「戦争になると僕たちはチェスの駒だ。それを動かす人間は決して傷つかない」 〜シリア難民問題と日本の安保法制について安田菜津紀氏、岩上安身らが語る 第44回ロックの会 2015.10.9

記事公開日:2015.12.9取材地: テキスト 動画 独自
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

※12月9日テキストを追加しました!

 「安保法制とシリア内戦は関係ないという意見も聞くが、逆なのだ。一度、武力に手をつけると、どれだけの悲劇を招くのか。われわれはシリアから学ばなければいけない」──中東で取材を続ける安田菜津紀氏は、このように訴えた。

 2015年10月9日、東京都内で第44回ロックの会が開かれた。この日のオーガナイザーは岩井俊二氏が務め、「シリア難民問題」をテーマに、フォトジャーナリストの安田菜津紀氏をゲストに迎えた。途中からは岩上安身も駆け付けて、ウィキリークスが暴露したアメリカの対シリア戦略について解説した。

 安田氏は、ヨルダンのザータリ難民キャンプの写真を示しながら、実情を語った。この難民キャンプの規模は6万人収容だが、最大12万人が滞在したこともあるという。現在は8万人が暮らすが、子どもたちには肺疾患が増加している。学校は3ヵ所しかなく、トイレの設備などは不衛生極まりなく、水の供給や食料問題もあると、安田氏は難民生活の厳しさを伝えた。

 岩井氏は、日本の安保法制が、中東情勢にも関わっていく可能性を懸念し、「こんな世界の状況を見ても、『そんなことは起こらない』などと言う政治家がいるのは本当に謎だ」と話す。さらに、「韓国や中国は、国内では反日的なニュースを流していても、国民の多くは日本が好きで、よく見てくれている。個人的に見たら、みんな同じ人間。そんな彼らに背を向けて、今後、日本はアジアと、どう付き合っていくのだろうか」と憂慮した。

 2015年の始めに起きた「イスラム国(IS)」による日本人人質殺害事件で犠牲になった後藤健二さんと湯川遥菜さんのために、ヨルダンの日本大使館前には100人以上の人が集まって、追悼集会を行ったという。その時の写真を見せた安田氏は、「当時、日本の週刊誌に『このニュースを掲載するのは難しい』と言われた」と明かした。岩上安身は、「これが報道されていたら、(ISを刺激した)安倍首相の立場が危うくなったかもしれない。そして今、メディアコントロールはもっとひどくなっている」と指摘した。

 後半は、岩上安身がメイントークを担当。「ジュリアン・アサンジとエドワード・スノーデンがいなかったら、何もわからなかった」と口火を切ると、「米国によるシリア(アサド政権)転覆計画をウィキリークスが暴露」(アサンジ新刊『The Wikileaks Files』から引用)について語った。

 「ウィキリークスは、『シリアの米国大使館のウィリアム・ローバック氏がワシントンと共に、シリア政府の転覆計画を画策していた』という衝撃的な公電を暴露した」

記事目次

■ハイライト

  • オーガナイザー 岩井俊二氏/ゲスト 安田菜津紀氏(フォトジャーナリスト、studio AFTERMODE所属)
  • 日時 2015年10月9日(土)20:00〜22:30
  • 場所 東京都内
  • 告知 第44回69の会 (Facebook)

イスラエルの存在自体を認めていない、反米のシリア

 岩井氏が、「昨夜、サッカーのワールドカップ予選で日本対シリア戦があり、その後、ロシア軍のシリアへのミサイル攻撃のニュースが流れて、不思議な感覚に包まれた」と口火を切り、ロックの会は始まった。

 ゲストの安田氏は、戦争前のシリアの美しい風景のスライドを見せ、シリア内戦について、以下のように語り始めた。

 「2011年3月、シリアから南西にあたるヨルダンのダルアーで大きな反政府デモが勃発し、それが引き金になった。内戦が長期化している理由は、反政府派の勢力が多数あり、一本化しないことだ。かつ、そこにISが入り込み、三つどもえの戦いに発展してしまった」

 アサド大統領の宗派は少数派のアラウィー派で、彼らがスンニ派、シーア派を支配する。多宗教の国家では、政府の認めない他宗教への締め付けは厳しく、安田氏は、「シリア滞在中、外で政治の話題は、英語ですら口にできなかった」と話した。

 続けて、「ヨルダンでは貧富の差があったが、シリアのダマスカスでは感じなかった。また、中東諸国の中でも、シリアは反米の国としての立ち位置が特異だ。イランやロシアが支援しており、その理由は石油よりも、イスラエルのゴラン高原を挟むなどの地政学的な思惑が強い。また、シリアはイスラエルの存在自体を認めていない」とした。

武力は人を追いつめる。私たちは中東に学ばなければいけない

 難民の発生と戦禍による死傷者は、圧倒的にアサド政権の弾圧によるものだ。シリアの人口2000万人強の1000万人が家を追われている。また、ヨルダンでは600万人強の人口に対し、難民は公式で60万人だが、実際にはその2倍近くいると言われている。

