「歴史修正主義者達は、自分自身の民族観に怯えて虐殺を必死に否定している」~岩上安身による能川元一氏インタビュー 第一部~南京大虐殺 2014.2.28

記事公開日:2014.3.14取材地: テキスト動画独自
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(文・阿部光平、文責・岩上安身)

 NHKの籾井勝人会長が、従軍慰安婦について「戦争をしているどこの国にもあった」と述べ、NHK経営委員の百田尚樹氏は都知事選の田母神候補の応援演説で「南京大虐殺はなかった」などと発言。公共放送であるNHK会長と経営委員が次々と問題発言を繰り返す事態に、NHKの経営委員に自分の「お友達」である百田氏らを押し込んだ安倍総理の任命責任を問う声が、国内外から寄せられている。

 そんな中、膨大な歴史史料を研究し、「歴史修正主義者」の発言の嘘を告発し続ける哲学者・能川元一氏に、岩上安身が単独インタビューを行った。

■一部(南京大虐殺)イントロ

  • 日時 2014年2月28日(金)13:30頃~
  • 場所 サムティフェイム新大阪(大阪市淀川区)

間違いだらけのツイート

 先日の都知事選では他候補を「人間のクズ」と罵倒した百田氏について、能川氏は週刊誌に「NHK経営委員のベストセラー作家の素顔 百田尚樹のドンビキなウヨク度」という記事を掲載。膨大な歴史資料を研究した上で、ここ1年間の百田氏のツイートを読み返して、発言のひとつひとつを論破した。

 能川氏は、まず手始めに「意外に知られていないことだが、南京陥落当時の日本と中国は国際的に戦争状態ではなかった。だから当時の南京には欧米のジャーナリストやカメラマンが多数いた。もし何千人という虐殺が起こったりしたらその虐殺行為は世界に配信されていたはずだ。しかし実際にはそんな記事はどこにもない。」という百田氏のツイートを取り上げ、「よくひとつのツイートの中に、これだけの間違いを詰め込めたなと思います」と厳しく批判した。

百田氏の「嘘」を暴く

 能川氏によれば、このツイートの中には複数の間違いがあるという。

 まず「南京陥落当時の日本と中国は国際的に戦争状態ではなかった。」という部分に対し、能川氏は、日中は宣誓布告をしていなかっただけで、「事変」という形で、実質的には戦争状態にあったことを指摘。さらに、「当時の南京には欧米のジャーナリストやカメラマンが多数いた」というくだりについて、「宣戦布告」をしていようといまいと、実質的な戦争状態で銃弾が飛んでくるような状況は、ジャーナリストにとって危険であることに変わりないと指摘し、宣誓布告なき事変であるということが、多くのジャーナリストが現場にいたはずだとする主張の根拠にはならないと論破した。また、「記事はどこにもない」というのも嘘で、当時、どれだけ南京虐殺について記事が書かれたか、そのリストを掲げてみせた。

 また「実際にはそんな記事はどこにもない。」という箇所については、具体的に『南京事件資料集Ⅰ・Ⅱ』をはじめ、一次史料が数々存在することを示し、百田氏の発言を全面的に否定した。

歴史修正主義者が頻繁に使用する論法

 百田氏の前述のツイートに対し、他のツイッターユーザーから「事件直後にアメリカの新聞に大きく報道されたのを知らないようですね。秦郁彦の『南京事件』くらい読みましょう」との反論が来ると、百田氏は「根拠も証拠もない伝聞記事が載ったのは知っていますが」とリプライを返している。

 能川氏曰く、これは「ゴールポストを引き下げて、ゴールに届いていたはずのボールを、届いていなかったことにしようとする論法」で、歴史修正主義者が頻繁に用いる手口だという。

