【大義なき解散総選挙10】「財政で経済を潰す」に反転したアベノミクス 増税逆噴射で「日本の奈落」を招く財務省と安倍政権の狙いは ~岩上安身が政治経済学者・植草一秀氏に聞く 2014.11.25

記事公開日:2014.11.27取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・佐々木隼也)

 「日本はリセッション(景気後退局面)に入った」――。

 7-9月のGDP成長率マイナス1.6%、2四半期連続マイナスという発表を受けて、海外メディアは一斉にアベノミクスの「失敗」(リセッション入り)を報じ始めた。しかし、当の安倍総理は11月21日の会見で、「雇用が100万人増加」(※)、「高校生の就職内定率10%アップ」や「賃上げ」を例に出し、アベノミクスの「成功」を強調した。

 しかし、政治経済学者の植草一秀氏は、「GDP成長率の実態はマイナス16.4%であり、今の政策で日本経済が好転する要因はゼロだ」と指摘する。

(※)総務省の労働力調査によると、2012年7~9月期に3327万人だった正規雇用者の数が、14年の7~9月期には22万人減少。その一方で、非正規雇用の数は1952万人に達し、123万人増加した。つまり「雇用が100万人増加」とは、正規雇用が減り、非正規雇用が爆発的に増加したことを意味する。

 11月25日に岩上安身のインタビューに応えた植草氏は、安倍政権がひた隠す「アベノミクスの失敗」の実態を、詳細なデータとともに解説。個人の消費支出は過去の2度の増税時(89年・97年)より下げ幅が大きく、落ちたまま回復していないという。さらに、家計実質実収入・消費支出の推移をみると、9月以降は前年同月比で「マイナス5」というのが実態であり、安倍政権が喧伝する「賃金アップ」はまやかしだと反論した。

 そして植草氏は、そもそも「アベノミクスの成功」と言われている昨年2013年5月までの株価上昇が「幸運」によるものだったことを指摘した。米国の長期金利上昇によってドル高・株高がもたらされ、「そこにたまたま安倍総理がいた」のだという。

 植草氏は、今年に入り2本目の矢が「財政で経済を支える」から「財政で経済を潰す」に反転したこと、そして前例のない奇妙な株価上昇を続ける今の日本経済の実態を指摘し、その先にある財務省と安倍政権の「本当の目的」を明らかにした。

 いかなる大災害に見舞われ、大不況となっていようとも「2017年4月の再増税を断行する」と高らかに宣言する安倍総理に、国民は「NO」を突きつけることができるのか。この選挙で国民一人ひとりがすべきことは何か――。植草氏に岩上安身が聞いた。

■イントロ動画

  • 日時 2014年11月25日(火) 21:00~

※以下、インタビューの実況ツイートをリライトし、掲載します。

岩上安身(以下、岩上)「安倍総理は今回の解散を、『大義なき解散』と呼ばれるのを嫌い、自ら『アベノミクス解散』と命名しました。従ってアベノミクスの正体や消費税増税の影響、総理が宣言した『2017年再増税』について、政治経済学者の植草一秀さんにお話をうかがいたいと思います」

GDP成長率2四半期連続マイナスの衝撃

岩上「7-9月のGDP成長率マイナス1.6%という速報値をもって、海外では『日本はリセッション(景気後退)入りした』と盛んに報じられ始めました。しかし、安倍政権や日本の大手メディアはこの言葉を使いたがりませんね」

植草一秀氏(以下、植草・敬称略)「米国は2四半期連続マイナスで『リセッション』と定義付けられています。

 しかしこの定義を使わなくても、日本は景気後退局面にあります。私の試算ではGDPはマイナス16.4%です。

 実は4-6月に大量の売れ残りが発生したのです。この在庫の積み上がりを含めて、政府はマイナス7%と発表した。これは国内の最終需要(販売できたもの)に外需、売れ残りを足して計算したもので、実態の数字ではない。この売れ残りと外需を排して、一番重要な国内の最終需要だけで見ると、実態はGDPマイナス16.4%となります。この大量の在庫により、7-9月の生産にブレーキがかかりました。その実態を政府とメディアは伝えなかった。国内の需要だけなら実はプラスだったのです。

