「米軍は日本を守らない!」という事実が米公文書によって明らかに! 政府が日米新ガイドラインに施した翻訳上の姑息な仕掛けとは!? ~『仮面の日米同盟』著者・春名幹男氏に岩上安身が直撃インタビュー第1弾 2016.1.28

記事公開日:2016.1.28地域: テキスト 動画 独自
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ、記事構成・岩上安身)

※3月5日テキストを追加しました!
本日、3月5日(土)13時より、国際ジャーナリストで早稲田大学客員教授、『仮面の日米同盟~米外交機密文書が明かす真実』の著者である春名幹男氏に、岩上安身が単独インタビューを行います!

【IWJ・Ch1】岩上安身による国際ジャーナリスト・春名幹男氏インタビュー

 尖閣、東シナ海、北朝鮮──日本の周辺で不穏な動きがある時、その都度、日本政府から「有事の際には米軍が守ってくれる」というアナウンスが流され、日本のほとんどの国民は羊のようにおとなしく信じて疑わない。しかし、果たして本当に、「米軍は守ってくれる」のだろうか?

 2016年1月28日、『仮面の日米同盟』の著者で国際ジャーナリストの春名幹男氏は、岩上安身のインタビューに応じ、「1997年の日米ガイドライン改定で、米軍は日本防衛から撤退し始めている。それを認めたくない外務省が、意図的な翻訳によってガイドラインの内容ごまかしている。だから、有事の際、米軍が日本を守るとは限らない」と衝撃的な事実を明らかにした。

 春名氏は、公開された1971年のアメリカ政府の機密文書に、『在日米軍は日本を守るために駐留してはいない。日本防衛は、日本の責任だ』との記述を見つけた。そして2015年の日米新ガイドラインには、日本が武力攻撃を受けた際、主体的に防衛するのは自衛隊であり、米軍の任務は「あくまで自衛隊を支援するのみ」ということが書かれているという。そして、その「支援」の中身も不明確なのだという。
 
 春名氏がインタビューで指摘した、外務省の官僚による日米新ガイドラインの作為的翻訳の事例は、以下のようなものだ。

 「日米2ヵ国の作戦」を意味する「Bilateral operations」を外務省は「共同作戦」と訳し、「Supplement(補足、追加)」は、米軍が自衛隊の作戦を「補完する」と、より強い語句に置き換えられている。

 また、「日本の防衛には自衛隊がPrimary responsiblity(主たる責任、第一次的責任)を持つ」というくだりは「自衛隊が主体的に実施する」と訳され、「日本の防衛は一義的には自衛隊が負う」という主旨が弱められている(※)。春名氏は「自衛隊が独立して動くのか、(米軍もいるけれど、自衛隊が)率先して動くのか。主体的という翻訳によって中身が曖昧にされている」と指摘した。

(※)岩上安身は2010年5月11日、当時の岡田克也外務大臣の定例会見で、2005年に日米両国が発表した「日米同盟変革と再編」の中で「島嶼部の防衛は第一義的に自衛隊がやるもの」という旨が明記されていることを指摘。岡田外相より、外務省の公式見解として「一義的に日本を守るのは当然日本人です。自衛隊です」という見解を引き出した。

 さらに、日本語訳では『米軍は自衛隊を支援し補完するため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することが、できる』と書かれている文章の英語原文を見ると、「can(できる)」ではなく「may(できるかもしれない)」が使われている。春名氏によれば、ガイドラインの随所で、米軍が日本防衛に積極的に関わる印象が強くなるよう、意図的な翻訳がなされているのだという。

 その理由について春名氏は、「安保法制が可決されやすいように、米軍の関与を過剰に演出したのだろう。日本人は『アメリカは日本を守ってくれる』という共同幻想にどっぷり浸かっている」と断じた。

 岩上安身は、そんな日米安全保障の実態を、関係が冷え切った夫婦が仲睦まじい姿を演じている仮面夫婦にたとえつつ、「外務省発の日本語(翻訳)の情報を鵜呑みにして、メディアも政治家も国民も間違った方向に行ってしまう」と危惧した。

■イントロ

  • 日時 2016年1月28日(木) 15:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

米国の機密文書「在日米軍は、日本を守るために駐留してはいない」

岩上安身(以下、岩上)「公開されたアメリカの外交機密文書を精査し、『仮面の日米同盟~米外交機密文書が明かす真実』(文春新書)を著した元共同通信記者、国際ジャーナリストで早稲田大学客員教授の春名幹男氏をお招きしました。どうぞよろしくお願いします。

