民進党の完敗で幕を閉じた衆院補選。
民進党が独自候補の擁立にこだわり、他野党の推薦も受けず、連合の強い求めに応じて最後まで「野党共闘」を拒んだ結果の惨敗である。
今回の補選は年明けにも実施されるとささやかれる解散総選挙の「前哨戦」と位置づけられていただけに、野党は選挙結果を受け止めたうえで、共闘関係を再構築しなければならない。
現在、野党共闘の最大の障壁となっているのが民進党の最大の支持母体である連合の存在だ。
民進党から鈴木庸介候補が出馬した東京10区では、選挙戦終盤の10月20日に、野党4党の党首クラスが出揃った合同街宣が池袋駅前で開催された。だが、「野党共闘」を頑なに認めない連合からの強い圧力が加わり、肝心の鈴木候補本人が登壇しないという、異常な結末を迎えた。
民進党は勝つつもりがなかったのだろうか。連合は「民進党の応援団」を自称しながら、民進党候補を勝たせる気がなかったのではないか。
このまま「補選モデル」で解散総選挙へと突入すれば、今回の二の舞いになることは火を見るよりも明らかである。負けるとわかっていながらベストを尽くそうとしない民進党の姿勢は、現与党に強い不満と不安を抱き、オルタナティブを真剣に求める国民に対してあまりにも不誠実だ。
IWJは今回、鈴木候補を支援した勝手連「TeNネットワーク2016」の広報担当・柏木美恵子さんに選挙戦の舞台裏をうかがった。柏木さんの話から浮かび上がってきたのは、連合のもつ影響力の大きさと、市民よりも連合の顔色をうかがう民進党の情けない姿だった。
以下、IWJによる柏木さんへのインタビューを掲載する。
「連合が引き上げるから他党の共闘の絵は撮らせられない」〜鈴木選対から勝手連にかかってきた電話
――10月20日に行われた4野党による合同街宣に鈴木候補が参加できないというのは、いつ頃わかったのでしょうか?
柏木美恵子さん(以下、柏木氏)「具体的には、前日に鈴木選対事務局長から連絡があって、『参加できない』と。私はその電話を直接とっていないんですけども、『野党共闘のところには出せない』ということでした」
――理由はどのようなものでしたか?
柏木氏「もともと、野党統一候補ではないという打ち出し方をしたいと鈴木選対は考えていて。ご存知の通り、途中から自転車に乗ってあちこち走って支援を訴えるというふうに、戦略も変えましたしね。
連合の話でもあります。選対から、『それまで支援をしてきていた連合東京が、お手伝いから引き上げるということも考えうるので、他党との共闘の絵は撮らせられない』と」
――それでも、なんとか野党共闘の街宣を実現させたいと思われたわけですね?
柏木氏「もちろんです。ですから、その後、私たちは他の民進党の国会議員の方など、いろんな方に連絡を取りました。つながった方も、つながらなかった方もいましたけど、最後まで国会議員の方々に対し、『とにかく鈴木さんに(野党共闘の場に)出てきてほしい』という連絡は取り続けました」
――どのような反応でしたか?
柏木氏「直接お話できなかったケースもありましたし、努力はしてみる、という方もいらっしゃいました」
敵は自民党候補だけじゃなかった!?「私たちは『他野党に選挙協力を要請しない民進党本部』という問題を常に抱えていた」
――鈴木選対の、市民の方に対する対応はどのようなものでしたか?
柏木氏「TeNネットワーク2016のメンバーがみんなボランティアで選対にも入っているし、街宣にも駆けつけているし。市民と政策協定を結んで、記者会見をやってからは、選対の人たちともなんとか話し合いながらやってきていて…。もちろん、『他野党に選挙協力を要請しない民進党本部』という問題を、私たちは常に抱えていたわけですけれども。