留任の岸田文雄外相が会見 辺野古埋め立て工事「丁寧な説明が必要」 ウクライナ情勢「停戦合意」報道については「引き続き注視を」 2014.9.3

記事公開日:2014.9.3取材地: テキスト動画
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 内閣改造で留任した岸田文雄外務大臣が9月3日、外務省内で記者会見を行った。緊迫が続くウクライナ情勢に関し、ウクライナ政府とロシアが停戦に合意したとの一部報道について岸田外相は、「評価したい」としつつ、停戦に向けた今後の動向について「引き続き注視していかなければならない」と述べた。

 IWJからは、現地住民からの根強い反対の声にも関わらず、なかば強引に進められている辺野古沿岸部の新基地建設にともなう埋め立て工事について質問。

 岸田外相は、「まず、普天間飛行場の固定化があってはならないことは、地元と考え方を共有している」としたうえで、「沖縄の意見は受け止めながら、丁寧な説明や丁寧な作業の進め方が必要となる」と、今後の見通しを語った。

■全編動画

  • 日時 2014年9月3日(水)
  • 場所 外務省(東京都千代田区)

質疑応答

外務省HPより)

【NHK】ウクライナ情勢についておうかがいします。今日、ウクライナ政府がロシア側と停戦合意をしたと伝えられておりますけれども、その受け止めとNATO諸国、NATOの加盟国等がロシアに対する集団安全保障体制を確認するとかそういった、ロシア側をけん制するような動きが出ているなかで、日本政府としての対応についておうかがいできますでしょうか。

【岸田文雄外務大臣】まず、ご指摘のウクライナ大統領府の発表については承知をしております。停戦に向けて一定の動きが見られたことについては評価したいと思いますが、今後の推移は引き続き注視していかなければならないと思っています。

 是非、今後とも、早期の停戦の実現に向けて、関係者が努力することを期待したいと思いますし、特に、ロシアがこの平和的解決に向けて建設的行動をすることを強く求めていきたいと考えております。

 そして、NATOの動きについてもご指摘がありましたが、9月の4日、5日、NATOの首脳会議が予定されています。是非、この会議の行方もしっかり注視していきたいと思いますし、それを注視しながら、また様々な動きの推移を関心を持って注視していきながら、我が国としましては、G7との連携を重視しながら、しっかり対応を検討していかなければならないと考えます。

【共同通信】今大臣からもお話がありましたけども、今後の課題として、近隣諸国との関係改善を大臣挙げられました。先ほど官邸での会見でも、政治レベルでの対話強化について言及されましたが、相手方の中国と韓国は、歴史認識問題に対する安倍内閣の姿勢、日本の姿勢というものを批判し、そしてこれが障害であるということを述べているというふうに理解しております。

 この歴史認識問題にどう向き合って、どう中国と韓国との間で意思疎通を図るか、今後第二次安倍内閣の外交を進めていく上で基本的な構え、姿勢を説明頂きたいと思います。

【岸田外務大臣】まず、我が国政府の歴史認識につきましては、歴代内閣の歴史認識をしっかり引き継いでおります。変わっておりません。これは再三申し上げてきたとおりであります。また、戦後我が国の平和国家としての歩み、これは国際社会から高く評価されていると認識しております。

 こういった点につきまして、引き続き丁寧な説明をしていく、努力は続けていかなければならないと思いますが、こうした歴史認識の課題等については、やはりそれぞれの国の国民世論もあり、やはり辛抱強い丁寧な議論が求められると考えます。是非、この難しい課題があるからこそ、この政治のレベルでの対話が重要になってくるゆえんであります。

 是非、こうした我が国の思いにつきましては、中国、韓国をはじめ関係国にしっかりと理解をしていただき、我が国の対話に向けての前向きな姿勢にしっかり応じて頂きたいと強く願っております。

【IWJ】辺野古の沿岸の埋立ての問題についておうかがいしたいんですけれども、先ほど官邸で普天間の固定化はあってはならないというふうにご発言されましたが、他方で、辺野古沿岸でボーリング調査が進む中で地元の反対派の住民の方から海上保安庁の警備が過剰だというような声もあがっております。

 辺野古の新基地建設について、年末に控えた日米ガイドライン改訂との兼ね合いから急がれているという事情もあるかと思うんですけれども、沖縄県民の方への声についてどういった説明をしていくのか、大臣のご見解を教えてください。

【岸田外務大臣】先ほど官邸でも申し上げましたように、普天間飛行場の固定化はあってはならないというこの考え方につきましては、地元の皆様方も、そして安倍内閣も、考え方を共有していると考えています。そして、その上で具体的にどう物事を進めていくかということで様々な議論が行われてきたわけです。

 そして、仲井眞知事のこうした取組みに対する工事の承認があり、この手続きを進めているわけでありますが、その際にやはり様々な考え方、意見、見方が地元沖縄にあるということについてはしっかり受け止めながら、丁寧な説明や丁寧な作業の進め方が求められると考えております。是非、この沖縄の負担軽減につきまして、こうした関係者の理解をしっかり得ながら、この作業あるいは手続き、こういったものを一つ一つ進めていく、こういった姿勢が重要なのではないかと考えています。

【北海道新聞】北方領土問題についておうかがいします。北方領土問題は拉致問題と同じように、安倍内閣の最重要課題の一つかと思いますが、元島民の方々も高齢化する中で、今後どのような方針で交渉に臨んで、問題解決と平和条約の締結につなげていくのか、大臣の考えを改めてお聞かせください。