 日米同盟は日米関係の基軸というが、本当のところはよく知られていません。まず、アメリカは頼れる同盟国なのか、その検証から始めます。日米安保があるからアメリカは日本を守ると、漠然と信じている人は多い。それは本当なのでしょうか。集団的自衛権により日米同盟が強化され、日本の抑止力が向上する、と言う安倍総理は正しいのか。まず、春名さんが、こういう事に疑問を持ったきっかけは何だったのでしょうか?」

春名幹男氏(以下、敬称略・春名)「安保法制の指針になった、2015年日米新ガイドラインですが、外務省は翻訳の際、改ざんしていました。私は、アメリカの1971年の機密文書に、『在日米軍の駐留は、日本を守るためではない。日本防衛は日本の責任だ』との記述を見つけました。それが、今回のガイドラインにも継承されていた。これは公表すべきだと思いました」

岩上「この国の外交防衛政策は、国民向けと裏の世界とが別々に存在しているのですね。これまでは国民も役人に任せていられたが、昨今、(防衛政策は)われわれの生活に入り込んできて影響は避けられなくなった。考えなくてはなりません。

 安倍総理は『米軍は日本を守る。しかし、日本は米軍が攻撃されても何もできない。これでいいのか』『日本が攻撃されればアメリカの若者が血を流して守る。だから、自衛隊が後方支援できるよう法改正すべき』と言う。本当でしょうか」

春名「後方支援には反対があるが、ほとんどの国民、政治家も与野党を問わず、『在日米軍は日本を守る』と信じていて、日米同盟の強化に異論はない。しかし、前提として『在日米軍は日本は守らない』。これにもっと目を向けるべきです」

岩上「土台を疑えということですね。共産党すら、そう信じているかもしれません。安倍総理発言の続きです。『軍事同盟は血の同盟。アメリカの若者が血を流す』(2004年・扶桑社『この国を守る決意』)、『米軍の若者が日本を守るために命をかける』(2013年・文春新書『新しい国へ』)。アメリカの若者の犠牲を、繰り返し強調しています」

日本が武力攻撃を受けたら防衛するのは自衛隊。米軍は曖昧な「支援」のみ

岩上「安保法制の成立過程をおさらいします。2014年7月1日、解釈改憲で集団的自衛権行使を閣議決定。日米新ガイドラインを2015年4月27日発表。これは行政協定で国会審議の対象にならず。5月15日、安保法案の国会提出。9月19日未明、成立。春名さんは、この流れには意味があると指摘しています」

春名「安保法制は、米軍について何も書いていません。米軍が自衛隊と何をするかも、ほとんど記載はない。国会の議論の中心は、合憲性と自衛隊員の安全だった。では、自衛隊が海外に出て行ったら、日本をどう守るのか。米軍の日本防衛が強化されるのか」

岩上「そのために、自衛隊の人員と装備を増やすのでしょうか。国防予算が2倍、3倍とかかります。そして、米軍は守ってくれるのか。

 ところが実際は、日本が攻撃されても米軍は『支援』のみだと。日米新ガイドラインのIV.では『日本は、日本の国民及び領域の防衛を引続き主体的に実施し(略)米国は、日本と緊密に調整し、適切な支援を行う』とある。米軍は戦ってくれないのですか?」

春名「それが『適切な支援』かどうかは、アメリカが判断します。支援の内容も不明です。情報を与えるだけでも支援ですし。サウジアラビアがイエメンに侵攻した際、米軍は衛星映像を提供したが、これも支援になります」

岩上「日本が武力攻撃を受けた際、主体的に防衛するのは自衛隊であり、米軍ではない。米軍の任務はあくまでもサブであり、自衛隊を『支援』するだけなのですね」

1997年・日米ガイドラインから米軍の後退が明らかに

岩上「官僚による新ガイドラインの作為的翻訳を春名さんは著書の中で挙げています。自衛隊と米軍による共同作戦に関してですが、The Self-defense Forces and the United States Armed Forces will conduct [bilateral operations]to defend…を、『自衛隊及び米軍は~防衛するため共同作戦を実施する』と和訳。

 両国の作戦という意味になる『Bilateral operations』を、共同作戦と訳している。共同作戦なら『Joint operations』のはずだと指摘されていますね」

