7月15、16日と、国連自由権規約委員会による日本審査がジュネーブで行われる。この審査で秘密保護法も議論の対象となり、規約に規定されている基本的人権を侵害するものであるかが、問われることになる。
6月20日、藤田早苗・英国エセックス大学人権センター講師に岩上安身がインタビュー。藤田氏は、国際人権法の専門家としての立場から、秘密保護法に疑問を呈しており、昨年以来、秘密保護法成立の動きに対して、国連の人権問題専門家にも働きかけてきた。
インタビュー中、藤田氏は「情報へのアクセスは、人権の『要石』」であると数度にわたり強調。秘密保護法が施行されようとしている日本は、世界的にみても「人権後進国」であることを指摘、強く危機感を訴えた。
また、インタビューの最後には、国連人権理事会で「表現の自由に関する特別報告者」を務めるフランク・ラ・ルー氏のビデオ・メッセージが紹介され、情報へのアクセスの自由は、市民参加を促す民主社会には欠かせない基盤だという言葉を、秘密保護法を注視する日本の市民へ送った。
- 日時 2014年6月20日(金)21:00~
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
世界標準から逸脱する秘密保護法の成立過程
世界銀行やアジア開発銀行といった国際機関で行われる、情報公開や開発活動の改定過程に関わっていた藤田氏は、秘密保護法案が議会を通過するまでの拙速な流れに違和感を感じていた。
これらの国際機関では、パブリックコメントに3ヵ月から6ヵ月の期間をかけ、オープン・ディスカッションも交えながら、最低は2年を費やしながら、改定作業が行われるという。
「一方、秘密保護法は昨年9月に2週間のパブリックコメントで年内の成立を求めていました。また、その内容が、私の知る国際水準からはかけ離れたものでした。それで私は秘密保護法案を英訳し、英国のNGOや国連に送りました」。
藤田氏の訴えに対し、フランク・ラ・ルー特別報告者や、ナビ・ピレイ国連人権高等弁務官といった国連で活動する人権問題の専門家たちが反応を示し、昨年11月から12月にかけ、秘密保護法案の内容および成立過程に対して懸念を相次いで表明したことは、記憶に新しい。
ピレイ氏発言の一部を「切り取り」 安倍総理の「評価を頂いている」答弁
ピレイ氏は12月2日、ジュネーブでの記者会見において、秘密保護法案に関して、何が秘密を規定するのかが明確でないため、結果として、政府にとって都合の悪い情報が秘密とされる可能性があると指摘。「法制化を急ぐべきでない」と発言した。
12月4日、国会では安倍総理に対し、このピレイ氏の発言への回答を求める質問が行われた。
すると安倍総理は、「外務省によると、修正が施され国会がチェックアンドバランスの役割を果たしていることを評価すると、事実上修正をしたということについての評価も頂いている」と答弁し、すでにピレイ氏により秘密保護法案修正を評価する回答を得ていると答えた。
ピレイ氏が本当にそのような評価を与えたのか、疑問を感じた藤田氏は、安倍総理の答弁を英訳し、ピレイ氏へ送付。その後受取った返答からは、ピレイ氏が秘密保護法案修正に対し無条件に「評価」を与えたわけではないことが、明らかとなった。
「ピレイ氏によれば、外務省から電話があり、修正が施されたという説明があったということです。その説明に対しピレイ氏は、修正に対して評価するとは言ったが、今後も修正を含んだ最終版を基に対話を続けたいともおっしゃっている」。
つまり、ピレイ氏が日本政府に発したシグナルは、秘密保護法には問題を感じているのであり、だからこそ今後も対話・議論を続けようというものだ。安倍総理の答弁内容は捏造や歪曲の類いでは必ずしもないが、ピレイ氏の回答の一部だけを切り取っただけのもの、ということになる(※)。
人権の「要石」としての情報アクセス
自由権規約の19条1項には、「すべての者は、干渉されることなく意見をもつ権利を有する」とあり、また同2項には「あらゆる情報を伝え、求め、受取る権利」が定められている。
藤田氏は、「情報への権利が、食料、健康、平和、その他さまざまな権利の、かなめ石だという所以です」と語り、「たとえば、集団的自衛権の行使に関する問題でも、正しい情報が提供されなければ、守れないものも出てくるかもしれない」と続けた。
同じ19条の3項には、「情報へのアクセスに対する制限」が規定されている。ただし、「情報へのアクセスが否定されるときはその理由は明確にかつ狭く定義されるべき」とある。国連の人権専門家が繰り返し秘密保護法に懸念を示すのも、何を秘密にするのかが明確でなく、この原則に合致しないためだ。
さらに、国家安全保障に必要な情報保護と、情報アクセスの自由との兼ね合いに関する国際的なスタンダードであるツワネ原則によれば、情報の公開によって発生する損害と、公益のどちらが大きいかの判断は、「独立機関」に委ねられなくてはならない。
6月20日、「情報監視審査会」の衆参両院への設置を規定する、改正国会法が参議院本会議で可決された。「情報監視審査会」は秘密保護法の運用にあたり、政府による恣意的な秘密指定を監視する機関と位置づけられている。
審査会は常設され、それぞれ8人の国会議員からなるが、その構成は各会派の議席数の比率をそのまま反映したものとなる。そのため、与党寄りの「監視機関」が、秘密指定権限を持つ行政機関の長をチェックすることになる。行政機関の長とは、多くの場合、大臣の役職にある与党議員のことだ。
情報監視審査会に、ツワネ原則で規定されるような独立機関の機能を期待するのが難しいことは、このこと一つをとっても伺える。
藤田氏は、「(情報監視審査会は)多数決により情報公開や、秘密指定への是正勧告を行えることになっていますが、行政・政府に対する強制力はありません。また、内部告発者の保護制度がありません」と制度設計上の問題点を指摘。情報監視審査会が「名ばかり」のものではないかと、疑問を呈した。
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安倍内閣は、国際条約機関からの勧告には法的拘束力がなく、履行義務はないという趣旨で閣議決定済みだそうですね。どういう条約で、こういう勧告を受けているという報道が、少な過ぎるのも一因かと思います。更なる情報発信宜しくお願いします。@IWJ_ch1
人権後進国、人権要注意国の仲間入りという見たくない現実から
目を背ける日本人。孤立していくことさえ認識できないのか。
政治家・官僚の根拠なき万能感・優越意識のなかでの情報の独占
により、不都合なことは知ることさえ許されなくなる秘密法。
そして、メディアの世論誘導、煽動・・・(その内側でうごめく「金目」)
今、まさに民主主義というたなぼたの砂の器が崩されようとしている
ことを思い知らされました。無かったことにしたい過去もまた、
メディアや教育を通して消去してしまい、歴史から学ばず、
過ちを繰り返すのでしょうか?
世界標準から逸脱する秘密保護法の成立過程
7月の国連「自由権規約審査」秘密保護法公式英訳間に合うか?間に合わずば政府不利。藤田氏訳使用の可能性も?イチャモンつけられたら火の粉被り共に戦おう。~両氏とも恰好イイ!
『情報にアクセスする権利の大原則』-自由が原則であり、制限を加えることは例外。制限したい場合はそのメリットデメリットを証明する義務を負う。
開発関係のNGO関係者も秘密保護法を憂えている。国際協力の監視をする中(JICAなどODA資金の使われ方)情報が隠される可能性がある。
日本人国際人権ロビイスト誕生!そして活動費募集!
ツワネ原則作成を牽引の「オープンソサエティ財団」法律顧問サンドラ氏とも繋がり、働きかけ。「肚括らんといかん」。何か痛快!