「安倍政権がいかにファシストであるかを明らかにした墓穴」有識者らが徹底批判 ~ものが言えない社会『秘密社会』は何をもたらすか-戦前・戦後のメディアと秘密保護法 2013.12.7

記事公開日:2013.12.7取材地: テキスト動画
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(IWJ・鈴木美優)

 市民の必死な抗議活動が続く中、6日夜、参議院本会議で特定秘密保護法案が可決された。日本ジャーナリスト会議(以下、JCJ)は、「ものが言えない社会『秘密社会』は何をもたらすか-戦前・戦後のメディアと秘密保護法」のテーマのもとに集会を開き、会場には110人を超える市民らが集まった。集会には、早稲田大学の大日方純夫教授、元日本経済新聞記者で立命館大学・関東学院大学の松田浩教授、明治学院大学の吉原功名誉教授らが参加し、言論・表現の自由と戦争の関わりについて意見を述べ合った。

■ハイライト

  • 報告 大日方純夫氏(早稲田大学教授、日本近代史専攻、日中韓3国の研究者による共同研究の日本側代表)「日本はどう戦争に突入したのか─言語表現の自由を中心に」
  • 報告 松田浩氏(日本経済新聞記者から立命館大学教授、関東学院大学教授など)「戦争の反省と戦後のメディア─平和と人権の思想はどう反映されたか」
  • 鼎談 大日方純夫氏 / 松田浩氏 / 司会:吉原功氏(明治学院大学名誉教授)「歴史から学ぶということ」

戦争と国家機密はワンセット

 大日方純夫教授は、「教育の統制、メディアに対する規制が、歴史認識を害する大きな要因だ」と指摘。「身近な人が戦争体験者でなくなってきている今、教育やメディアによる戦争認識の橋渡しは非常に重要だ」と付け加え、歴史認識における教育とメディアの持つ責任の重さを訴えた。

 軍機保護法の再改定、国防保安法の公布などを経て、開戦したアジア太平洋戦争。開戦日である1941年12月8日には、外謀容疑者の一斉検挙が行われ、翌日9日には「非常措置」の実施で合計216人が検挙された。大日方教授は「戦争開始とともに規制が行われた。戦争は国家機密とワンセットだ」と述べ、特定秘密保護法の裏にあるのは、戦争の開始だと懸念を表した。

 戦争と国家機密は、どう変わってきたのか。日清戦争後には軍機保護法と要塞地帯法が、日露戦争後には、外患罪や間謀罪などを定めた刑法、さらに陸軍刑法や海軍刑法も制定された。日中全面戦争勃発後には、軍機保護法の再改定がなされ、軍用資源秘密保護法や、国防保安法なども成立した。

 「明治以来、秘密保護法制は戦争の度ごとに、あるいは戦後に戦争の経験により、あるいは戦前に戦争に備えて、拡大強化が図られてきた。そして、1941年にそれが完成の域に達したときに、この国はみずから選んで破壊的な太平洋戦争に突入したのであった」。大日方教授は、上田誠吉著の『戦争と国家秘密法』からこの二文を引用し、「日本はまさに今、戦争に備えて秘密保護法の拡大をしようとしている」と強調した。

 大日方教授は、「戦争国家」における言語表現の自由を、歴史背景と照らし合わせながら解説。日中戦争前、日本はヨーロッパをモデルとし、徴兵制や富国強兵路線を走りだした。また、近隣諸国への侵略や盗聴を始め、脱亜あるいは「奪亜」の路線を進みだした。そして、「天皇の軍隊」による対外戦争が始まり、台湾出兵から満州事変、アジア太平洋戦争まで、軍備の拡張と国家の膨張を続けた。

 「戦争はいつも『正しい』、『文明のため』と言われるが、このような言葉のマジックによる騙しがいつもつきまとっているだけだ」と大日方教授は述べ、戦争を煽ってきたメディアの責任を訴える。「戦争の終わりは、次の戦争の始まりでもある」。大日方教授はそう続け、太平洋戦争における敗戦から、秘密保護法制定までの流れは、次の戦争の始まりを意味すると警鐘を鳴らした。

「日本のメディアは自主規制している」

 戦争中、日本のメディアは規制と自主規制、迎合と翼賛、扇動と煽情の中にあったが、戦後、それらの規制は解かれたはずだと大日方教授は述べた上で、「今は自主規制、言論抑制しているように見える。昨日秘密保護法が可決されたが、では半年前はどうだったか」とメディアが先見性に欠けていることを指摘。「メディアはもっと先を見ることが必要だ」とつけ加え、メディアが自身の位置を再確認すべきとの考えを示した。

 「憲法を次々と空洞化していく中で、秘密保護法は生まれた」と主張したのは、松田浩教授。「憲法をいかに壊そうとする政府と、民主化しようとする国民の闘いが繰り広げられている」と述べ、メディアがどうかかわっていくかが重要な問題だと指摘した。

 太平洋戦争下で、国民に「日本は負けるはずがない」との考えを植え付けていたのが治安維持法による言論統制であると松田教授は指摘。さらに松田教授は、メディアが国民を思想動員したと加え、真実を伝えなかったメディアに対する怒りをあらわにした。「日本の民主化のために、先頭に立って闘う新聞社が必要だ」と訴え、従業員が立ち上がって戦争を反対することこそが、新聞の原点なのではと声を上げた。

秘密保護法可決までの一連は「安倍政権の墓穴」

 「政府がメディアにタッチできない仕組みをつくるべき」と松田教授は述べ、現在でもメディアが政府がタッチしているのは、先進国で日本とロシアくらいだと指摘。「日本国憲法で表現の自由が保障されているのに、なぜメディアは闘わないのか」と主張し、メディアが社会的責任を感じていないことを問題視した。また、戦後の国民の思想にも問題があるとし、メディアが市民を育ててこなかったことが、原因の一つだと語った。

 6日に秘密保護法案が可決されたことについても、「この一連は、安倍政権がいかにファシストであるかを明らかにした墓穴だ」と松田教授は訴える。「憲法があるから言論の自由があるわけではない、言論の自由があるから憲法を守れる」と語り、同法に対して一人一人がどう関わるかが今後の論点だと主張した。

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