春名「『Bilateral operations』は2ヵ国の作戦で、一緒にやるという意味ではありません。実は、1978年のガイドラインでは『Joint operations』でした。1997年のガイドラインから『Bilateral operations』に変化。米軍の日本への関与が明らかに後退した証です。

 だが、官僚は同じ訳語を使っている。おそらく彼らはわかっています。しかしながら、国民には公表はできない。Bilateralでも似ているからいい、と思ったのではないでしょうか」

岩上「これは国会で取り上げて議論すべきだし、メディアも報じなければいけないが、誰もしていない。春名さんが今回、本書で初めて指摘したということですね」

春名「マスメディアは日本語のブリーフィングしか受けません。だから、官僚の意のままに報道してしまうのです。防衛省のサイトで原文が掲載されているので、そこにも目を通さないといけません」

岩上「夫婦間は冷えているのに、周囲には仲が良さそうに取り繕っている状態。それが日米同盟の姿ですね。仮面夫婦を演じている。思いやり予算で米軍を引き止めている。でも、アメリカが日本をまったく支援しない事もあり得るのですか」

春名「Joint operationsだと相当関与しないといけないので、米軍は逃げているんです。代わりに日本がやれよ、ということですね」

岩上「1978年当時、世界は冷戦でした。それが終わっても、日本は幻影を引きずったままなんですね。アメリカは明らかに違う。むしろ、ずっと日本にはクールな立場でいた。日本を『防共の壁』にすることもあったが、特にホットな関係でもなかった?」

春名「アメリカは冷徹だと思います。終戦直後は日本を民主化させようとしたり、経済発展させて自力をつけさせようとしたり。波はありますが、全体的に見ると、日本への関与から距離が生じているのは明白です」

日本が「主体的に作戦を実施」とは、自分で自分を守れということ

岩上「防衛作戦での自衛隊の役割についても作為的翻訳があるんですね。The Self-defense Forces will have[primary responsiblity]for conducting…operations … to defend Japan.『自衛隊は、日本を防衛するため~作戦を主体的に実施する』。Primary responsiblityを『主体的に実施する』と訳しているが、正しくは『主たる責任、第一次的責任』です。これは、どう違うのでしょうか?」

春名「そこが、私が最初に疑問を持ったところです。『主体的に実施する』というが、どう実施するのか。主体的とはインディペンデントなのか、率先することなのか、意味がわからない。むしろ曖昧にする意図ではないかと思い、原文を読んだのです。そうしたらPrimary responsiblityと書いてある。明確に、日本が守れということです。米軍は、1997年からアシスト(支援)なんです。ある外務官僚に聞いたら(新ガイドラインの和訳は)『1997年のままだよ』と答えたので、ほとんどを写したのではないでしょうか」

岩上「1997年頃は金融ビックバンもあり、日本と米軍の一体化が進み、合同演習などでズブズブの関係になり始めたが、実は米軍は後退を始めていた。つまり、世間への発表は偽装です。日本側が、その実態を見せたくなかったのですね」

春名「そうですね。日本国民には説明がつかないし、アメリカ依存の気持ちは変えたくない。『主体的』だったら大丈夫だろう、と考えたのではないでしょうか」

戦争を終わらせた世紀の迷訳!? 天皇『従属』とは書かずに奏功

春名「これに限らず、外務省が多々やってきたことなんです。日本語のバリアは厚いので。国内合意を取り付けるため、翻訳に手をつける知恵ですね。

 ポツダム宣言受諾でも、日本政府は国体(天皇制)の護持をもっとも懸念した。無条件降伏の条件は、天皇の権限は『連合国最高司令官に従属すること』だったが、これでは合意を得られない。そこで外務省は、従属を『制限のもとにおかれる』と訳した。これで戦争が終結できたのだと思います。

 また、サンフランシスコ平和条約は、英語では『日本は東京裁判の判決を受け入れる』。和訳では判決を抜いて『東京裁判を受け入れる』になっているんです」

岩上「東京裁判の判決を受け入れて、講和が成り立ち、日本が独立主権を回復した。それを安倍総理や稲田朋美政調会長は否定し、東京裁判の判決に問題があるなどと発言したが、それは、日本の独立主権の根幹を揺るがすことになります。それとも彼らは、それを承知の確信犯なのでしょうか」

