「がれき広域処理は復興予算の流用」 ~青山貞一氏北九州講演会――がれき終了は終わりではない!放射性廃棄物はどうなる!? 2013.8.25

記事公開日:2013.8.26取材地: テキスト動画
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(取材・記事:こうのみなと、記事構成:佐々木隼也)

 北九州市、大阪市に続き、8月9日には富山県でも、東日本大震災で発生したがれきの広域処理が終了した。総量はいずれの地域でも、総量をはるかに下回る搬入量で、富山県では当初の予定の10分の1程度となった。あらためて、1兆円もの復興予算を充てて行われた広域処理そのものの正当性が、疑問視されている。

 8月25日、東京都市大学名誉教授・環境総合研究所顧問である青山貞一氏による講演会「がれき終了は終わりではない!放射性廃棄物はどうなる!?」が北九州市で行われた。青山氏は「がれき広域処理は詐欺まがいの復興交付金の流用があった」と指摘する。

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  • 講演 青山貞一(あおやま・ていいち)氏(環境総合研究所顧問、東京都市大学名誉教授)「廃棄物とどうつき合っていくべきか?」
  • 報告 バスターズの活動から

日本は世界一の焼却炉大国

 青山氏は「日本は、何でも燃やして埋める、ゴミ焼却・埋め立て主義」と指摘し、世界の中の焼却炉の9割は日本に存在し、巨額の税金、公金が浪費されているとした。日本メーカーが台湾で焼却炉を建設すると、1500万円/トンくらいが、相場であるが、それと同等のものを日本で製造すると約5000万/トンといきなりコストが跳ね上がるという。

 青山氏は、廃棄物行政に関しても、日本では、「政」「官」「業」「学」「報」のペンタゴンが形成され既得権益を拡大させていると批判する。

使いきれないほどついた震災がれきの処理予算

 震災がれきを処理するにあたり、平成23~25年度にかけてついた国の補助金・交付金は、総額1兆2300億円にものぼる。国は、質的には産業廃棄物であるがれきを一般廃棄物と位置づけ、補助金を出して、自治体が処理するという方式を「がれき特措法」によって制度化し、広域処理を合法化した。

 宮城県と岩手県では、仮設の焼却炉など、震災がれきの現地処理が大手ゼネコンに一括発注されることになった。区域分けされた8ブロック全てで、震災がれきの総量の精査が行われる前に入札がなされた、総額4920億円にのぼる巨額事業である。

 この事業は、青山氏ら環境総合研究所の調査により、参考業務価格に対して発注額は全て84%という、談合としか言いようがない形で落札されたことが判明した。

広域処理を口実に、全国の自治体にばら撒かれた「循環型社会形成推進交付金」

 震災がれきの推計量が当初の予想よりも大幅に減り、明らかに現地での処理で十分と判明しても、環境省や北九州市など一部地方自治体は、一向に「広域処理は必要」という強弁を止めなかった。

 その裏には、詐欺まがいの復興交付金の流用があった。環境省が平成24年3月15日付けで全国自治体へ送付した通達「循環型社会形成推進交付金復旧・復興枠の交付方針について」を見ると、各自治体で検討の結果「災害廃棄物を受け入れることが出来なかった場合であっても、交付金の返還の必要はない」との記載がある。つまり、検討しただけで復興交付金枠での補助金が手に入る、という前代未聞のやり方で広域処理を推し進めようとしていたことが露見した。

 これは、本来の循環型社会形成推進交付金の予算枠では廃棄物処理施設に対して、最大 1/2 までしか国の補助が得られないものも、復興交付金枠を使うことにより100%国が面倒を見るということを意味していた。

 まさに、札束で全国の地方自治体の頬を叩くやり方であり、受入検討を偽装して補助金を得るという詐欺まがいを環境省が主導していたことに国民の批判が高まるのは当然である。この方法で交付金を得た自治体(団体)は、2013年3月末現在で、78団体・総額238億円にのぼることが判明している。

「北九州市は、昔から環境省(旧環境庁)の子飼い」

 青山氏は、広域処理を断れず、全国でもいち早くがれきを受け入れた北九州市について、「昔から、環境省(旧環境庁)の子飼いだった」と指摘した。環境省と北九州市とでは、昔から人事交流も盛んに行われており、環境省の意向に全く逆らえない全国でも数少ない自治体だったと言える。

 また、民主党の国会議員として、衆議院環境委員長も務めていた北橋健治・北九州市長について、青山氏は、「国会の環境委員会に私は参考人招致で呼ばれ、北橋さんとは何度も話をしているが、まさか地元で市長になり、こんな酷いことをする人だとはその時は思わなかった」と、北橋市長への強い失望の念を語った。

森の防潮堤プロジェクトを邪魔する環境省

 宮脇昭教授らが提唱している森の防潮堤プロジェクトや、新たに建設が進められようとしているコンクリートの防潮堤について、青山氏は、「環境省がヒ素がたまるなどの理由をつけて、宮脇昭案(森の防潮堤案)をボツにしている。岩手県釜石市の1200億円もかけた世界一のコンクリートの防潮堤は、今回の大震災で無茶苦茶に壊れた。この防潮堤があった為に、現地の住民の慢心が起こり、逆に被害を拡大させた」と語った。

 広域処理と同じく、巨大津波から住民を守る防潮堤についても、大手ゼネコン主導のもと、費用対効果の疑わしいコンクリートの防潮堤建設計画が東北では強引に推し進められている。

高濃度の放射性物質は、福島県の避難地域へ

 「高濃度に放射性物質が濃縮されたの焼却灰などを、今後、どこで処分すべきか?福島県の避難地域で処分するのが現実的ではないか?」とのIWJの質問に、青山氏は、「基本的にはその考え方と同じ」との見解を示した。「放射性物質は、なるべくエントロピー(放射能)の高い場所に集めて処分する方が得策である。」とし、「福島第一原発から10キロ圏内を除染して、再び帰れますよというのは現実的でない。国の役割としては、手厚い補償のもと、安全な地域に移住させるという方法とるべきではないか?セメント工場の溶融炉で高濃度に汚染された放射能に汚染された焼却灰が固化され、震災がれきと同じく全国の処分場に拡散することがあってはならない」と語った。

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