上司から女性部下へ「病気は不可抗力、でも、妊娠は自己責任でしょ?」──「マタハラ白書」が産休タブー職場の実態を公表 2015.3.30

記事公開日:2015.4.6取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

※4月6日テキストを追加しました!

 出産や妊娠をきっかけに、働く女性が職場で、上司や同僚から嫌がらせを受けるマタニティ・ハラスメント(マタハラ)について、その被害は中小企業のみならず、大手企業にも広がっており、加害者側には女性も多いという。こうした職場での問題がまとめられた「マタハラ白書」が、被害者団体「マタニティハラスメント対策ネットワーク(マタハラNet)」によって発表された。

 2015年3月30日、厚生労働省で開かれた会見では、マタハラNet代表の小酒部(おさかべ)さやか氏が、この3月に米国務省から、「国際勇気ある女性賞」を日本人で初めて受賞したことも呼び水となり、大手メディアの記者らが多数駆けつけた。

 白書づくりに加わったダイバーシティ・コンサルタントの渥美由喜氏と弁護士の圷(あくつ)由美子氏もマイクを握り、企業がマタハラ対策に力を注ぐことは、時代の要請であることを異口同音に力説した。小酒部氏は、女性社員が出産を理由にした長期休暇を取りにくい背景には、妊娠は病気やケガとは異なり、不可抗力論が当てはまらない、とする企業側の主張があるとした。

 なお、会見では、被害者女性が浴びた暴言などの詳細データは開示されなかった。これについて、マタハラNet側は、白書の書籍化や企業研修での利用などを理由に、この場で詳しい事例は示さないとし、要望があれば個別に後で応じることを伝えたが、会見を仕切る厚労省記者クラブ側には不満の空気が広がり、「こういう会見を開くのなら、後でではなく、今、この場でちゃんと発表すべきだ」との批判的な声が上がる一幕もあった。

 小酒部氏は、「今はまず、マタハラ白書の内容を、多くの企業に受け止めてほしい」と訴えた。

記事目次

■ハイライト

  • 「2015年マタハラ白書(抜粋版)」の配布と解説/日本人で初、米国務省より受賞した「国際勇気ある女性賞」について/受賞を受けての今後の企業のあり方
  • 登壇 小酒部さやか氏(マタハラNet代表)、圷由美子弁護士(旬報法律事務所)、渥美由喜氏(ダイバーシティ・コンサルタント)
  • 日時 2015年3月30日(月) 11:00~
  • 場所 厚生労働省記者クラブ(東京都千代田区)

産休どころか有給も取りづらい

 「マタハラ被害者の実態の可視化に向け、アンケート調査の結果を数値化した、日本初のデータを本日発表する」──。このように切り出した小酒部氏は、マタハラNetがまとめた「2015年マタハラ白書」について、調査は2015年1月にインターネットを使って行われたことを説明した。過去にマタハラに遭った、約180人の女性が回答したという。

 小酒部氏が「意外だった」としたのは、回答数で、正規雇用者が、非正規雇用者を大幅に上回ったこと。「正社員の方が積極性や権利意識が高い傾向があるのだと思う」と分析する小酒部氏は、非正規雇用者は権利意識が低い点で自ら損をしていると、顔を曇らせた。

 白書では、マタハラは大手企業から中堅・中小企業まで、一様に認められ、「社員規模別では大差がなく、上場企業の割合も19%に達している」という。

 マタハラが日本の職場に横行する理由として、「性別役割分業の意識」と「長時間労働」の2つが挙げられている。小酒部氏は、今回の調査結果では、後者が理由として大きいことがわかったとし、「残業は当たり前で、有給休暇がとれないという職場の風土が、マタハラを生んでいることがはっきりした。アンケート結果では4割以上の人たちが、産休どころか、有給休暇さえ取得しづらい職場で働いていた」と報告した。

女性から女性へのマタハラ──「私は両立できたわ」

 そして、マタハラの加害者のトップは男性上司で30%だが、「同僚が加害者となるケースでは、女性の方が多い」とし、こう口調を強めた。

 「多くの企業に、『病気やケガは不可抗力によるものだが、妊娠は、あなた自身が望んだことでしょ?』という、自己責任ととらえる傾向がある。その根底には、仕事に穴を空けることは絶対に悪、という価値観があり、結果的に、働く者の性別には関係なく、マタハラが起きる」

 女性上司や女性の同僚によるマタハラでは、育児経験者が、「私は(仕事と出産・育児の両立が)できたのに、なぜ、あなたはできないの?」といった圧力のかけ方が目立つ、と小酒部氏は言う。「(サポートを頼める)自分の親が近所に住んでいるかどうかで、その女性の育児環境は大きく違ってくるのだが」、と個々人の環境の違いについて指摘した。

(…会員ページにつづく)

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「上司から女性部下へ「病気は不可抗力、でも、妊娠は自己責任でしょ?」──「マタハラ白書」が産休タブー職場の実態を公表」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    上司から女性部下へ「病気は不可抗力、でも、妊娠は自己責任でしょ?」──「マタハラ白書」が産休タブー職場の実態を公表 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/240924 … @iwakamiyasumi
    加害者側には女性も多いという。いつから、僕らはこんな窮屈な世の中にしてしまったのだろう。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/585197457266606080

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