「これは、行政官僚が仕掛けた罠である。法案に賛成した政治家たちは、内容を理解しているのか」──。
2013年11月29日、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で「11・29 秘密保護法を考える緊急学習会『原発問題と特定秘密保護法』」が開かれ、「憲法9条京都の会」事務局長の小笠原伸児弁護士が講演を行った。小笠原氏は「特定秘密保護法案は、非民主的な法律」と切り捨てた。
(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)
特集 秘密保護法
「これは、行政官僚が仕掛けた罠である。法案に賛成した政治家たちは、内容を理解しているのか」──。
2013年11月29日、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で「11・29 秘密保護法を考える緊急学習会『原発問題と特定秘密保護法』」が開かれ、「憲法9条京都の会」事務局長の小笠原伸児弁護士が講演を行った。小笠原氏は「特定秘密保護法案は、非民主的な法律」と切り捨てた。
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小笠原伸児氏は「政府は『特定秘密保護法』という。しかし、新聞の社説論説では『秘密保護法』と多数が書いている。このように書いている新聞の社説は、ある意味で本質を突いている。秘密保護というのは、政府にとって不都合な秘密を、国民から隠すことなのである」と話を切り出した。
法案の概要について、「一定の情報を、行政機関の長は特定秘密に指定する。そして、指定された特定秘密について、それを保有したり、取り扱う人間に誓約をさせていく。同時に、特定秘密を漏洩、あるいは取得しようとすると、重罰が課される内容である」と説明した。
「この法案には、アメリカとの軍事一体化が裏にある」という小笠原氏は、「80年代以降、この法制度はずっと追求されてきて、民主党政権時代には、秘密保全法制として法案化されようとした。そして、第2次安倍内閣で、秘密保護法という形で国会に提出され、11月26日に衆院を通過した。与党は、12月5日に参院の特別委員会で強行採決をして、6日の会期末までに、参院本会議での強行採決をする狙いだ」と、法案が成立直前まできていることを示唆した。
小笠原氏は「11月25日に開かれた、福島での地方公聴会は、法案の重要な手続きである」とし、「この公聴会で、明確に廃案を言明したのは2人。反対だと言った人が4名いた。慎重に審議を、と言ったのは1名。そういう意味では、福島の7人すべてが、この法案に懸念を表明したことになる。ところが与党は、この意見にまったく耳を貸さず、福島の人たちの声を法案に反映させることなく、次の日に強行採決した」と憤った。
そして、「原発事故後、大変な思いをしている福島の人たちの意見を、まったく聞かずに強行採決をしたことは、許すことができない。手続きとしても、極めて問題である」と断じ、安倍政権の強引な手法を批判するとともに、「安倍首相が嫌う、『強行採決を許さない』という声を上げていくことが重要」と主張した。
特定秘密保護法案に関して、小笠原氏は「この国の政治のあり方を、最終的に決定するのは主権者国民である、という原理原則に反する内容だ。この国のあり方に、重大な影響、特に悪い影響を与える法案、と言わなければならない。国民主権、民主主義のあり方そのものを覆す中身である」と強い危機感を表した。
法案の内容では、まず、テロリズムの定義に関して、「12条は、『政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人にこれを強要する行為。もうひとつは、社会に不安を与える目的で人を殺傷する活動。重要な施設、その他の施設を損壊するための活動』となっている。たとえば、『今のエネルギー政策は変えていくべきだ。みんなで声を上げよう』と周りに訴えたとする。これを公安警察が『自分の主義主張を他人に強要した』と判断すれば、違法になる。安倍首相は、そういうことは言わないが、実は、ありとあらゆる政治活動が、同法案の規定ではテロにできる」と指摘。定義の権限を、恣意的に行使できる規定の仕方に問題がある、との認識を示した。
さらに、「特定秘密を取り扱う担当者が、秘密を漏らすか、漏らさないかの適性を評価する仕組みがある。政府は『本人の同意が必要』というが、特定秘密に関わる人は、公務員や民間事業者でも一定の立場にあると考えられる。彼らの人事評価や出世を考えると、本当の意味での同意はあるのだろうか」と疑問を投げかけた。
続けて、「特定秘密を担当した公務員あるいは民間の労働者には、公安警察による、適性評価のための調査がずっと行われる。その範囲は、家族や友人にも及ぶ。これは、日常的に警察がこっそりと個人情報を収集していく社会につながる。秘密警察、秘密情報機関を生み出す恐れがある」とし、適性評価制度による著しいプライバシー侵害の危険性を指摘した。
「この法案の本質は、官僚による情報統制だ」とする小笠原氏は、「スパイ防止、テロ防止という警備警察情報は、公安調査庁あるいは警察庁長官の管轄である。彼らは政治家ではなく、行政官僚。ここにすべて、警察情報が集中していくことになる」と話す。
「そこから、内閣に情報が提供されるか、どうか。法では、提供しなければならない規定はない。内閣が、情報をコントロールできない仕組みになっていることが疑われる。たとえ法務大臣でも、公安調査庁長官や警察庁長官から特定秘密を聞き出すことは、法の理屈上できない。これは、行政官僚が仕掛けた罠である」と断じ、「法案に賛成した政治家たちは、内容を理解しているのか」と疑問を呈した。
さらに、「原発に関する情報が、特定秘密に該当するのかどうか。これまで、自民党は『該当しない』としてきたが、衆議院の特別委員会で変わってきた。原発の警備情報は『テロ防止の観点から特定秘密にあたる』と言い始めた。そうすると、条文を読む限り、重要な施設である原発の破壊行為を防止するために、原発の設計や脆弱性を特定秘密と指定する可能性がある。原発の設計に関わった研究者、民間業者が適性評価の対象になる」と述べた。「したがって、『原発に関する情報は、特定秘密にあたらない』というのは明らかな誤りとなり、原発に関する情報を得ようとする行為は犯罪行為になってしまう」と述べて、今後の市民運動に支障が出てくる可能性を指摘し、次のように語った。
「原発反対の集会を、原発の近くで行う時に、原発施設を損壊するつもりはまったくなくても、『損壊する恐れがある』と決め付けられたら『テロ』になる。公安警察は、その市民活動の実態を情報収集していく。これにより、活動は常に公安警察の監視下に置かれる。しかも、個人情報が集積されていくことになる。さらに、『原発の安全性に関する情報を収集したい』と、仲間で話をしただけで『謀議』。公安警察が尾行し、取り調べを行い、逮捕し、被疑者扱いすることも。これは杞憂ではない」。
最後に、小笠原氏は「かつて、この国の権力者は、そういう弾圧事件をたくさん起こしてきた。市民運動を潰すために、弾圧を行ってきた歴史がある。だから、この法律は、戦時国際法を源流としていると言える。戦争をする国づくり、という面だけではなくて、公安警察の情報収集の権限や、国民監視の権限を強化する中身になっている。この法案を許してはいけない」と訴えた。
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kouitirou toyosima