【岸田外務大臣】まず、北方領土問題については、我が国政府の姿勢、北方四島の帰属の問題を明らかにして、平和条約締結の問題を進めていく、解決していく、こういった方針、この方針は従来から全く変わっていません。引き続き、そうした方針をしっかりと堅持しながら進めていきたいと考えております。

 そして、今、日本とロシアの間においては、特にウクライナ問題等につきまして、難しい局面が存在するわけでありますが、ぜひ、ロシアに、ウクライナ問題においても建設的な行動を促していくためにも、ロシアとの間の政治的な対話、これは重視していかなければならないのではないかと考えます。

 こうした政治的な対話を大切にしながら、日本とロシアとの間にある様々な課題について、しっかりと議論を進め、努力を続けていくことが重要なのではないか、このように考えています。

【日経新聞】中国との歴史認識問題にまた戻るんですけれども、対話の重要性はよくわかるんですが、今日も習近平国家首席が、抗日戦争勝利記念日に合わせて、歴史を否定することは許されない、と改めて安倍政権の外交姿勢を批判、牽制する重要講話を出しました。まずその受けとめと、あと、外相に留任されたことで、今後国連総会をはじめ、重要な国際会議が相次ぐと思いますが、改めて再度の外相会談にむけた、その姿勢や調整状況についてお答えください。

【岸田外務大臣】まずご指摘の、中国の人民抗日戦争勝利記念日の行事につきましては、この行事の開催、さらには内容等につきましては、基本的に中国の国内の問題でありますので、日本政府としてコメントするということは控えたいと思います。

 ただ、いずれにせよ、日本政府の立場、第二次世界大戦を含む歴史問題に関する日本政府の立場、これは全く変わりはありませんし、また、平和国家としての戦後の我が国の歩みは、国際社会からも高く評価されていると考えております。

 引き続き、こういった点につきまして、しっかりと理解を得るべく努力をしていかなければならない、このように思っています。そして、対話につきましては、ご案内のとおり、先日、安倍総理も11月のAPECにおきまして、日中首脳会談を行うことについて、意欲を示されたわけであります。ぜひ、こうした高い政治のレベルでの対話に向けて、様々なレベルで対話は積み重ねていかなければならないと考えます。

 私の立場からも、更には様々なレベル、様々な分野を通じてまして、対話を積みかさね、そして、高い政治のレベルでの対話につなげるべく、引き続き努力をしていきたいと考えています。

【NHK】今の話とも関連すると思うんですが、今日の自民党の執行部人事で谷垣幹事長、二階総務会長が就任されまして、お二方とも、中国を初め近隣諸国と太いパイプをお持ちだということで、これから議員外交が活発化することも予想されますけれども、政府・外務省としては、こうした党側の動きとどういう風に連携していくと大臣はお考えですか。

【岸田外務大臣】日本と中国の間においては、今日まで、様々な分野、様々なレベルにおいて、交流ですとか、対話が存在いたします。こうした対話や交流は、大変貴重なものであり、これからも大事にしていかなければなりません。こうした積み重ねがあってこそ、政治の高いレベルでの対話につながっていくものだと考えます。

 そして、こうした様々な積み重ねのうちの一つ、そして重要な一つとして、議員外交というものも存在すると思います。今後も様々なレベル、様々な分野で、こうした努力を積み重ねていくことは、大変重要であると考えます。ぜひそうした積み重ねの結果もしっかり見ながら、政府としてもしっかりと責任を果たしていくべく、対話の実現に向けて努力をしていきたいと考えます。

【毎日新聞】今回の改造内閣から、大臣の下には補佐官の設置も可能となりました。外務省では設置しない方向のようですけれども、大臣ご自身は、補佐官を置く意義について、どんな風に考えておられるかと、もし設置しないということを決めていたら、その理由を教えてください。

【岸田外務大臣】大臣補佐官制度の存在は知っております。確か、今年5月ぐらいにそうした制度の説明を受けた記憶があります。それは、一つの制度として意義があると思いますし、大切なのはいかに活用するかということかと思います。

 ただ、どのように活用するべきなのか、従来の組織や様々な指示命令系統との兼ね合いにおいてどのように活用していくのか等をぜひ良く検討してみたいと思っております。今のところ、まだ具体的なものは何も決まっていませんが、他の大臣の対応等も注視しながら、検討はしていきたいと思っています。

【読売新聞】再任おめでとうございます。大臣の在任期間は今1年8ヶ月ですが、戦後、専任の外務大臣としては大平正芳さんの4年が一番長いようです。やはり、宏池会の派閥の領袖として、軽武装、経済重視の伝統がカラーだと思います。現在の宏池会長として、これからあと1年ぐらい、少なくともおやりになるのだと思いますが、どのようなカラーを発揮していきたいか、お聞かせ願えればと思います。

【岸田外務大臣】宏池会の歴史、先輩方の功績については、宏池会のメンバーの一人として、そして今の宏池会の会長として、誇りに思っておりますし、今後ともそうした歴史は大事にしていきたいと考えています。宏池会の歴史においては、様々な評価があるわけですが、その中で、私自身は、やはりリベラルで、そして自由に発言できる、こうした雰囲気が最も大事であり、誇りに思うべきところであると思っています。

 その時代によって、求められる外交、あるいは求められる安全保障の政策は、時代自体が、そして国際社会自体が大きくどんどん変化している中ですから、具体的にはその時代に応じて様々なものが求められるのだと思いますが、やはり、そうした政策を進めるに当たって、自由な議論あるいはリベラルな雰囲気、こういったものは大事にしながら、一つ一つの政策課題を解決していく、こうした丁寧な努力を続けていくことが宏池会の伝統をこれからも大切にしていく上で重要なのではないかと考えています。そういった思いで今後とも取り組んでいきたいと思います。

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