ACTA、その先にあるTPPでネットの自由が奪われる ~岩上安身によるインタビュー 第243回 ゲスト 福井健策弁護士 岩上安身のインタビューで警鐘「米国の狙いは知的財産の支配」 2012.9.13

記事公開日:2012.9.13取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・富田)

特集 TPP問題

 2012年9月6日、衆議院本会議で、知的財産権の保護強化を目指す国際条約「ACTA」を批准することが、賛成多数で可決された。ACTAには、著作権侵害をの非親告罪化など、言論の自由を縛るとの懸念がインターネット上でわき上がっており、同年7月にはEUの欧州議会がACTAの批准を否決した。

 現在、批准国は日本だけである。なぜ、日本だけがここまで前のめりにACTAを進めようとしているのか。専門家のあいだでは、TPPによる知財強化の「地ならし」として、ACTAを通して国内の法整備を先に進めようとする思惑があるのではないか、との指摘があがっている。

 9月13日(木)、知的財産の専門家である福井健策弁護士に、岩上安身がインタビュー。ACTAを進める米国の狙いと、その先にあるTPPの危険性について、詳しく聞いた。

■ハイライト

ロンドン五輪の陰でひっそりと批准

 国民的関心事になって久しい印象の「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」。農産品をめぐる関税の問題をテーマに、その議論が熱を帯びがちだが、米国がTPPで日本に強いようとしているのは「非課税障壁の撤廃」であり、そこに著作権・特許などに関する「知財」という項目が含まれることは意外と知られていない。

 実はこの8月6日、日本国民の視線がロンドン五輪に集中する中、国会はひっそりと、ある国際条約の批准を、世界で初めて行った。その名は「偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)」。TPPの「マイルド版」とも言えるもので、著作権の侵害に相当する海賊コンテンツの拡散を防ぐものだが、欧州はこれに「NO」を言っている。

 欧州の、この一件が持つ意味は大きいと話すのは、著作権法を専門とし、民主党の勉強会「TPPを慎重に考える会」にも講師として招かれている弁護士の福井健策氏。岩上安身は9月13日、福井氏を、彼が代表パートナーを務める骨董通り法律事務所(東京・港区)に訪ねて、インタビューを行った。

ハリウッド vs シリコンバレー

 福井氏は言う。「ACTAは以前から欧州で反発が強く、それを受けて中身の法的拘束力がだいぶ薄まった。その結果、(ハリウッドの映画会社など)権利者側はACTAの効力を疑うようになり、そんなに緩い協定であれば欧州は最終的に受けるだろう、との見方が米国側に広がった。だが、実際は違った」。欧州議会は7月に同条約を否決している。

 構図はこうだ。米国議会に、そのACTAと同種の法案(SOPA、PIPA)が登場したのだが、今年の初め、グーグル、ツイッター、フェイスブックなど7000超とされる米ネット企業がこれに猛反発。ネットに「検閲」が持ち込まれることを嫌ったのだ。

 「いわば、ハリウッド(旧知財産業)とシリコンバレー(新同)の対立であり、その対立の火種が欧州に飛び火した」と福井氏。「ACTAは海賊版を取り締まるが、ネットの自由も奪う」との見方が欧州に台頭したということで、ことはACTA反対を叫ぶ市民デモにまでエスカレートしていった──。

 「ネット社会の自由と、著作権の間に親和性を求めることは難しい」とする福井氏は、こう主張する。「知財で稼いでいる人は、世界全体でもひと握り。ACTAに反対した欧州の人たちの、『知財戦略の強化は、そのひと握りの人たちを潤すだけで、自分たちはネット社会の自由を失う』との立場は、至って今日的だ」。

知財黒字国に有利な協定

 ではなぜ、時代錯誤とさえ言える旧知財産業に有利な戦略を、米国はTPPで推し進めようとしているのか。福井氏が説明する。「知財は、自動車や農作物を上回る外貨を米国にもたらしている。知財が、米国がTPPでもっとも重視する分野となるのも当然だ」。

 岩上安身が補足する。「日本はアニメやゲームの大国だから、米国流の知財戦略は日本にも利益をもたらすといった声が、麻生政権以降、官僚などからも聞かれたが、これは大きな間違い。福井さんの著書『「ネットの自由」vs. 著作権』(光文社新書)にもある通り、日本はコンテンツ貿易では決して黒字ではない」。

 日本のコンテンツ産業には、米国のミッキーマウスやスーパーマンに匹敵する、著作権保護期間の延長で妙味を得る作品はない、と言明する福井氏。「ネット社会の自由」をどこまで国益としてとらえればいいか──。随所で、この問題提起がなされるインタビューとなった。

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「ACTA、その先にあるTPPでネットの自由が奪われる ~岩上安身によるインタビュー 第243回 ゲスト 福井健策弁護士 岩上安身のインタビューで警鐘「米国の狙いは知的財産の支配」」への1件のフィードバック

  1. 55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    2012/09/13 ACTA、その先にあるTPPでネットの自由が奪われる ~福井健策弁護士が岩上安身のインタビューで警鐘「米国の狙いは知的財産の支配」 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/97792 … @iwakamiyasumi
    二年前から危険性を指摘されていたのに歯痒いなあ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/517601030880514048

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