【大義なき解散総選挙5】総選挙の争点「アベノミクス」の失敗 「アベノミクス解散」ではなく「消費税増税解散」 岩上安身が経済アナリスト菊池英博氏に聞く 2014.11.22

記事公開日:2014.11.23取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・藤澤要)

特集 総選挙2014|特集 天下の愚策 消費税増税

 増税をして長続きした政権はないといわれる。それをあえて目指そうとする安倍総理。2017年4月に1年半先送りした消費税率10%への引き上げについて国民に信を問うとし、21日に衆議院を解散させた。同日の会見で安倍総理はこれを「アベノミクス解散」と自ら命名。自身の経済政策の是非を総選挙で争う考えを強調した。

 安倍総理の行動は自信からくるものだろう。しかし、経済アナリストで日本金融財政研究所所長の菊池英博氏は、自民党の勝利はそうたやすいものではないと見る。とくに消費税に対する国民感情は「きついもの」だと菊池氏は話す。

 11月22日(土)、岩上安身のインタビューに応えた菊池氏は、「アベノミクス」の功罪を徹底検証。『そして、日本の富は略奪される』(ダイヤモンド社, 2014.1)などの著書で、新自由主義的経済政策の批判で知られる菊池氏。「異次元金融緩和」により、米国ヘッジファンドへ流出する大量のマネー。第三の矢「成長戦略」による日本社会への破壊的な影響など、「アベノミクス」の問題点を詳しく論じた。

■イントロ

  • 日時 2014年11月22日(土)16:00〜
  • 場所 IWJ事務所(東京・六本木)

安倍総理の「アベノミクス解散」は小泉流の二番煎じ

▲岩上安身のインタビューに応える菊池英博氏

岩上安身(以下、岩上)「衆議院が解散になりました。師走が近づきせわしい時、内閣不信任案が可決されたわけでもないのに解散するとは、解散権の濫用ではないかという声があります。安倍総理はアベノミクス解散だと反論しました。そこで、今日は日本金融財政研究所所長でエコノミストの菊池英博先生をお迎えし、その検証を行いたいと思います。

 安倍総理は『アベノミクス解散』だと言いますね。自身の経済政策に自信があるらしいのです。しかし、菊池先生は『消費税増税解散』だとおっしゃいますね」

菊池英博氏(以下、菊池・敬称略)「安倍さんは一度解散をやりたいという気持ちが強かったのだと思います。

 かつての自民党には、野党に謙虚なところがありました。それを覆したのが小泉さんですね。

 税制というのは、国民の富の再配分を担う。国民の誰を豊かにするかの決め手です。そう考えると、米国があんなにひどい国になったのはレーガン時代。

 安倍さんの『アベノミクス解散』発言。これは小泉純一郎氏流のやり方です」

岩上「郵政解散と同じ手法ということですね」

菊池「郵政解散は、実は、自民党の中で『小泉流のやり方』では悪くなる、という反発のあらわれでした。この時に米国の支援があったことは森田実氏の本に書いてあります。

 大マスコミが『官から民へ』と大合唱した。自民党の良心ある方々は、小泉構造改革や郵政改革が失敗だったと認めています」

岩上「郵政解散のときは、賛否のコントラストがはっきりしていました。ところが、今回は、誰からも内閣不信任を突きつけられたわけではないですね。圧倒的な権力を手にしているのにもかかわらず自分の足場を崩した上で、選挙にのぞむ。勝てば長期政権をしき、さらに消費税を増税したい、という考えなのだと思いますね」

スタグフレーションにおちいる日本経済

岩上「マスコミに出てくる大多数のエコノミストは、この7-9月期のGDPはプラスになると言っていました。菊池さんのように、マイナスになると予測していた人はほとんどいません。この忙しい時期にやる選挙というのは、考えるいと間を与えない選挙ということですね。GDPは2四半期連続でマイナスです。さらに、安倍さんが重視しているという消費支出も6ヵ月連続でマイナス状態です」

菊池「まさにこのGDPの数値通りなのですね。4-6月期は落ちるが、7-9月期は大丈夫と言っていたのは、証券会社や銀行の方たちですね。

 私は4-9月期の数字を持っていますが、今年の1-3月期、消費税を上げる以前に比べると8.8%のマイナスです。これは国民所得が47、8兆落ちていることになります。ですから、デフレは一段と加速しています。

 デフレを脱却していると、安倍さんや黒田東彦日銀総裁が言っているのは消費者物価の上昇のことです。これは一面しか見ていない。実体経済を回復させないとデフレ脱却にはなりません。

 円安によるマイナスインパクトが強く、実質賃金も下がっている。だからデフレですね。一方、消費者物価は上がっている。不況下における物価高はスタグフレーションですね。現在はスタグフレーションなのです」

