「証拠は山ほどある」 東電元幹部らの有罪認定は可能だ~東電元取締役らによる業務上過失致死傷被告事件に関する起訴状提出についての記者会見 2016.2.29

記事公開日:2016.3.23取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田充、記事構成:山本愛穂)

※3月23日テキストを追加しました!

 「私たちの告訴から4年が経つ中で、裁判が開かれることになったのは感無量だ」――。

 市民グループ、福島原発告訴団・団長の武藤類子氏は、会見の冒頭でこう述べ、感慨を隠さなかった。2016年2月29日、東京電力の勝俣恒久・元会長、武藤栄、武黒一郎・両元副社長の旧経営幹部3人が、検察官役の指定弁護士により業務上過失致死傷の罪で強制起訴された。5年前の2011年3月12日、福島第一原発が津波で浸水する可能性を予見していたにもかかわらず、旧幹部らは防潮提強化などの安全対策を怠った、というのがその起訴理由だ。

 この強制起訴を受けて、同日午後17時より、都内司法記者クラブで、武藤類子氏、海渡雄一弁護士、河合弘之弁護士による記者会見が開かれた。

 海渡、河合両弁護士は、会場に集まった50名以上の各報道関係者を前に、「一般市民の力でここまで辿りついた。この裁判により、5年間隠ぺいされてきた真実、もうひとつの福島が明らかになる」と、数々の事実が伏せられてきた可能性を指摘し、「(被告らを)有罪にできる証拠は、宝の山」と表現しながら、今回の起訴状が提示する、”強力な”新証拠について解説した。

IWJでは、3月10日に岩上安身による海渡雄一弁護士へのインタビューの中継配信を行った。インタビューのなかでは、海渡弁護士が司法記者クラブで述べた事実に加え、新たな証拠も明らかになった。以下の動画も、合わせてぜひご覧ください。

■ハイライト

  • 出席 武藤類子氏(福島原発告訴団団長)、河合弘之氏(弁護士)、海渡雄一氏(弁護士)
  • 日時 2016年2月29日(月) 17:00~
  • 場所 司法記者クラブ(東京都千代田区)

武藤類子氏 「今年1月発足の福島原発刑事訴訟支援団には、すでに1000人以上が参加」~市民による粘り強い行動が、強制起訴へつながった

▲会見に臨む、河合弘之弁護士(左)、武藤類子氏(中央)、海渡雄一弁護士(右)

 今回の強制起訴への起点となったのは、被災者らからなる市民グループ「福島原発告訴団」による告訴・告発である。会見ではまず、福島原発告訴団・団長の武藤類子氏がコメントした。

 武藤類子氏が「福島原発告訴団」を立ち上げたのは、事故から1年後の2012年3月。その3か月後の2012年6月には、東京電力の勝俣恒久・元会長ら旧経営幹部を、業務上過失致死容疑などで告訴・告発している。これを受けた東京地検による捜査では2013年8月、2015年1月に不起訴となるも、その後、2015年7月31日、東京第五検察審査会による二度目の起訴議決がなされたことで(注1)、今回の強制起訴へとつながった。

 武藤氏は、今年1月、今後の裁判の展開に関する情報発信などを通じて、国民の関心を高めていくための「福島原発刑事訴訟支援団」も発足させたことに触れ、次のように力強く語った。

 「すでに、1000人以上が参加登録している。大勢の市民が、事故の責任追及を気にかけている証拠だが、今後も参加人数を増やしながら、この裁判を見つめていきたい。指定弁護士によって、私たちが知らない真実が明らかにされ、公正な判決が下されることを期待している」――。

海渡雄一弁護士 「元幹部らは津波の危険性を認識し、予見していたが、コスト上の問題からやらなかっただけ」~これは、業務上過失致死罪、元幹部らの有罪認定は可能だ!

 次に、海渡雄一弁護士(福島原発告訴団・被害者代理人)が、今回の起訴内容のポイントを改めて解説した。海渡弁護士によれば、東京電力は2007年の時点で、津波対策を行う方針を決めており、2008年3月の時点で、東京電力のシミュレーションにより、福島第一原発に15.7mの津波が来るという計算結果が出ていたという。これに基づき、社内での津波対策案がまとまると、2008年の6月には、10メートルの地盤の上に10メートルの防潮堤を建てる計画が立てられていたのだという。

 つまり、起訴状が事実であれば、勝俣元会長ら東電元幹部らは、高さ10メートルの敷地を超える津波が福島沖に襲来し、その津波が非常用電源設備などがあるタービン建屋に侵入し、重大事故が起きる可能性を、東日本大震災の発生前の段階で認識していたということになるのだ。