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 財務省は『消費税増税の影響は軽微だ』とするキャンペーン、世論誘導を行ってきました。政府は夏の台風や水害のせいにしますが、指標をよく見ると、景気後退要因はしっかり現れていました。

 アベノミクス(急激な円安)の効果があったのは去年(2013年)の5月までです。この時の株価の上昇によって、アベノミクスを評価する向きがありますが、実は去年5月以降は一進一退でずっと横ばい。そして経済分野では、家計調査による個人の消費支出は過去の2度の増税時(89年・97年)より下げ幅が大きく、落ちたまま回復していないのです」

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当然の「格差拡大による消費落ち込み」を認めない財務省と御用学者

植草「97年の橋本龍太郎政権での増税では、13兆円・GDP比3%のブレーキを踏みました。株価が下がり、金融危機という連鎖。97年の金融恐慌につながりました。橋本氏は後に自らの過ちを認めましたが、財務省(当時の大蔵省)だけがいまだに認めていないのです。

 低所得者は所得のほとんどを消費に回さないと生きていけません。一方、お金持ちは所得に占める消費の比率が少ない。格差の拡大によってお金持ちの所得が増え、低所得者が増えると、国全体でみれば消費が落ちるのは当たり前です。

 エコノミストや経済研究所は、『社の方針』に従います。こうした研究所は財務省の事務次官OBが所長をやっている、などのケースが多い。増税推進、と書けば加点になる。学者と呼ばれる人々も財務省の顔色をうかがう。警鐘を鳴らす人は『異端』と呼ばれるのです。

 消費を決めるのは『財布の紐の固さ』と『財布の中身』です。とりわけ『財布の中身』が重要。先日の安倍総理の解散会見では、『賃金が増えている』などと色々と奇妙なことを言っていた。しかし、家計実質実収入・消費支出の推移をみると、9月以降は前年同月比でマイナス5というのが実態です」

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「デフレ=悪、インフレ=善」というまやかし

植草「『為替を円安にすれば輸出が増えて景気が良くなる』などという声もありますが、今のところその兆候は一切ありません。GDP成長率は総体としての『所得』と『消費』が反映されます。安倍政権が有効求人倍率など、部分部分のプラスをいくら強調しても意味がないのです。

 もともと円安による輸入インフレ・物価上昇や雇用状況の悪化があり、その上に消費税増税が重なった。賃金と雇用状況はほぼ横ばいのままなので、景気が浮上するわけがない。安倍政権はボーナス増加など、景気浮揚をアピールするが、実態はマイナスです。

 そもそもデフレが悪、インフレが善という風潮がありますが、インフレで得をするのは企業です。国民、特に年金生活者などは同じ支給額でも、デフレで物の値段が安い方が良い。企業が安倍政権に泣きついたのでしょうか、実質の『賃下げ』のためにインフレ誘導が行われました」

「アベノミクス解散」ではなく「増税による日本経済撃墜解散」だ

植草「今年(2014年)に入り、アベノミクスの2本目の矢が反転しました。『財政で経済を支える』から『財政で経済を潰す』に変わったのです。増税9兆円、補正予算縮小7.5兆円という史上最大のブレーキを踏みました。私はこれを『政策の逆噴射』と呼んでいます。経済を浮上させてから増税、のはずが、先に増税が来て経済を潰してしまった。順番が逆になった。まさに『アベコベノミクス』です」

「アベノミクスの成功」は運が良かっただけ?

