携帯電話の履歴も提出義務に。ポリグラフ検査への協力まで誓わされる 〜「何が秘密?それは秘密」秘密保護法に反対する緊急集会 2013.11.15

記事公開日:2013.11.15取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ 関根/奥松)

 「秘密を指定するのは行政機関の長。秘密の中に、行政を包み込むことができる。2つめは、秘密指定の期間の問題。3つめは、秘密取扱者は地方警察官や民間企業まで含むことだ」と、大江洋一弁護士。山下芳生参議院議員は、すでに自衛隊で行なわれている身上調査書の事例を示して、警鐘を鳴らした。

 2013年11月15日、大阪市中央区のエル・おおさか南館で「11.15『何が秘密?それは秘密』秘密保護法に反対する緊急集会」が行われた。自由法曹団大阪支部支部長で弁護士の伊賀興一氏、大阪弁護士会秘密保全法制対策大阪本部本部長代行の大江洋一氏、参議院議員の山下芳生氏が法案について説明した。また、関西大学法学部教授の吉田栄司氏、大阪弁護士会副会長の西浦克明氏、新聞労連委員長の日比野敏陽氏、民放労連近畿地連の瀬古氏をはじめ、女性団体、脱原発団体、消費者団体、労働組合などが、特定秘密保護法案への反対を表明をした。

■全編動画

  • 情勢報告 法案の審議状況について
  • 解説 法案の問題点について
  • リレートーク 私たちは反対します!

集団的自衛権の合法化のための法案

 冒頭、伊賀興一氏が「この法案は、集団的自衛権の合法化のためにあるのではないか」と述べ、2009年1月の国立国会図書館の調査および立法考査局刊行の『レファレンス』掲載の論文「集団的自衛権の法的政治とその発展、国際法上の議論』を取り上げた。

 「この論文には『現行憲法の下では、集団的自衛権の行使はできない』と記されている。また、ベトナム戦争について、米国務省が『北ベトナムに対する軍事的行動の根拠として、南ベトナム政府からの要請と、国連憲章51条に基づく集団的自衛権、東南アジア集団防衛条約に基づく防衛義務を果たした』と国連で説明したことも書いてある。つまり、日本政府があの時、今の政権のように集団的自衛権を認めていたら、ベトナム戦争に日本の自衛隊が送られていた」。その上で伊賀氏は「現政権は、集団的自衛権は現行憲法でも許されるとし、日本版NSCを設置し、秘密保護法の成立を目指す。この3つで、明らかにこの国を危機の方向に持っていく」と主張した。

秘密の範囲が広くあいまいすぎる

 次に、大江洋一氏が「弁護士会には、いろいろな考え方の弁護士たちがいる。しかし、今回はひとり残らず危機感を抱いている。28年前、スパイ防止法は廃案にできた。再び自民党政権になり、今年9月にこの法案が出てきて、あまりの内容に驚愕した」と述べ、次のように続けた。「まず、秘密を指定するものが、宮内庁まで含めた行政機関の長になっている。つまり、秘密の中に行政を包み込むことができる。2つめは、30年間ごとに更新できる秘密指定の期間の問題。3つめは、秘密取扱者は地方警察官、民間企業まで含むこと」。

 「特定秘密を行政機関の相互間、企業間、さらに外国にも提供できるが、それも行政の判断による。チェック機能がないので自制もない。また、裁判でもインカメラ審議(裁判官だけが、もしくは裁判官室で非公開で審議、または文書を見分する方式)もなく、最終的に行政だけが提出判断できるので、三権分立もない。この法案は、何が何だかわからない」。

 大江氏は「適正検査についても本人以外にも関係が及び、民間人にも適用される。取材に際しては『正当な業務の行為とする』とあっても、決して罰しないとは書いていない。また、報道とは書いていないので、取材はできても報道できるとは限らない。罰則も懲役10年だけだったのが、罰金1000万円まで追加した」と指摘。「あまりにも秘密の範囲が広く、あいまいすぎて修正の余地すらない。情報を探知収拾することを処罰するというのは、きわめて危険。情報にアクセスするという行為は、国民の知る権利そのものだ」と述べた。

 最後に、大江氏は「自民党バリバリの国防族一人ひとりに、この法案についてじっくり話を聞くと、『あれはちょっとね』と疑問を持つ人が意外と多い。政府の対応も見ても、おっかなびっくりなのがひしひしと伝わってくる。法案が通ってしまったら終わり。修正では済まない」と危機感を表明して、絶対阻止を訴えた。

軍事の司令塔を作る日本版NSC設置法案

 法案の審議状況については、参議院議員の山下芳生氏(共産党)が「安倍政権は、12月6日までの臨時国会の中で、消費増税も含め、日本版NSC設置法案、特定秘密保護法案を成立させようとしている」と話し、NSC(国家安全保障局)について説明した。

 「日本版NSCとは、アメリカを真似て、総理大臣、官房長官、外務、防衛大臣だけで各省庁の情報を集め、軍事の司令塔を作る組織だ。特定秘密保護法案は、国民の口と声と耳をふさぐ悪法だが、国防軍創設と集団的自衛権の行使のためには必要だからだ」。

 山下氏は「特定秘密の範囲が無制限に広がること。また、防衛、外交、特定有害活動およびテロリズムの防止の、4分野23項目に限ると言っているが、法案では『それに関する情報』として、どんなことでも秘密指定にできる」と問題点を指摘。さらに、「何が秘密か、それも秘密だ。たまたま情報を求めようとして、それが特定秘密だったら処罰されてしまう。未遂や過失であっても、共謀、教唆、煽動、そそのかしで処罰される。結果、言論の表現、知ることの権利が剥奪される」と危惧した。

携帯電話の履歴提供やウソ発見器も。身上調査の驚愕の内容

 山下氏は、秘密保護法に盛り込まれる適正評価制度に触れ、共産党の赤嶺政賢衆議院議員が入手した、自衛隊で行なわれている身上調査書の内容を先行事例として披露した。

 「本人情報のみならず、本人の父母、父の父、父の母、母の父、母の母、兄弟姉妹とその配偶者、子、その子の配偶者。妻も同様。また交友関係にも至り、友人と会う頻度、交際中の異性も書かされる。かつ、記入に際しては、当該者に確認してはならない、と但し書きがある」。さらに「この身上書の前に誓約書を書かせられる。そこには『求められた場合、携帯電話、通話記録など自己に関する個人情報を提出するほか、ポリグラフ検査などに協力することを誓う』とある。秘密保護法の下では、公務員や民間企業にまで同様の調査が行なわれる」と話した。

軍需産業の要求で6年前から進められていた法案

 山下氏は「先進国の中で、日本ほど秘密が多い国はない。今まで、日米安保条約での密約、核兵器持ち込み、沖縄返還時の地位協定密約など、国民に知られたくない恥ずかしいことを、ひたすら密約にしてきた」と述べ、「もともと、この法案は、アメリカと財界や軍需産業からの要求だった。2007年8月に日米軍事同盟を強化するため、軍事情報包括協定(GSOMIA)が締結されている」と振り返った。

 「その際、経団連の防衛生産委員会は『GSOMIAが、日本の防衛産業の大きな追い風となる』と明言している。日本の死の商人たちが儲け口を増やすために、この法案成立を狙っている」として、断固廃案を訴えた。

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