岩上「70年代を思い出します。これは怖いですね」

菊池「安倍さんはおっしゃることが、一貫していません。つまり、ここで消費税を上げないで、2014年に実施するという。安倍さんの周りにはブレーンがいないのではないか。そこで財務省の人がいろいろ言っているわけですね。財務省にすれば経済がどうなってもいい」

岩上「税がとれればいいということですね」

菊池「それが財務省の方の考え方。問題なのは政治家。だから安倍さんがどう判断するかなのですが、景気対策を何も打っていません。

 安倍総理という方は、政治的な感覚がいかがなものかなと思います。消費税は生活に密着しますね。これは大変なインパクトです。安倍さんはそういうことにも実感が乏しいのだと思います。周囲には裕福な方や、財務省の人が取り巻いているのでしょう」

岩上「大多数の人がきついと感じています。我々のような小企業も法人税より消費税の方を多くおさめています。グローバル企業、輸出大企業ばかりを優遇するのはどうかと思います。解散の理由として経済政策以外は長期政権下での安保法制の整備などが考えられます」

岩上「安倍さんは18日の会見では過半数が勝敗ラインと言いましたが、その後、与党内では270議席以上という声が出て、実質的に上方修正され、『絶対的安定多数』を目指すようです」

菊池「私は、自民党さんは、それほど安泰ではないと考えます。

 国民もそれほど馬鹿ではありません。生活が苦しくなり、非正規社員が増えている。こんな状況なのに安倍さんは増税を言っている。こういうことを強く認識して我々も選挙にのぞまなければいけないと思います」

岩上「『個人消費のテコ入れ』や『地方経済を底上げ』などもうたわれますが」

菊池「自民党の内部で調整がついていないのでは。政調会長の方も経済通というわけではありません。『来年1月に補正予算を組む』と言いますが、どんな補正予算かがはっきりしません」

デフレの最中に増税:大恐慌の教訓に耳を貸さない安倍総理

岩上「税率を上げても税収が上がるとは限りませんね」

菊池「増税はほんとうに怖いものです。今回もそう安易に進展しないと思います」

岩上「バブル真っ盛りの時に消費税が導入されました。その後、バブルが崩壊。長期不況に突入しました。橋本龍太郎政権の消費税2%増税のときにも回復基調の景気が落ち込みました」

菊池「今回はもっと大きな影響があると考えらます。安倍さんは大きな間違いをしました。デフレがまだ進んでいるときに増税をしてしまいました。1929年のウォール街の大暴落のあと、1932年、フーバー大統領の時、米国は消費税を導入し、GDPが半減してしまいました。大恐慌時の米国の教訓は、『デフレの時に増税をしてはならない』というものです。

 デフレ政策、経済政策が失敗すると戦争へ結びつくことは、歴史が証明しています」

岩上「対外侵略で一挙に回復を狙い、内政の矛盾を外に向けさせる。外交政策でも緊張をあおることをする。今の時代が、満州事変に突き進んだ時代に重なります」

日本は米国の「財布」:FRBからの金融超緩和「要求」と黒田日銀

岩上「『第一の矢』の異次元の金融緩和ですが、ベース・マネーの増加分はアメリカのヘッジファンドへ流れて投機の原資になっています。日本国内の実体経済には回っていません。

 先生の御著書『そして、日本の富は略奪される』の第6章、214ページですが、『アメリカの金融緩和縮小(出口)の補充として利用される日本の超金融緩和』という項目があります。ここの書き始めに、『2013年3月頃の日本では、安倍首相が「金融緩和を一段と進め、私の考えに合う人を日本銀行総裁に選びたい」と公言していた』とありますね。つまり、安倍さんは、黒田さんを起用する前にこういうことを公言していたということですね。

▲ 菊池英博『そして、日本の富は略奪される』(ダイヤモンド社, 2014)p.214より

 さらに続けて、『こうした時期に、アメリカのバーナンキFRB議長は、「アメリカ以外の国が金融緩和を進めてくれれば、両国にとって利益になる」と発言している』と書かれています。

 先生はバーナンキを直接ご存知なので、メディアを通した発言だけではなく、彼の腹の内がどういうものだったのか、理解されていたのだろうと思うのですね」

菊池氏「その記事は日経に出たものですね。2013年3月31日付けに出ています。だからバーナンキから個人的に聞かなくても。バーナンキはこの発言を欧州でしました。

 その記事を読んで、私はピーンときました。なるほどと。バーナンキはもう(金融緩和を)縮小したいのだと。その後、日本に金融緩和をさせて、日本からのマネーをウォール・ストリートに供給させれば、米国は縮小できる、ということを考えているなと」