植草「そもそもアベノミクスの成功と呼ばれる株価上昇ですが、米国の株価上昇の波に乗った面があり、安倍総理は非常に運が良かったと言えます。

 日本と米国とドイツの株価推移を見ると、リーマンショック後にいずれも復活しています。しかし日本だけ、途中に菅・野田政権時の超低迷期がありました。菅・野田政権というのは『戦犯』だと思います。

 そして野田政権から安倍政権にバトンタッチした際に、やっと正常な波に乗ったに過ぎないのです。実は『ドル/円』は米国の長期金利と連動しています。米国の金利が上がり、ドルが上がり、株が上がった。たまたまそこに安倍さんがいた。安倍総理の幸運です」

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「円安で株価上昇」のからくり

岩上「円安と株価上昇の関係について、詳しくお聞かせいただけますか?」

植草「円安になると東証一部上場企業、特に製造業の利益が『変動』します。実態は変わっていないが好転したように見え、それが株価に反映されます。一方で円安は輸入物価を通じて国内物価を上げてくるので、大多数にはマイナスの効果を生みます」

「危険な香り」がする株高 2015年前半は波乱含みに!?

植草「これまでは米国の金利が上がってドル高・株高に、というパターンでした。しかし、今回の株高だけは違うのです。今回ばかりは米国の金利は下がっています。私は、これは危険な香りがする株高だと感じています。

 実は、日銀保有資産が激増しています。日銀は市中銀行から大量の国債を買っているのです。銀行からの融資は増えていない状況なので、銀行は余った流動性で何をしているかと言うと、ドルを買っています。これが米国金利が下がっているのにドル高(=株高)となっている実態なのです。

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 『ドルが上昇するからドルを買う』という発想でドルを買い続ける先には、必ず終着駅があります。『ドルが売れないな』となった瞬間に銀行はドル売りに転じる。つまりバブルの崩壊。消費税増税の影響などさまざまな景気マイナス要因が重なる来年(2015年)前半は、波乱含みになるだろうと思います…」

奇妙な日銀の動きから見える、財務省のおそるべき思惑

植草「日銀のこうした動き(銀行からの大量の国債購入)の背景に、財務省は『ハイパーインフレ』の策略を頭に秘めていると思います。黒田さん(日銀総裁)がどこかのタイミングで激しいインフレを引き起こせば、借金棒引きにすることができますから」

岩上「『ハイパーインフレ』ほど恐ろしいことはありませんね。政府としては年金の問題も、債務の問題も帳消しになる。一方で高齢者は生きていけなくなり、平均寿命も下がるでしょう」

植草「だからこそ日銀の主導権を財務省に握らせてはいけない、とずっと訴えてきました」

岩上「国債暴落という最悪のシナリオは、どのように引き起こされると思いますか?」

植草「今の日本経済は、GDP統計含めて好転する要因がありません。今回の増税延期は、その先に増税が確約されてしまっているため、好転要因にはなり得ません」

総選挙争点は消費税増税の「延期」か、それとも「中止」か

岩上「今回の選挙では、どの党も消費税増税の『中止』を言っていないように思えますが…」

植草「共産党は一応『中止』と言っています。しかし野党代表の民主党は、自民党とともに増税の首謀者なので、その意味では選挙にならないのです。

 鳩山政権・菅政権の2度の国政選挙で、国民は増税に『NO』を突きつけました。にも関わらず、野田政権は増税を決めてしまいました。その後、自民党への政権交代が行われた衆院選、その後の安倍政権下の参院選でも増税は争点となっていません。

 国民に約束した『シロアリ退治』はできず、むしろ財務省の天下りは増えている状況。安倍総理は議員定数削減を行なわず、『社会保障と税の一体改革』と言いながら、やっているのは社会保障の切り捨てと、官僚の利権構造拡大のみ。つまり、増税の前提条件は何一つ揃っていないという状況下であり、増税『延期』ではなく『中止』とした方が、国民の支持は得られるのではないかと思うのです」

野田政権の解散は「大政奉還だった」

岩上「あの奇妙な野田総理の解散。小沢さんも当時、『なぜこのタイミングなのかさっぱり意味が分からない』と言っていました。植草さんは著書の中で、『あれは大政奉還だ。自民党に政権を返しただけだ』と書かれていますね」

