2022年3月11日午後4時より、東京都千代田区の衆議院第二議員会館にて、「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」の主催により、「自衛隊を活かす会シンポジウム『自衛官の自殺をどう捉え、どう克服するか』」が開催された。
佐藤博文弁護士、メンタルレスキュー協会理事長で元自衛隊メンタル教官の下園壮太氏、フリージャーナリストの布施祐仁氏、元内閣官房副長官補で「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」(「自衛隊を活かす会」)代表の柳澤協二氏、東京外国語大学教授で「自衛隊を活かす会」呼びかけ人の伊勢崎賢治氏、そして桜美林大学教授で「自衛隊を活かす会」呼びかけ人の加藤朗氏の6名が登壇し、「自衛官の自殺」という深刻なテーマについて意見を交わした。
シンポジウムの冒頭の挨拶で、柳澤氏は次のように語った。
「自衛隊側の原因究明というのは、『特にパワハラ・いじめに該当するものの、行き過ぎた指導はなかった』という結論に、だいたいなるんですね。
だとしたら、なぜ、彼は死んだのか? 彼の弱さが問題なのか?
『彼の弱さ』を言い出したら、世間一般でも同じことが言えるわけです。世間一般よりも高い数字で自衛官の自殺が出ているということは、自衛官になる人は世間一般よりも弱い人なのか? ということになる。
でも、やはりそれは違う。部隊の中の閉鎖的な(特に上官との)人間関係のような問題で、それが一つの要因になっているという認識を持たないと、この問題は解決しないのではないかということになる」。
自衛官の人権弁護団として活動する佐藤弁護士は、「兵隊も市民であり、何よりもまず、日本の国の法律が自衛官にちゃんと適用されるべきだというのが率直な思いである」と述べ、「自衛隊員は法的に自分の権利を行使することができない(弁護士を頼めない)」という現状について説明した。
佐藤弁護士はまた「軍人としての一定の制約はあるものの、隊員は兵士である前に日本人である」とし、そのことを教育し、隊員が、「自らの権利についてのインテリジェンスを高めていく必要がある」と訴えた。
伊勢崎氏は、ドイツなどでの軍隊の民主化の流れについて触れ、次のように解説した。
「上官からの命令は絶対ではない。なぜかというと、国際人道法は、上官が国際人道法違反の、つまり、戦争犯罪にあたる命令をしたときは、それに抗うことができる権利を兵隊に認めているから。
こういった概念を組織として内包する必要がある。そうしないと、『抗弁権』という権利が生まれない」。
シンポジウムの詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。