春名「国際公約にあたる英語版では、日本は判決を受け入れています。しかし、国内ではそうとは言っていません。ジャーナリストは、日本語だけを見ていたのでは何もわからない。英語で検証しないとダメなんです」

岩上「私は英語がダメなんです。2日前、『英語化は愚民化』著者の施光恒(せ・てるひさ)氏にインタビューをして、我が意を得たりと喜んでいたのですが、今日はへこんでしまいました(笑)」。

「かもしれない」が「できる」に! 呪文のような外務省和訳

岩上「さらに、The United States Armed Forces will conduct operations to support and[supplement] the Self – defense Forces’operations.『米軍は自衛隊の作戦を支援及び補完するための作戦を実施する』。この『補完』は、原文ではSupplement『補足、追加』の意味とのことです。『補完』と訳すと、『補って完全にする』という意味になり、必要以上に関与が強調されると春名さんは書かれています。医者がビタミン剤を投与するくらいの感覚でしょうか。

 領域横断的な作戦に関しても、ひどい和訳があるそうです。(Cross-Domain Operation) The United States Armed Forces [may]conduct operations involving the use of strike power…『米軍は自衛隊を支援し補完するため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することが、できる』。原文はmayで『かもしれない、してもよい』の意味。決して『できる(can)』ではない、と」
 
春名「普通、そうは訳しませんね。『できる』だと米軍が積極的、という印象になるので明らかに意図的です。私は共同通信に38年いて、先輩にしごかれながら、翻訳をかなりやりました。だから、日本語(和訳)を見ると、原文ではどう表現するかを無意識に考えてしまうんです」

外務省の偽情報を真に受けて、共同幻想にどっぷり浸かった安倍総理と崇拝者たち

岩上「これらは安倍総理の意図に沿った翻訳で、『アメリカは日本を守ってくれる』という共同幻想を守ろうとしたのでしょうか。または、安保法制が可決されやすいように、米軍の関与を過剰に演出しているのでしょうか?」

春名「安保法制を通すためでしょう。安倍総理は、日米同盟が強化されて抑止力が高まると言うが、米軍の関与は低下している。それも背景にあるのでは」

岩上「安倍総理は、さかんに『対中国』を言う。番記者たちの懇親会では、『(安保法制は)南シナ海で中国と戦うためなんだ。だから、必要なんだ』とまで言っていると、週刊現代は報じました(2015年7月4日号)。そのために秘密保護法、安保法制、さらに改憲で非常事態条項を決めて、本当に中国に対して打って出ようとしているのでは。

 私が聞いたところでは、日本会議の一部の人たちは、中国と戦争になったとき、アメリカは関与しないと心得ているのだそうですが。ところが、安倍政権指示の彼らは、今なら日本単独でも勝てる、一撃を加えれば中国は降参する、という、昔の『暴支膺懲(ぼうしようちょう)』『対支一撃論』とそっくりの考えに染まっていて、強硬な姿勢一辺倒であると、漏れ伝わってきます。第二次大戦開戦時の山本五十六連合艦隊司令長官の考えそのままです。戦場も戦域も尖閣周辺の海域におさまると信じている。安倍総理を筆頭に、官僚も財界も、そういう方向にひた走っています」

春名「共同幻想にどっぷり浸かっていると思います。安倍総理は、アメリカの真実を認識していない。アメリカは、日本に中国と事を構えてほしくないのです」

南シナ海のイージス艦派遣はオバマ大統領の国内向けパフォーマンスだった

春名「アメリカは『航行の自由』として、南沙諸島にイージス艦(イージス駆逐艦ラッセン)を派遣しましたが、あれは本気ではありません。一応、オバマ大統領は、軍事的な示威行動を伴った航行の自由(Freedom of navigation)と主張していましたが、潜水艦探知のソナーも使わず、ヘリコプターも飛ばしていない。実は何もしない無害通航(Innocent Passage)だったのです。米国内の専門家からは、土下座外交だと批判が起きた。

 安倍総理は、そういう状況を知らなかったと思いますよ。安倍総理はオバマ大統領に手伝うと言った。しかし、オバマ大統領は国内をなだめるのが目的だから、それは望まなかった。だから『航行の自由だ』と公言しながら何もしませんでした」

岩上「中国も、報道では声高に非難したが、イージス艦に対して遠目からの監視だけ。お互い政治的なレベルで話がついていた、と。安倍総理は知らなかったのでしょうが、外務省もそうでしょうか?」

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