「東電を逆さまにしても一円も出ないという状況にして初めて、国民の理解が得られる」――東電救済にひた走る「エネ庁」の異常〜自民党内の”脱原発派” 秋本真利衆議院議員に直撃インタビュー 2016.9.9

記事公開日:2016.9.15取材地: テキスト動画独自
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(取材・文 ぎぎまき)

 政府内からとんでもない「東電救済策」がささやかれている。あまりのひどさに耳を疑うくらいだ。

 2011年の福島第一原発事故の影響で汚染された地域の除染費用は、原則、東電が負担すると「放射性物質汚染対処特別措置法」で定められている。しかし、除染が手付かずの「帰還困難区域」については、東電の責任だと考える議員と、公共事業として国民負担とすべきだと考える議員とで与党内でも意見が割れているという。

 8月22日の「東日本大震災復興加速化本部」の会合に出席した河野太郎前行政改革担当相や秋本真利衆院議員らは、東電負担を強調。国民に負担を強いる東電びいきの案に強く反発した。

 2016年9月9日、IWJは自民党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟にも所属する、秋本衆院議員に直撃インタビュー。敦賀のもんじゅ視察時に、地元のタクシー会社から配車予約を拒否されたエピソードを持つ、与党内の「脱原発」議員の一人だ。

 今回、政府から聞こえてくる東電への追加支援は「除染」だけにとどまらない。原発の廃炉や原発事故被災者への賠償費用さえも、国民全体で負担しようという、とんでもない案も聞こえてくる。これについて、河野太郎議員は「エネ庁は狂ってるとしか言いようがない!!」とツィッターで抑えられない怒りを投稿。秋本議員本人もツィッターで「こんなバカな話はない。原発のコストは一番安いと宣っていたのだから電力会社が払えば良い」と書き込んでいる。

 インタビュー中、「自民党を通過して出てきた法案が、大きく修正されることは現実的にあり得ない」と秋本議員は指摘した。つまり、こうした東電救済色の強い政府案が法案としてまとまった時点でいくら国民や野党が反対しても「時すでに遅し」。であるならば、我が身ばかりがかわいい大手電力会社の泣き言など一掃するような、まともな議論が党内で行われることを願うしかない。しかし、秋本議員のような「脱原発派」といえる議員が、与党内にどれだけいるのか?そして、その声は党幹部や政府にまで届くのか?東電救済策の真相について、秋本議員に聞いた。

記事目次

■ハイライト

  • タイトル 帰還困難区域の除染に国費を投入する政府方針について ―自民党 秋本真利衆議院議員インタビュー(聞き手 IWJ・ぎぎまき記者)
  • 日時 2016年9月9日(金)10:30〜11:00
  • 場所 秋本真利衆議院議員事務所(東京都千代田区

法律違反にならないように無茶なロジックを通す「東電派」議員たち

――除染費用については東電が負担すると法律で定められていますが、なぜ、「帰還困難区域」については、国民負担という話が出てきているのでしょうか。

秋本真利議員(以下、秋本議員)「まず、大前提として除染に関しては特措法(*1 放射性物質汚染対処特別措置法)があり、東電が負担するとなっている。東電が払うと法律で決まっているものに関して、突然『そうじゃないよ、国民負担にするよ』というのは、ルール違反以外の何ものでもありません。

 法律だから当然、法律違反はできない。国民負担を主張している人のロジックは、帰還困難区域の除染は特措法によるものではないんだと。復興拠点というスポットをつくるという『公共工事』だから、特措法は適用されないんだ、というものです」

*1 放射性物質汚染対処特措法 44条

第四十四条  事故由来放射性物質による環境の汚染に対処するためこの法律に基づき講ぜられる措置は、原子力損害の賠償に関する法律 (昭和三十六年法律第百四十七号)第三条第一項 の規定により関係原子力事業者が賠償する責めに任ずべき損害に係るものとして、当該関係原子力事業者の負担の下に実施されるものとする。

2  関係原子力事業者は、前項の措置に要する費用について請求又は求償があったときは、速やかに支払うよう努めなければならない。

――国民に除染費用を負担させようと主張しているのは、誰なのですか。

秋本議員「国民負担で復興拠点を整備しようと考えている我が党の議員のことです。

 帰還困難区域自体をどうするのか、除染費を東電に負担させるのか、国民に負担させるのか。議論が曖昧になったまま、先に復興拠点をつくるという話だけが先行している。除染費はいくらか、帰還にはどれくらいかかるのか、それによってどういうことが起きるのか。国民にしっかり説明した上で『だからやります。やらせて下さい』という話があって当然でしょう」

「自民党を通過して出てきた法案が大きく修正されることは現実的にあり得ない」

――国民にも負担を負わせるのかどうか、党内だけではなく国会でも議論すべきだとお考えですか?

秋本議員「国会で議論すべきですが、国会に法案として出てきてしまうと、そこで大きく修正がかかることは現実的にありえません。議会制民主主義では『多数決』ですから、自民党を通過して出てきたものが大きく修正されるということは、およそ考えられない」

――政府は避難している住民を早く福島に戻そうとしています。費用を国費でまかない除染を進め、帰還を早めたいという狙いがあるのでしょうか。

秋本議員「非常に難しい点ですが、そもそも、今も国が(除染費の)立て替え払いをし、後から東電に求償している。

 スピード感を出したいのであれば予算の額をあげて、一気に進める。進めた分の額は東電に求償すれば成り立つ。早くやるために、国民負担で除染を前に進めようぜというのは、ロジックとして納得できないし、私はおかしいと思います」

 補足すると、東電はこれまで政府が立て替えた除染費用のたった6割程度しか返済していない。今年7月12日現在、東電に求償した7073億円のうち、返済されているのは4194億のみ。自らの身を切ることにずいぶんと消極的な東電だが、2014年度から業績は回復し、経常損益は黒字を出している。背景には、家庭向け料金を値上げするなどし、利用者負担を増やした経緯がある。それなのに、なぜ、国民にさらなる負担を押し付けようとしているのか。国民が簡単に納得するわけがない。

原発のない沖縄県民にも廃炉や賠償費用を負担させる?荒唐無稽な政府案

 除染費用以外にも、荒唐無稽な「東電救済案」がもう一つ浮上している。

 原発の廃炉や原発被災者に対する賠償費用だ。今年4月にスタートした電力自由化で、東電などの大手電力会社は新参者と競争を強いられることになった。新電力に切り替える消費者が増えれば経営は厳しくなり、さらに、賠償や廃炉費用の支払いがさらに重くのしかかれば、競争の足かせになるという。そこで、新規参入した新たな電力会社の利用料金にも、廃炉や賠償費用分を上乗せさせてはどうか、という政府案が出てきたというのである。

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