 最初は「記事がない」としておきながら、数々存在することを指摘されると、「伝聞だけはある」などと言い逃れをして、先行する自分の発言の嘘を認めないのである。

歴史修正主義者達が虐殺を否定するわけ

 ツイッター上で寄せられた「通州事件で被害にあった方々の写真が南京大虐殺の証拠としてでっちあげられたのは有名な話です。犯人は蒋介石国民党軍。遺体を陵辱するなどの行為は支那人特有のものですね」というコメントに対し、百田氏は「そうです!中国人は昔からやります。日本人にはない特性です」と返信している。

 「日本人は残虐なことをしないが、中国人はする」と言わんばかりに、歴史的条件など考慮せず、民族にそれぞれ固有の「本質」があるかのような決めつけもまた、歴史修正主義者がよく用いる手法であり、思考法であるという。「○○人は○○という固有の性質を持っている」という、非歴史的で本質主義的な民族観をもち、自らその観念に縛られているというのだ。

 この考え方には「人間というのは置かれている状況次第で残酷にも、寛容にもなりうる」という観点が抜け落ちている。これについて能川氏は「歴史修正主義者達は、自分自身の民族観に怯えて、虐殺を必死に否定している」と分析。つまり、「過去の虐殺を認めてしまえば、日本人は『野蛮な民族』と認めることになってしまうと考えている」というのだ。そのため必死に過去を美化しようとする。自分たち自身の固定的な民族観のために、自縄自縛になっているのである。

今、日本が見直すべきこと

 同様の硬直した思考様式は、慰安婦問題にも通じている。

(…サポート会員ページにつづく)

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“「歴史修正主義者達は、自分自身の民族観に怯えて虐殺を必死に否定している」~岩上安身による能川元一氏インタビュー 第一部~南京大虐殺” への 2 件のフィードバック

  1. お話の感想と今後の懸念 より:

    熊川さんと岩上さんの対話をうかがい、たくさん学ぶことがありました。作家の百田さんへの理解も得られありがとうございます。さて今後、歴史修正主義者が跳梁跋扈しますと、日本の政治家や将校の話だけでなく、中国や韓国からの保存資料がでてきますと、日本人の古傷をいたく刺激しかねない懸念をもちました。政府および外務省の隣国外交交渉能力の復活を祈念しています。ひとまず今は歴史修正主義が多数を占める悪夢のような国にならぬよう念じる次第です。

  2. ミルキー より:

    アジア侵略戦争について、資源が枯渇した日本の自衛戦争だったという意見を聞くが、侵略戦争であったことは否定しようがない。アジア人二千万にも殺した事実に対して、頭を深く垂れるべきです。戦闘員でない市民、女性や子供を虫けらの如く殺害したことに痛恨の思いを抱かない人はいないだろう。

    南京虐殺で生き残った人の証言を写真とともに耳を傾けてください。
    宮田 幸太郎(freelance) http://www.daysjapan.net/taishou/2013/third02.html

    南京虐殺について、その軍の責任者であった、松井石根陸軍大将が、
    昭和23年12月9日巣鴨拘置所において、戦犯教誨師花山信勝に次の言葉を残した。
    「・・・南京事件ではお恥ずかしい限りです。慰霊祭の直後、私は皆を集めて軍総司令官として泣いて怒った。そのときは朝香宮もおられ、柳川中将も方面軍司令官だったが、せっかく皇威を輝かしたのに、あの兵の暴行によって一挙にしてそれを落としてしまった。ところが、そのことのあとで、みなが笑った。はなはだしいのは、ある師団長のごときは、当たり前ですよ、とさえいった。したがって、私だけでも、こういう結果(死刑)になるということは、当時の軍人たちに一人でも多く、深い反省をあたえるという意味で大変に嬉しい。せっかくこうなったのだから、このまま往生したい、と思っている」
    松井石根は、退役後の1940年(昭和15年)、日支両軍の戦没将兵を「怨親平等」に祀るため、私財を投じてこの地に聖観音を建立した。

    熱海の観音像を見るたびに、南京で亡くなった多くの人のことを考え、心の中で平和を祈りたいと思います。

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