立憲主義を守るために秘密保護法が必要? ~深草徹氏、長谷部東大教授「朝日新聞発言」を批判 2014.2.5

記事公開日:2014.2.5取材地: | テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2014年2月5日、神戸市中央区の神戸市立婦人会館で、自由法曹団、青年法律家協会、明日の自由を守る若手弁護士の会の共催で、公開学習会「特定秘密保護法の廃止に向けて」が開かれた。

 この集会のタイトルから、昨年末にスピード成立した特定秘密保護法の廃止への可能性や、廃止に向けたプロセスへの言及を期待すると、ある種の肩透しを食うことになる。

 講師に招かれた深草徹氏(弁護士)のレクチャーの内容は、「わざわざ秘密保護法など作らなくても、すでに罰則性がある国家公務員法に代表される現行法などによって、国家秘密は十分に保護される」との力説と、秘密保護法がいかに「悪法」であるかを、多面的に議論するもの。後者では、秘密保全の観点から、米国との法律比較を行うことで、日本の秘密保護法の問題部分をあぶり出している点が出色である。

 さらに、昨年の臨時国会で、護憲の立場から「秘密保護法は必要」と述べた、憲法学者の長谷部恭男氏への反論も展開した。

■全編動画(18:28~ 1時間43分)

  • 講師 深草徹弁護士
  • 日時 2014年2月5日(水)
  • 場所 神戸市立婦人会館(兵庫県神戸市)
  • 主催 自由法曹団、青年法律家協会、明日の自由を守る若手弁護士の会

秘密保護法のきっかけはジーソミア。署名者は麻生太郎氏

 講演で、深草氏は、2007年8月に日米間で交わされた「軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)」を紹介している。これは、米国が同盟国と結んでいる、軍事秘密の漏洩防止のための協定。「軍事秘密を巡っては、日本は米国と同等の秘密保護体制を作らねばならない」とするもので、署名者は当時の麻生太郎外相とシェーファー米中日大使である。このジーソミアが、日本の秘密保護法づくりの動機づけになったことは、言うまでもない。

 昨年成立した日本の秘密保護法では、罰則の上限が「懲役10年」であり、これは米国の類似法の水準に合わせたものであることは広く知られている。だが、これについて深草氏は、「日本政府は、米国の秘密保全法制を、きちんと理解しているのか」と疑問を呈している。

長谷部恭男東大教授への反論

 なお、スピーチ終盤で、深草氏は、1月19日の朝日新聞に掲載された、護憲派の法学者として有名な長谷部恭男氏(東京大教授)と、杉田敦氏(法政大教授)との対談に言及した。昨年11月、長谷部氏は自民党側の参考人として、臨時国会で特定秘密保護法に賛成する意見を述べている。長谷部氏による「憲法(立憲主義)を守るために、秘密保護法が必要」との主張への、深草氏の反論は刺激的なものであった。

 「長谷部氏は、自民党の改憲案に反対する重要な論客の1人」とした深草氏は、「彼は、96条改正を狙う安倍政権の暴走を阻止する運動では、大きな役割を果たした」と、長谷部氏の頑張りに敬意を示しつつも、次のように強調している。

 「長谷部氏は、96条改正に反対する際には、立憲主義を根拠にしたが、今度は、その立憲主義の立場から『秘密保護法が必要』としている。私は、これを許せないと思った。われわれにとって、立憲主義は重要なキーワード。それを使って秘密保護法に賛成することに、大いに腹が立ったが、冷静に論駁したい」。

 深草氏は、戦前の明治憲法やフランスの人権宣言などに触れながら、「立憲主義とは、もともと多義的な概念であった」と語り、その上で「長谷部氏の言う立憲主義は、『権力を縛る、国民主権を守る』という意味とは違うのではないか」と断じた。

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