文化庁が統一教会(世界平和統一家庭連合)に対する解散命令を東京地裁に請求したことを受け、2023年10月13日、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が司法記者クラブで記者会見を行った。
全国弁連事務局長の川井康雄弁護士は、文化庁の解散命令請求を「旧統一教会による被害の抑止、救済のいずれに対しても大きな一歩となるもの」と高く評価し、裁判所に対して「充実かつ迅速な審理と速やかな解散命令」を要望する声明を読み上げた。
また、声明では、統一教会の財産が保全措置を取られる前に海外や関係団体に流出すると、被害救済が困難になることを懸念し、10月20日に召集の方針とされている臨時国会で、実効性のある財産保全の特別措置法が速やかに成立するよう求めた。
他方で、この日、辞職表明の記者会見を行った細田博之衆院議長に対し「自身や安倍晋三元首相の旧統一教会との関係についての説明ははなはだ不十分なものだった」と指摘し、政治と旧統一教会の癒着の徹底した調査・検証を求めた。
「35年以上統一教会の霊感商法被害者の救済活動に従事し、深刻な被害者の実態を見てきた」という全国弁連代表世話人の山口広弁護士は、「ようやく解散命令請求ができたのかと、感慨というか、よかったなと思っている」と言葉を詰まらせた。
山口弁護士は、「宗教はとても大事な、不可欠なものだと強く思っている」と述べ、「それだけに、宗教的な言辞を悪用して金儲けをしたり、組織的に信者を脅してその人生や家庭に重大な被害をもたらす統一教会の活動は、宗教法人としては許せない」と訴えた。
その一方、山口弁護士は、統一教会の現役信者に対し「ぜひ、自立することを考える機会に、この解散請求を生かしてもらいたい。統一教会の信者たちも被害者です。その被害者であるみなさんが、これを機会に自分を取り戻して、自分の人生を歩むことができるようになることを心から願っています」と呼びかけた。
また、全国弁連が懸念を示している、統一教会の財産が流出し、被害救済が困難になる危機感について、山口弁護士は次のように語った。
「韓国本部が出したデータによると、統一教会は日本の国内に関連企業が100くらいある。いろんな分野に企業があります。従って、今は統一教会の名義の不動産を、そういう関連企業に、何らかの名目で名義変更する、あるいはそういう会社が抵当権を設定する、あるいは韓国の銀行が抵当権を設定するというのは、極めて簡単なんです。
ですから不動産がたくさんあるから(現金が韓国に流出しても)いいじゃないかとは、決して言えない。そういう危機感は非常にある。
この統一教会の傘下の企業・株式会社に名義変更されると、それをまた効力を争うとなると、大変な手間になる。そういうことも含めて、保全は必要不可欠、切実だと強く思っています」。
全国弁連はこの日、愛知県碧南市の禰宜田政信市長に対し、公開質問状を出したことも明らかにした。禰宜田市長は、2008年から碧南市長を務め、現在4期目。
全国弁連によると、禰宜田市長は2021年6月20日付けで、碧南市役所と考えられる建物をバックに、「19歳で家庭連合の教えに出会い、それ以降50年以上神霊と真理に導かれ」「私は1982年6000双の祝福家庭となることができ、韓国の相対者との間に6人の男子を授かりました」「真のお母様、(中略)今後とも永遠に孝情精神のもと神霊と真理にもとづき努力することをお誓い申し上げます」などと、信者であることをうかがわせる動画を、教団関係の動画サイトで公開しているとのこと。
この動画は、カルト教団や統一教会問題を追及する「壺のメシ屋」というアカウントが、X(旧ツイッター)で公開している。
- 「壺のメシ屋」のXへの投稿(2022年12月1日)
全国弁連は公開質問状で、禰宜田市長に、現在の統一教会との関係や、文鮮明夫妻をあがめながら政治活動を行ってきたことを碧南市民にどう説明するのか、文化庁による統一教会への解散命令請求への賛否とその理由などを問いただしている。