「主権者を侮辱する権力者に、明日はない。選挙を通じて断罪することが必要だ」──。
2013年12月20日、京都市下京区のキャンパスプラザ京都において、「12・20 緊急学習&討論会『秘密保護法廃止に向けて何ができるのか?』」が行われた。自由法曹団に所属し、憲法9条京都の会の事務局長を務める小笠原伸児弁護士が、特定秘密保護法の危険性を解説し、市民一人ひとりが、これからどうしていくべきかについて、提案した。
(IWJテキストスタッフ・阿部玲/奥松)
特集 秘密保護法
「主権者を侮辱する権力者に、明日はない。選挙を通じて断罪することが必要だ」──。
2013年12月20日、京都市下京区のキャンパスプラザ京都において、「12・20 緊急学習&討論会『秘密保護法廃止に向けて何ができるのか?』」が行われた。自由法曹団に所属し、憲法9条京都の会の事務局長を務める小笠原伸児弁護士が、特定秘密保護法の危険性を解説し、市民一人ひとりが、これからどうしていくべきかについて、提案した。
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12月6日に特定秘密保護法が強行採決されたことを受け、この日、緊急学習会及び討論会が開かれた。冒頭で小笠原氏は、「成立してしまった今後、どうして行くべきか? 私が考えていることを皆さんに伝え、共に手をつないで行きたい」と、今回の趣旨を伝えた。
小笠原氏は、国家安全保障会議設置法と秘密保護法は「9条明文改憲のための一里塚」であり、2014年の通常国会提出が予想される国家安全保障基本法は、「本格的に軍隊を持ち、世界のあらゆる所で、アメリカと一緒に軍事行動を行う体制の第一歩だ」という。
まず、「12月18日に開かれた、第1回日本アカデメイア・フォーラムでの中間報告書には、『どうやって、この国の政治を簡単に決めることができるのか? どうすれば、この国の方向性について適切に迅速に決定できるか? そのためには、どうやって、政府民間の情報交換をすればよいのか?』との趣旨が書かれている。神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏は、『政権与党は、強行採決を通じて、何をしても大丈夫だ、という経験を積んだ。法律ができたことも重要だが、より重大なのは、決められる政治の強さを自覚した、ということ』と語った」と、各方面の動き、見方を紹介した。
その上で、「安倍首相が言うように、秘密保護法は国家安全保障会議と一体であり、それは、すでに起動している。おそらく、1年も待たずに施行させるだろう」と述べ、政府の強引な決め方とスピードに、強い不快感と懸念を示した。
秘密保護法の危険性については、「一定の情報を、特定秘密に指定する作業には、国会を含めて関与できない仕組みになっている。外交や防衛に関しては、形式的には大臣かもしれないが、法案作成の中心になった町村信孝氏にしても、磯崎陽輔氏にしても、現実にひとつひとつをチェックするのは無理だと認めている。現実には、防衛省や外務省のトップ、行政官僚らがメモを作り、大臣に進言し、右から左に指定されていく。警備、公安情報に関しては、警察庁長官、公安調査庁長官が指定し、国会にも、国民にも秘密にされていく」と、国民の代表である国会議員ではなく、官僚主導となることを指摘した。
さらに、「石破幹事長は『国会法を改正して、国会がチェックできるようにすればいい』と発言したが、国会が、秘密を取得する方法はひとつしかない。行政機関の長が『提供』した場合のみ。行政機関が、不都合があると判断すれば、提供しなくてよい。法の根幹を変えなければ、そもそも、提供されないものを、第三者がチェックするのは不可能」と、チェック体制の不備を挙げた。
秘密保護法の原型として「秘密保全法制」が民主党時代から提案されていたが、小笠原氏は「大きく違うのは、治安、警備情報が、非常に強化されている点」だと言う。「外国の利益を図ろうとしていると判断すれば、公安警察は、市民運動に対しても、テロと判断できる規定となっている。石破発言( 「単なる絶叫戦術は、テロ行為と本質においてあまり変わらない」)は、この条文を素直に読むと、わからなくはない」と、秘密保護法の市民運動への関与を懸念し、これを「この法律の、2つ目の毒素」と表現した。
「これに対し、法曹界の人間からは『憲法の方が上位なのだから、秘密保護法は憲法違反。逮捕されたとしても、そんな逮捕は無効だと言って、戦おう』という声もある。政府の答弁をしっかり分析し、『こういう発言をしたのだから、こう解釈すべきだ』という武器にする」と述べ、今後は、同法の廃案に向けて動いていく姿勢を表明した。
また、「小選挙区制の問題があるとはいえ、安倍内閣を誕生させたのは、まぎれもなく、この国の主権者。第1次安倍政権の時も、強行採決の連続で、結果、短命に終わった。主権者を侮辱する権力者に、明日はない。選挙を通じて断罪することが必要だ」と述べた。
そして、「年明けからの沖縄の名護市長選挙や、東京都知事選挙で、どういう結果を出すかは非常に大事だ」と、政治と議会の民主化を求める運動の重要性を訴え、具体的には「市民運動と、現にいる国会議員とのパイプを強め、監視をしていく」ことを提言した。
小笠原氏は「自民党は『秘密保護法に関する記事が公正でない』として、朝日、毎日、東京新聞の各紙を名指しで批判した。権力を持った巨大与党が、マスコミに圧力をかけている。われわれは、そういう報道機関を支援すべき。具体的には、読者投稿欄にたくさん意見を寄せることで、記者たちを励ますことができる。署名、ツイッター、ブログ、フェイスブック、あらゆる手段で個人発信すること」と、ひとりでもできる取り組みを示した。
さらに、「フォト・ジャーナリストの広河隆一氏は、『政府にとって都合が悪くても、人の生きる権利に資することであれば、秘密を暴いてでも伝えるのが自分の役割。国益に反すると非難されても、権力に抵抗してでも、真実を伝えていきたい』と語った。こういうジャーナリストたちを、支援していくことも大事だ」と語った。
また、大勢でできることとしては、「中央の取り組みに連携すること。たとえば、1月24日と言われている、通常国会の開会初日に合わせ、昼と夕方に国会の包囲行動がある。これに動きを合わせて、京都など、地方でもアクションを起こす。監視社会に危機感を強める創価学会の人が、公明党への要望書を募ったが、そういう動きも応援する」などと提案した。