内閣官房機密費(報償費)の使途に関する行政文書を開示すべきかが争われた3件の訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は2018年1月19日、支払先や具体的使途が記されていない一部文書の開示を認めた。
今回、国を提訴していたのは、市民団体「政治資金オンブズマン」の上脇博之・神戸学院大教授らで、最高裁判決を受けて、原告団は「闇支出の一端に光」「官房機密費 最高裁 開示命じる」などと書かれた垂れ幕を笑顔で掲げた。
▲判決後 内閣府前で文書開示を求める上脇博之教授ら原告団
官房機密費は領収書が不要で、会計検査院による監査も免除されており、原則使途が公開されることはないため、総理大臣や官房長官の「ポケットマネー化」しているとも噂されてきた。今回、最高裁が一部であっても文書の開示を認めたことは、画期的な判決と言える。
IWJは、判決当日の記者会見と、判決を受けて原告団が文書開示の要請書を内閣府に手渡しようとするも拒否された様子も報じた。
さらに、会見直後に原告団の共同代表である神戸学院大学上脇博之教授をIWJのスタジオにお招きし、岩上安身が独占インタビューを行った。
しかし、これには続報がある。驚いたことにこの判決から3週間以上経過しても、一切の書類が開示されていないことが判明した。IWJはあらためて上脇氏に電話インタビューを行った。
- インタビュイー 上脇博之氏(政治資金オンブズマン共同代表、神戸学院大学教授)
- タイトル 官房機密費関連文書の開示請求、最高裁の判断は?「闇」に光はあたるか!? 岩上安身による神戸学院大学教授 上脇博之氏インタビュー
- 日時 2018年1月19日(金)19:00頃〜
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
『政策推進受払簿』や『報酬費支払明細書』といったものがあることがわかっただけでも大きな意義――ポイントは「一番情報公開に後ろ向き安倍政権のもとで、最高裁が開示を判断したこと」
上脇氏は岩上のインタビューに答え、「情報公開請求をしたのが2006年ですから、そこからです。長かった」と語り、手弁当で続けてきた12年間にも及ぶ訴訟活動の日々を振り返った。
最高裁が開示命令を出したのは、安倍官房長官時代、麻生総理大臣時代の河村建夫(たけお)官房長官の政権末期の2億5千万、菅官房長官の時代の官房報償費のうち「毎月の『政策推進費』の支出年月日ごとの金額、毎月の総額」である。
「訴訟の勝ち負けは別として、『政策推進受払簿』や『報酬費支払明細書』といったものがある、というのがわかっただけでも大きな意義のあることだった」と語り、「最高裁の判断には枠がかかっている。それは残念なことだが、『政策推進費受払簿』がすべて開示となったのがとても重要。今回の訴訟は一部勝訴ではあるが、全体で見ればとても重要な結果となった」と、上脇氏は解説した。
上脇氏は続けて、「官房長官が極めて高度な政策的判断で使えるお金。つまり建前としては自分でお金を管理できる。領収書はなしでもよしとなっている。官房長官が一番使いたいお金について、それを全部開示しなさいという判決になった」と、同判決の意義を強調した。
他方、「安倍政権は一番情報公開に後ろ向き。その政権のもとで最高裁は開示を判断した。これはポイント。強調したいのは、情報公開は出すべきだという民主党の意見もあったのに、逆行する方向にいっている。その姿勢が森友学園でも出たのかと思う」と、現政権の姿勢を断じた。
(続報)最高裁判決から3週間以上たっても官房機密費が開示されず!? IWJは原告団代表の上脇博之・神戸学院大学教授に直接取材!「安倍総理の『お気に入りメディア』に先にリークして報道させようとしているんじゃないか」との疑念も!
1月19日の最高裁判決から3週間以上たった時点でも、一切の文書が開示されていないことが明らかになった。
IWJは2月15日、上脇氏に直接連絡し、事実関係を確認。判決当日、内閣府総務官室に文書開示の要請書を直接手渡そうとして拒否された原告団は、その後郵送や電話で総務官に連絡をとったものの、いまだに「検討中」として逃げ回っているという。
上脇氏は「開示するのにこんなに時間がかかるわけがない。『部分開示』のものは黒塗りにする部分を精査する必要があるとしても、『全部開示』のものもある。出せるものから順次出せばいいだけの話だ」と憤った。
上脇氏は続けて、「今心配しているのは、安倍総理の『お気に入りメディア』に先にリークして報道させようとしているんじゃないかということです。半分冗談で、『書き換えているんじゃないか』とさえ話しています」と語り、「三権分立を軽視し、情報公開にどこまでも後ろ向きな安倍政権の姿勢が如実に表れている」と、懸念を示した。
また、原告側弁護団の阪口徳雄弁護士は、自身のブログで「内閣官房は政策推進費の開示を他の安倍好みの御用マスコミに事前にこっそり見せて、あたかも原告と同時に開示したかのごとき外形をつくり、その御用マスコミに官房長官の言い分を代弁させる記事を書かせるではないか?」などと記し、現政権への疑義をさらに深めた。
- 内閣官房機密費の公開を渋る菅官房長官(BLOGOS、2018年2月11日、筆者:阪口徳雄弁護士)
「開かずの扉をこじ開けた、闇に光をあてる画期的な判決だ」〜官房機密費文書の一部開示を最高裁が認める!岩上安身が原告の上脇博之・神戸学院大教授に独占インタビュー! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/409949 … @iwakamiyasumi
特別会計ともう一つの闇が「官房機密費」だ。税金の私的流用を許すな。
https://twitter.com/55kurosuke/status/954615414180335616