【IWJブログ・特別寄稿】集団的自衛権と自衛隊のPKO参加に踏み出す前に ~PKOは本当に国際平和に貢献しているのか?(米川正子元UNHCR職員・立教大学特任准教授) 2014.7.21

記事公開日:2014.7.21 テキスト
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 集団的自衛権行使の容認が閣議決定されてしまいました。このあと国会で法改正が進めば、自衛隊がPKO(国連平和維持活動)に参加する際に、任務遂行のための武器使用や他国のPKO要員らが武装勢力に襲われた時でも、駆けつけて武器を使い反撃できるようになってしまうおそれがあります。

 筆者は、自衛隊が1992-3年に初めてPKO(国連カンボジア暫定機構;UNTAC)に参加したカンボジアで、国連ボランティアとして同PKOの選挙監視活動に関わった経験があります。その後、1994年にソマリアのPKOに参加し、そして2007-8年にコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)東部にUNHCR職員として派遣された際に、世界最大級のPKOと共に一緒に活動しました。現在もPKOの研究も少々行っています。

 筆者が関わった現場でのPKOの経験は限定されているものの、PKOに関する国会での議論に大変違和感を覚えました。それには理由が2つあります。

安全国にいた自衛隊、オランダ軍の護衛があっても殺された高田警視

▲コンゴ東部におけるPKO軍のパトロール車:写真提供:千葉康由
▲コンゴ東部におけるPKO軍のパトロール車:写真提供:千葉康由

 1つ目は、安倍総理は文脈を語らないまま、日本人の死だけを取り上げ、自衛隊がいないと日本人を守ることができないような誤解を与えてしまったことです。実際に4月15日、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書について安倍総理が説明された際に、1993年にカンボジアで活動中に襲撃されて命を落とした国連ボランティアの中田厚仁さんと文民警察官・高田晴行警視を例に挙げました。彼らが突然武装集団に襲われたとしても自衛隊は彼らを救出できない、見捨てるしかないと、PKOにおける駆け付け警護の必要性を訴えました。

 筆者は現地で中田さんと同じ活動をし、かつ高田警視と同地域で滞在していましたが、中田さんはカンボジア内で最も危険な地域に派遣され、逆に自衛隊は最も安全な地域の一つに滞在し、その間に相当な距離があるため、自衛隊が駆け付けて救うことは当然できません。また高田警視は移動中、オランダ軍隊の護衛があったにもかかわらず殺害されました。だから自衛隊がいてもいなくても、殺される時は殺される。集団的自衛権の正当化のために、中田さんや高田警視の事例を使ったことは、彼らの遺族に対してあまりにも失礼ではないでしょうか。

「平和維持」が使命のPKO要員が、現地女性に対して犯す性的暴力

 2つ目に、PKOの活動評価がされないまま、PKOの名の通り「平和維持のために活動している(必需品)」という前提で議論が進められましたが、果たして現実はどうなのでしょうか。PKO要員が現地の女性に対して犯す性的暴力は常に問題視され、上記のUNTACの略名がTransitional Authority(暫定統治)でなく、Transmitting AIDSと呼ばれたほど、PKO要員がカンボジアでエイズを伝染させたと言われています。

 ボスニア、ソマリア、東チモール、西アフリカでも同様な問題が起こりましたが、近年は、1999年以降PKOが展開しているコンゴで注目を浴びています。PKO要員(文民も少々含むが、ほとんどが軍人)が性行為のために、現地の少女や女性に1~3米ドルを払ったり、食糧や雇用と交換したことが国連の調査で明らかになりました。PKO要員の国籍は、フランス、インド、ネパール、パキスタン、モロッコ、チュニジア、南アフリカとウルグアイと様々。要員への処罰は各派遣国の責任下にありますが、例え要員を母国に帰還させても、実際に起訴されるケースは稀です。レイプ、売春婦、小児性愛事件が明らかになったものはあくまでも報告されたからで、実際に起きた事件ははるかに多いでしょう。

 それ以外に、PKOのパキスタン軍がコンゴ東部で金(きん)の密輸や反政府勢力との金と武器の取引に関わり、インド軍も同様なことに関与していたことを筆者も現地で聞いたことがあります。

ジェノサイドのリーダーが、PKOの司令官に

 話はそれだけにとどまりません。

 恐ろしいことに、スーダンのダルフール地方やマリのPKOの司令官や副司令官の役職に、1994年のルワンダ・ジェノサイドのリーダー格の加害者2名が就いていたことが、あるジャーナリストの調査でわかったのです。

 ルワンダ人の目撃者によると、上記の2名はジェノサイド当時の反政府勢力RPF(現政権)のカガメ将軍(現大統領)の指揮のもとで、子供を含む市民の殺戮と暗殺団(death squad)の監視に当たっていました。勝者も敗者の両側を含むジェノサイドの容疑者を訴追する任務を有する国際ルワンダ戦犯法廷(ICTR)では、ツチ主導の現政権の人間はこれまで一人も起訴されておらず、よって二人とも処罰を受けていません。アメリカがカガメ大統領をはじめ、少数派のツチを保護しているからです。国連本部のPKO局は、2名を任命する前に彼らの経歴を検査したものの、どのような内容の検査が行われたのかは明白ではありません。

 上記の2名以外に、ダルフールにいるルワンダ人のPKO副司令官は、1994年から1997年にかけて、ルワンダにて、市民、外国人や神父の殺戮や抹殺、資源の搾取に従事し、他のルワンダ政府や軍の幹部39名と共に、スペインの判事によって2008年に起訴されています。

 自国のジェノサイドの際に国際社会が介入しなかった経験を下に、ルワンダは紛争予防と平和に向けて行動しています。そのためルワンダは、インド バングラデシュ パキスタン エチオピアに次いで世界5番目のPKO派遣国で、人口の割合からすると世界最多です。しかしルワンダ人の人権活動家が指摘しているように、殺人者、また性的暴力や資源搾取の責任者が、どのように平和を守ることができるのでしょうか。かつ国連は一体何をしているのでしょう。

 もちろんPKO要員全員がこのような重大な犯罪に関与しているわけではありませんが、我々国民はPKOの背景と現実をもっと知った上で議論を活性化しなければなりません。

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  1. 米川先生のご主張は、①PKOにおいて日本人犠牲者が出た②PKOの軍規は乱れていて問題である③集団的自衛権を論じるとともにPKO活動にも問題があることを周知したい、ということでしょうか。
    今回の安倍政権で、自らが問題としてきたPKO問題も考えるべきであるというご主張は理解できますが、それが集団的自衛権を問題視することに、論点をどのようにつなげられるのでしょうか。むしろ、事実PKOに参加してみたら戦争は悲惨だったというご主張を展開されるほうが、現実味があると思います。

  2. PKO要員による現地女性への性的暴力の現実

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