 危険性を認識したうえで、対策を講じないまま、原発の運転を漫然と継続し、3.11の巨大津波によって原子炉炉心が損傷。水素ガス爆発などを招き、近隣病院の入院患者44人は、長時間の搬送などを原因に死亡した――。これは、れっきとした過失致死傷に値すると、海渡弁護士は解説した。

 一方で、「大地震や津波のような、大規模な自然災害による業務上の過失責任は問えない」とする論調は、産経新聞社を中心に原発事故後から語られてきた。同様の判断に基づき、2013年8月、東京地検など検察当局は勝俣・前会長ら3人を不起訴処分としている。

 しかし、会見で海渡弁護士は、このような見方は誤解であると強調する。

 「津波が予測できたか、できなかったかというレベルで語られる段階には、もはやない。元幹部らは津波の危険性を認識し、予見していたが、コスト上の問題からやらなかっただけだったということが、今回の起訴状では決定的な証拠により、明らかにされている」――。

 そう述べた海渡弁護士は、元幹部らの有罪認定が可能であると改めて強調した。

政府や政府事故調査委員会、さらには検察庁も・・・?! ~証拠は握りつぶされていた?! 海渡雄一弁護士 「画期的な訴訟になる」

▲起訴状の内容を解説する海渡雄一弁護士(右)

 さらに、海渡雄一弁護士は、「これまで隠されてきた事実が、市民らの手で掘り起こされ、その内容を5人の指定弁護士が検証して、実際に起訴にたどりついたことは非常に画期的だ」とした上で、「この訴訟は、一意的には東電旧経営幹部の責任を追及するものだが、政府や政府事故調査委員会、さらには検察庁が、これまでにどんな事実を握りつぶしてきたかが、明らかになる訴訟でもある」と述べた。 

(…会員ページにつづく)

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「「証拠は山ほどある」 東電元幹部らの有罪認定は可能だ~東電元取締役らによる業務上過失致死傷被告事件に関する起訴状提出についての記者会見」への3件のフィードバック

  1. 清沢満之 より:

    【広瀬 隆:全国のみなさま】
    高浜原発が再稼働された翌日、1月30日に、福島原発刑事訴訟支援団が発足の集会を開催しました。
    東京・目黒の大ホールは超満員で、盛りあがりました。
    いよいよ東京電力悪人トリオの被告、元東京電力会長・勝俣恒久、元副社長・武黒一郎、元副社長・武藤栄を刑事裁判にかけ、さらし者にして、徹底的に追及できるのです。
    下記サイトの一番下に、この支援団への「入会申込み」の方法が書かれていますので、全国のみなさまもどんどん入会して、金銭的にも応援してください。
    これが今後、再稼働に突進する電力会社幹部を震え上がらせる近道です。
    http://shien-dan.org/

    最新講演会「電力自由化で原発と電力会社を葬る」
    https://www.youtube.com/watch?v=vxke_LuvyeI

  2. 河村大典 より:

    この裁判は無責任な行政を正す契機になると私も大いに期待します。しかし、裁判所は市民のためにあるのではなく国家のためにあるような状況下で正義の判決が出来るのか心配です。記者会見でも語っていたように東電の役員だけではなく、保安委員などの国の行政責任も問われかねない事案だからです。
    過去に原発差し止めで第1審で勝訴したが第2審では全て敗訴しています。今回は誰が考えても負けないと思いますが、それだけに高度な政治判断を有する統治行為論を持ち出すのではないか。もし今回裁判所がそのようなことをしたり、時間稼ぎをしたり何年にも判決を下さないことがあったら裁判官を訴えることはできないのでしょうか。私達はマスコミが伝えなくてもIWJを通して注意深く見守っていきたい。もし裁判所が不当な裁判をしたときは裁判所に直接デモによって抗議することも必要ではないだろうか。
    今各地で、原発が再稼働がされています。想定外の災害によって放射能漏れがあっても責任がないということは出来ないようにしなければなりません。今の原発は6以上の震度に耐えられるのでしょうか。どうして過去の震度の平均で判断して、最大級の震度を基準としないで再稼働が許されるのでしょうか。

  3. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    2016/02/29 東電元取締役らによる業務上過失致死傷被告事件に関する起訴状提出についての記者会見(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/289643 … @iwakamiyasumi
    日本では巨悪は裁かれないという悪習を打ち壊すのは人々の真っ当な怒り。許せるわけがない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/704600401945833472

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