カフェでお茶を飲みながら、大学教授や税理士と、税について楽しく学び、語り合うことを目的とした「税金カフェ」が、2016年11月21日、東京新宿区のキイトス茶房で行われた。30席あまりのカフェは参加者で満席となり、会場は熱気で溢れた。
▲和光大学教授・竹信三恵子氏
この日講師を務めた、『ピケティ入門 (「21世紀の資本」の読み方)』の著者で、和光大学教授でもある竹信三恵子氏は、「日本社会は格差がおかしいと言うと、『妬んでいる』と言って、すぐに格差批判をしている人を攻撃する」と指摘した。
その上で、竹信氏は「格差の批判というのは、不当な格差や社会にマイナスの影響を与える格差を批判しているだけであって、お金持ちの足を引っ張りたいと言っているわけではない。現にピケティは、薄く広く超富裕層に課税するだけで、いろいろな資金が下のほうにまわり、社会的事業が可能になると言っている」と紹介し、「格差批判と“そねみ”を混同してはいけない」と強調した。
▲税理士の内田麻由子氏
また、もうひとりの講師であった税理士の内田麻由子氏は、熊本地震で大きな被害を被った熊本城に対して、小田原市が小田原城の入場料の寄付をしたことに触れ、「小田原市の人たちからは批判の声はほとんどあがらなかった。小田原の人々は小田原城を誇りに思い愛している。だからこそ、 熊本城が壊れてしまった熊本市民の悲しい気持ちがよく分かるのである。慶応大学の井手英策先生が『税とは共感である』と述べているように、城に限らず、障害者の問題でも、生活保護の問題にしても、人々の共感が得られることが重要だと思う」などと説明した。
- 第1部 「やさしいピケティ入門」 竹信三恵子氏(和光大学教授(現代人間学部)、ジャーナリスト、著書『ピケティ入門~「21世紀の資本」の読み方』など)
- 第2部 「公平な税・公正な税とは?」 内田麻由子氏(税理士、内田麻由子会計事務所代表、公正な税制を求める市民連絡会 税金カフェ担当)
70年税制を研究してきた中央大学名誉教授・富岡幸雄氏「消費税増税は、そもそも必要ない」
近年、内田氏のいう「共感」という側面が急速に失われ、自分が収めている税金が相互扶助のために使われるという実感が得られなくなっている。第2次安倍政権誕生後、政府がまず着手したのが、2013年からの3年間で生活保護基準を670億円削減するという、過去に例のない大幅な切り下げだった。2016年1月には消費増税の再延期を表明し、財源が確保できないという理由で、社会保障の充実化も先送りした。一方、医療、介護の分野では自己負担増を図り、物価や賃金の変動にともない年金受給の減額を可能にする法案を、今、政府与党はまさに通そうとしている。
しかし、社会保障の代替財源をどう確保するかという議論の中で「法人税」の引き上げが俎上に上がることはまずない。
そんな中、「大企業が正しく納税すれば、消費増税は必要ない」と主張するのは、中央大学名誉教授の富岡幸雄氏だ。富岡氏は「税の表も裏も知り尽くした」人物で、『税金を払わない巨大企業』の著者でもある。
昨年2月に開かれた市民シンポジウムで、冨岡氏は三井住友フィナンシャルグループ、ソフトバンク、みずほフィナンシャルグループ、トヨタ、日産、JR東海、キャノン、武田薬品など、有名企業の名前を列挙し、こうした大企業の「税逃れ体質」を批判した。富岡氏は、経済界やマスコミの「日本の法人税は高い」の大合唱にだまされてはいけないと強調し、社会保障の充実を図るため、法人税制の欠陥を正す必要があると訴えた。
経済活性化のために富岡氏が一貫して提案するのは「増税」ではなく、「減税」だ。岩上安身による過去3度のインタビューでも、増税はそもそも必要がないと持論を展開してきた。
今年5月に行われたインタビューでは、「税制の歪みは国の歪み」と主張し、パナマ文書のリークなどで明らかになった、グローバルな規模での富の偏在と、税負担の不公正の問題に切り込んだ。
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