植草「民主党代表選で、野田さんは財務省に魂を売り、『増税確約』で取引をしました。財務省主導で野田さんを総理にしたのです。

 背景には、2009年の小沢・鳩山の政権交代によって、米国・官僚の既得権益勢力が危機感を持ったことがあります。彼らは最終的に2013年の参院選で巻き返すために、西松事件や陸山会事件を仕組んだ。そして主権者勢力と言える『日本未来の党』への軍資金(政党助成金)を潰すために年内選挙を強行しました。

 その後、4000人が集まり熱狂に包まれた『日本未来の党』の結党パーティーや、その後の公約発表など、ハイライトとなる場面で必ず別の緊急ニュースが発生し、これらは報道されず、黙殺されました。一貫して『小沢新党潰し』が行われたのです」

選挙のテーマは「『戦争と弱肉強食』なのか『平和と共生』なのか」

植草「今回の選挙の大きな悲劇は、主権者勢力の代表がいないということです。日本の税の推移を見ると、所得税は2分の1、法人税は3分の1になり、消費税は3倍になっています。今日本は、法人税をさらに下げ、消費税をさらに上げ、弱肉強食の政策をやろうとしています。

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 税制調査会の資料によると、社会保険料の企業負担は欧州先進国に比べてかなり低いことがわかります。だから法人税を下げる必要はまったくないのです。銀行含め大企業は不良債権処理でずっと税金を払っていない。政府は大資本を優遇する一方で、中小企業には課税強化を進めています。

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 日本の『人口減少』の一番の原因は『格差拡大』と『世界で最も貧困な社会保障制度』です。今回の選挙のテーマを一言でいうならば、『戦争と弱肉強食』なのか『平和と共生』なのか、ということに尽きます。国家は本来、市場資本主義による格差の拡大の緩和をはかっていかなければならない」

岩上「どうして政府は、格差拡大や社会保障の切り捨て、消費税増税などの政策によって『需要を小さくしてしまう』という根本的な問題に目を向けないのでしょうか?」

植草「経済分析の分野で言えば、狭い範囲の指標や制約のもとで短期的・ゲーム的に『利益極大化』の発想で行われます。社会への影響、構造変化、価値観などを彼らは考えられないのです」

「今の状態で日本で財政危機が起こる可能性はゼロ」

植草「私は増税しなくても日本の財政は大丈夫だと言い続けています。政府発表を見ると、確かに国家の負債は1131兆円ありますが、期末資産も1092兆円持っており、負債と資産がバランスしているのです。しかし政府は負債の方しか言わない。『1億円借金があるからお金を貸して欲しい、でも実は預金も1億円ある』という状態なのです。

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 つまり、今の状態で財政危機が起こる可能性はゼロなのです。しかしそれでは増税できないので、(財務省は)『明日はギリシャ』みたいな話をするのです。

 また、地方の負債も201兆円ありますが、地方は返済が確定していない借金はできないことになっています。つまり不安定な負債ではありません。

 国民に負担(増税)を強いるならば、せめて政府支出を3割は削減すべきだと思います。民主党時代の事業仕分けのような、削減する気のない『学芸会』ではなく、本気で。これはやろうと思えばできる。これくらいは前提とすべきです」

「目をつぶるところはつぶる」今回の選挙で国民に課せられた宿題とは

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  1. うみぼたる より:

    とんちんかんなコメントですいませんが、
    中国は何のために米国債を大量に購入し、保有しているのでしょうか。
    日本が米国債を買わされているのとは違い、中国は何か戦略でしょうか。
    米国債を大量に保有する日本と中国がいがみあえば、借金をしている米国は911のツインビルに保有していた債権が消えてしまったように、借金がなくなるのを期待しているようにも思えます。

  2. 斎藤 純子 より:

    饗宴に参加出来ませんでしたが、DVDが発売されて、とても嬉しく思います。
    2月4日に購入のための送金をしました。
    注文番号は72です。
    DVDの届くのを首を長くして待っています。
    よろしくお願いします。

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