 岩井氏は、「現実的に、戦争や戦死が当たり前という世界もあり、多様な価値観の中にいることは確かだが、それを求めるような思想が、日本の中にも存在する」と疑問を口にし、「武力に走ることは、どれだけ人を追いつめるのかを、私たちは中東に学ばなければいけない」と応じた。

 「シリアに行くきっかけは、イラクの友人がシリアに逃げたから、」と言う安田氏。その友人は、シリア内戦で再び、祖国イラクのモスルに戻り、2014年9月、モスルがISに占領されると、今度はアルビルに逃れたという。「戦争になると、僕たちはチェスの駒だ。駒を動かす人間は決して傷つかない」と語った、その友人の言葉が忘れられないと、安田氏は話した。

8万人の難民キャンプに学校は3ヵ所だけ

 ヨルダンのザータリ難民キャンプは、6万人収容規模のところに多い時は12万人、現在は8万人が暮らす。インフラなどを難民キャンプが整備できる規模は2万人が限度だといい、子どもたちには肺疾患も多い。不衛生極まりないトイレなどの衛生設備、水の供給や食料問題など、さまざまな困難があり、「難民キャンプの生活の苦しさに耐えかねて、シリアに戻って戦争に加担する人々もいる」と、安田氏は言う。

 一方で、「人間のたくましさには驚かされる」とも言い、難民キャンプ内のシャンゼリゼ通り、と呼ぶ一角の写真を見せた。国連からの配給品の毛布やテントをキャンプの外で売り、それを元手に物資を調達し、キャンプの中で売る商店街だ。「今は、キャンプ内の五番街もできている。そこには食料、日用品からウェディングドレスの店まである」。

 現在、難民キャンプには3つの学校しかない。貧しい家族の子どもたちはドロップアウトを免れず、荷物運びなどで働かざるを得ない状況だと、安田氏は指摘した。

 途中から加わった岩上安身は、「この難民キャンプから、ヨーロッパへ向かう人たちもいるのか。日本へ連れて行ってくれ、とは言われないか」と尋ねた。安田氏は、「シリアに戻った人か、長い難民生活から第3国定住プログラムを申請する人たちはいる。また、シリア人たちは、広島と長崎への原爆で大きな被害を受けたにもかかわらず、平和な国を取り戻した日本への羨望があり、どこも攻撃をしない日本を尊敬している。(シリアの人々は)欧米のNGOに対しては、スパイ活動では、との不信感も持っている」と明かした。

 その上で、日本の安保法制問題については、「シリア難民たちに伝わっているのか、わからないが、支援スタッフで英語のできる人たちは、武力行使を選ぶ日本の状況に疑問を抱いている」と述べた。

武力行使がどれだけの悲劇を招くか、シリアから学んでほしい

 ヨーロッパへ流入する難民の問題がクローズアップされている中で、日本では昨年、5000人の難民申請に対して11人を受け入れた。60人のシリア人の難民申請には、受け入れは3人だけだ。

 安田氏は、ヨルダンの首都アンマンの病院に運ばれて来た、戦車の砲撃で足を負傷した9歳の少女の写真を見せた。彼女の両親は、入国を許されなかった。なぜなら、シリア人難民まで受け入れる余裕がないからだ。そのため、彼らは、地中海などから国を脱出する以外、生き延びる術がない状態なのだ。

 「少女と同じ病室の、頭を負傷した5歳の子どもを写してあげて、その写真を母親に渡すと、とても喜んでくれた。残念ながら、その子は亡くなってしまった。日本では、安保法制とシリア内戦は関係ない、という意見も聞くが、逆だ。一度、武力に手をつけると、どれだけ悲劇を招くのか、彼らから学ばなければいけない」と、安田氏は語気を強めた。

 岩上安身は、日本の安保法制は中東にダイレクトに関係するとし、さらに、「安保法制は、日本がやりたくてやることではない。アメリカが、日本をチェスの駒を動かすようにして作らせた法律だ」と指摘した。岩井氏も、「自衛隊が輸送した武器で、中東の子どもたちが死んでいく可能性がある。それを、『絶対、大丈夫。そんなことは起こらない』と、この世界の状況を見て言える政治家がいる。本当に謎だ」と嘆息した。

ヨルダンで100人以上が後藤健二さんと湯川遥菜さんの追悼に

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「戦争になると僕たちはチェスの駒だ。それを動かす人間は決して傷つかない」 〜シリア難民問題と日本の安保法制について安田菜津紀氏、岩上安身らが語る 第44回ロックの会」への1件のフィードバック

  1. スーパーエリート達にとっては、私達など牧場の羊に過ぎないんでしょうね、安倍総理も羊の一匹。日中韓を争わせ、漁夫の利を得る。 歴史改ざんに血道を挙げる人達ほんとに情けない、世界に逆らっているつもりが、スーパーエリートに操られている。平和と、日本国憲法守る事こそ、日本の生きる道。  

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