【IWJブログ:「誰のためのTPP協定交渉なのか」政府の情報公開の姿勢に疑問の声相次ぐ ~TPP政府対策本部が経団連、JA全中、NHKなど128の業界団体向けに説明会を開催】 2013.6.17

記事公開日:2013.6.18取材地: テキスト動画
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(取材協力:野村佳男、佐々木隼也・文責:岩上安身)

 「一体、誰のためのTPP協定交渉なのか」。

 6月17日、内閣府でTPP政府対策本部による、「TPP協定交渉に係る意見提出等のための業界団体等への説明会」が行われた。呼びかけで参加した128団体に対し、政府のTPP交渉の参考とすることを目的として、7月17日を期限に各業界団体の意見・要望を募った。

 当初はマスコミ非公開で行われる予定だったが、共産党やみどりの風、自民党の国会議員らの働きかけにより、急遽マスコミフルオープンとなった。説明会は午前と午後の2回ずつ行われたが、いずれの回でも業界団体からは政府のTPP交渉に対する姿勢に、疑問を投げかける声が目立った。

 大手メディアも大勢詰めかけ、ほとんどの新聞・テレビがこの説明会について報じている。しかし、政府と業界団体とのやり取りを詳細に紹介しているところは、日本農業新聞と東京新聞以外には見当たらない。このやり取りは非常に重要で、かつ現状の産業界と官僚たちのTPP交渉に対する「空気感」を映し出している。本ブログでは以下、午前と午後の部両方の詳細なやり取りを紹介していきたい。

 その影響をいち早く、ダイレクトに被る業界団体の、TPPに対するスタンスは、これまであまり表に出てくることはなかった。この説明会では、そうした業界団体の間にも、TPPへの不信がじわじわと広がりつつある様子が見て取れる。

記事目次

■ハイライト

※撮影は冒頭の挨拶のみ許可された。動画は午後の部の冒頭挨拶と、各担当者の紹介部分。担当者は内閣官房参事官の石井喜三郎氏、広報企画官の中川周氏、内閣官房参事官の高橋氏、農水省国際部国際交渉官で獣医師の郷達也氏、外務省経済連携課室長の別所健一氏、財務省関税局関税地域協力室長の小平氏、経産省経済連携課課長補佐の猪俣明彦氏の計7名。

 冒頭、内閣官房TPP政府対策本部内閣審議官の石井喜三郎氏から、今回の説明会の趣旨として、「今後日本政府がTPP交渉に参加するに当たり、政府の交渉の参考とすることを目的として、各団体からの意見・要望・情報等を収集したい」との説明があった。

 その後、広報企画官の中川周氏による政府の経済連携戦略やTPPの概要などについて、およそ1時間にわたって説明がなされた。最後の質疑応答に残された時間は、午前の部でわずか15分程度、午後の部で30分程度だった。

▲TPP対策本部広報企画官の中川周氏(左)と、内閣官房参事官の石井喜三郎氏(右)

TPP対策本部広報企画官の中川周氏(左)と、内閣官房参事官の石井喜三郎氏(右)

【説明会で配られた政府説明資料】

 説明会に参加したのは、「TPP交渉への早期参加」を訴え続けてきた経団連や経済同友会、日本商工会議所などの推進派や、「一貫して反対」を表明してきたJA全中なども含め、その他NHKや、日本自動車工業会、日本新聞協会など日本の産業界を代表する128団体。これらの団体については、関係省庁の推薦によって選ばれたという。

 今回はTPPを積極的に推進する産業界や、政府の交渉に協力的な業界団体による、前向きな意見が聞かれるのではないかという予想とは裏腹に、説明会を取り巻く雰囲気は、驚くほど冷めていた。

 「業界の皆様から貴重な意見や要望を収集したい」という会の趣旨にもかかわらず、政府によるこれまでの交渉経緯や成果が一方的に説明された。それに対する参加者の反応は、メモを取る人も少なく、極めて鈍いものであった。

 質疑応答では、残り少ない時間にも関わらず、参加者からなかなか手が上がらず、沈黙が流れる場面が目立った。少数の質問者からは、TPPに消極的な団体からはもちろん、積極派と思われる団体からも、政府に対する厳しい質問が相次いだ。

推進派の団体からも厳しい声

 午前の部では、説明会の趣旨について、TPP交渉が秘密会合であることから、JA全中から「交渉に参加したら情報管理が厳しくなると聞いている。今回の説明会は、単なる『ガス抜き』ではないのか」との質問が上がった。石井審議官は「会合冒頭の趣旨で述べた通りであり、それ以上のことは申し上げられない」と弁明した。

 

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「【IWJブログ:「誰のためのTPP協定交渉なのか」政府の情報公開の姿勢に疑問の声相次ぐ ~TPP政府対策本部が経団連、JA全中、NHKなど128の業界団体向けに説明会を開催】」への3件のフィードバック

  1. 大庭孝広 より:

    日本のTPP交渉参加が、このような遅いタイミングになったのは、
    現在、これだけ強引に進めるところをみると不自然過ぎます。

    アメリカさまの意向通りに交渉内容を落ち着かせる為には、
    早期の交渉参加だと、後で国民が事実を知った時に、官僚も言い訳が効かなくなるから、
    意図的に交渉参加を遅らせたという事でしょう。

    そうではなく、日本のためだと考えていたならば、現在の強引さで早々に交渉参加していたはずです。
    途中の民主党政権は、自公政権の不満に対するガス抜きの意味もありますが、
    TPP交渉参加を遅らせるためでもあったのでしょう。

    日本国政府ではなく、アメリカ合衆国政府(日本出張所)です。 
    どうりで、何かと日本人に冷たいはずです。

  2. trustednature より:

    確かに不自然ですよね。推測でしかないですが、日本はアメリカに参加せざるを得ない状況に追い込まれたのではないか?とも考えられます。
    原発事故前から、アメリカがシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドなど4カ国で進めていたTPPに目をつけ、その後今の9カ国に。そして個別に米韓FTAなど結びながら経済大国3位の日本が震災で原発事故。エネルギーや産業資源そして食料自給率の低い日本、弱ったタイミングで、アメリカが攻勢を仕掛けてきた。戦争巧者アメリカらしい日本包囲網で経済戦争をしかけてきた。
    自由貿易協定だけでなく、モンサント社の遺伝子組み換え作物の特許縛りによって、日本の食糧輸入国の大半は抑えられつつあります。そしてEUはなんだかんだ白人社会ですし、アメリカお得意の回転ドア人事と企業買収。事実、EU内でも遺伝子組み換え作物の危険性を唱えた科学者が追いやられたりしていますからね。
    http://www.monsanto.co.jp/data/countries.html

    これは、推測でしかないですが、そう考えると、ここに来てのスピードと強引さ、憲法改正案で公益に反さない限りの言論の自由や国民の命、自衛軍そして、反対意見を無視してまで進む理由とそれをごまかす為のアベノミクス(株価を高め企業買収を防ぐためでもあるかも知れませんが)色々なことの筋は通ります。

    参加せざるを得ない状況に追い込まれた日本政府が慌てて対応しているそんな感じがします。気が付いたときには、王手だったのではなかろうかと。。もちろん予測が外れてくれることを祈りますが。

  3. ラブ&ラブ より:

    ジョセフ・スティグリッツ教授がレントシーキングとして批判しているように、TPPはグローバル企業が中心になって行なっているレント・シーキング(独占・寡占化の為のロビー活動)ですね。
    最近はスターバックスやアップルなどがタックスヘイブンを利用したような課税逃れが問題になっていましたが、TPPが施行されると、この手のことはより一層たち悪くなりそうですね。

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