岩上「先生は『バーナンキ発言は、日本財布論を強めて、日本に金融超緩和を要求してきたサインだった』と書かれておられます。

 本来は合理的な経済政策というものがありうるはずですね。ところが、どうもいつもいびつでおかしなことが起こったりする。そういう時に、国内の論理だけで考えていると、つじつまが合わないことがいっぱいあるわけですね。やはり、外側からいろいろな要求があったり、振り回されたりしている。それに対して、日本の支配的なエリート、とりわけ財務省であるとか、官僚たちが応えようとする。そういうことで、おかしなつじつま合わせの経済政策をやるということが根本にあるということですね」

日銀がヘッジファンドへバクチ資金を提供

岩上「皆、株高を喜んでいますが、儲けているのは外国人投資家ですね」

菊池「さらに、安倍さん自身が、株を高くしておけば自分の支持率も上がると考えているフシがあります。だから金融緩和をする。安倍さんや黒田日銀総裁でもヘッジファンドに流れるとは考えていなかったのでは。

 金融緩和をとなえるのは浜田宏一さんですね。黒田さんはそれに従っているのだと思います。しかし浜田さんは10年間日本にいませんでした。私は浜田さんとは面識がありますが、小泉構造がどんなにひどいものだったかご存知ないのです。私以外の人も言っていることです。

 日本は福井日銀総裁の時代にすでに充分に金融緩和をしていました」

岩上「ゼロ金利まで金利が下がってしまえば、それ以上どんなにお金がジャブジャブあってもしょうがない、誰も借り入れし投資をしないということですね」

菊池「証券会社の方はこういうことは分かっている。外資に回っているのは日銀マネーです。その円で外資はドルを買います。円安になり輸出業者はもうかるというのは物事の一面しか見ていません」

岩上「多くの企業はすでに生産拠点を海外に移しているので、円安効果は出ませんね。円安によって原料輸入価格も高騰しますね」

菊池「エネルギーも多くを輸入に依存です」

岩上「あらゆるものの値段が上がります。いわゆるリフレ派はこれを喜んでいたわけですが、賃金が増えていたわけではないですね」

菊池「黒田さんになってマネタリー・ベースで125兆円増えた。一方マネー・ストックが43兆円増加。この差額82兆円がヘッジファンドに流れ投機資金となりました」

岩上「世界経済と一体化してのバブルです。乱暴なやり方をすれば、大暴落です」

菊池「私は株のことはよく知りませんが、このままいけばいつか暴落します。日本のほうが先に下がるかもしれない。日銀自身が株を買っていることにも驚かされました」

岩上「異次元緩和は、安倍政権を援護射撃するバズーカ砲というわけですね。浜田さんはアベノミクスは失敗していないとしています」

菊池「失礼ではありますが、正気の沙汰ではないと思います。危惧するのはいずれ日本の株が下がること。また、今は高い国債の価格が下がったときに、日銀が買い支えることができるか分かりません」

岩上「米国でもマネタリー・ベースを増やしても、マネー・ストックは増えないということですね」

菊池「バーナンキは『金融をいくら緩和しても、 実体経済がよくなるということは理論的に言えない』と言っています」

菊池「バーナンキは金融を緩めましたが、実体経済はよくならない。2013年6月には金融緩和の縮小を宣言。その後のG20で米国は批判にさらされます。バーナンキは責任をとり、辞任を決意します」

岩上「米国のヘッジファンドのバクチに日本が協力している構図です」

菊池「一番問題なのは、日本の中央銀行のお金で協力しているという点です。黒田さんには量的緩和のあとの出口戦略がない。浜田さんはもっと緩めろと言っている。失礼だが、どうされたの、と思わざるをえません」

岩上「異次元緩和の元祖であるバーナンキが、異次元緩和で経済はよくわからないと、失敗を認めているわけですね」

菊池「彼は責任を取った分だけ偉い。日本は米国の失敗の後追いをしているのです」

岩上「菊池先生はケインズを再評価するのですか?」

菊池「ある意味で米国はケインズの政策をとっているのです。レーガン政権は軍事ケインジアンでした。クリントンは財政支出をどんどんして、道路整備、学校を作った。これもケインズ的と呼べるものです。

 子ブッシュは軍事ケインジアンへ回帰。オバマになり米国の財政はよくなっている。米議会の予算調査局の調査では、乗数効果は3年で2.5という数字が出ています。

 米国の今の凋落の原因は、レーガン政権期の新自由主義的な政策があります。クリントン時代に少し回復しましたが、子ブッシュ政権期に戦争をやり、ドンと落ちました。共和党政権は軍事ケインジアン。民主党はドメスティック・ケインジアンとも呼べるものです」

岩上「米国の後追いをする日本には、軍事への傾斜というシナリオがあるようにみえます」

菊池「憲法9条を守り、永世に平和国家の看板をおろさない。ただ、私は防衛のための防衛力を強化することには賛成です。このあり方では、スイスが一番のよい例です」

外国の失敗策をそのまま真似る安倍政権

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