのような選択を私は選択と呼ばないと思います。

 この聞き慣れない、すごく難しい制度を私なりに理解したとき、私は大げさでなく、私の尊厳を踏みにじられていると感じました。『生産性が低いフリーランスは、いなくなって下さい』と言われているように感じました。

 とかく、売上が1000万円以下の事業主は弱い立場です。仕事をくれる会社に楯突けるはずがありません。

 正直、このような活動を今ここでしていることも、とてもハイリスクだと思っています。顔を出して、名前を出して、この時間を使っていること、この瞬間、売上げを失っています。ここにいる皆さんそうです」。

 その上で小泉氏は「なぜ国の制度が、私の未来を応援するのではなく、不安にさせるのか、納得できなくて、今、ここにいます」と涙を流した。

 また、菊地氏は、インボイス制度に反対する理由について、フィナンシャルプランナーの資格試験のための税金に関する勉強を通じて、「納税者有利と言われる日本の税制」に大きな不信感をもったためとし、「民間で税を押し付け合っている」のを政府は高みの見物をしており、インボイス制度は「搾取の正当化」ではないかと痛烈に批判をした。

 中山氏は、「先ほどの財務省担当官からの説明を聞いていて、本当にフリーランスの皆さんへのリスペクトがないんだなということをつくづく感じました。まあ、決めたら従えと、そのあとどうなるかは、おまかせで。こんなことでいいのか、と思う」と述べた。

 また、佐伯税理士は、インボス制度の説明を行った。

 詳しくは、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2021年12月16日(木)11:20~12:00
  • 場所 衆議院第1議員会館 第4会議室(東京都千代田区)
  • 主催 フリーランス・個人事業主の市民の会(詳細

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