「アメリカという煮えたぎった鍋に、カモがネギを背負って自分から飛び込むような馬鹿げた制度」~TPP参加をとめる!5.25大集会 2013.5.25

記事公開日:2013.5.25取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・久保元)

 2013年5月25日(土)12時、東京都港区の芝公園において、「TPP参加をとめる!5.25大集会」が開かれた。TPP反対を掲げる各種団体や組合などが横断的に構成した「STOP TPP ! !市民アクション」が主催したもので、全国各地から300を超える団体が賛同を寄せ、約2000名(主催者発表)が詰め掛けた。集会では14人の登壇者によるリレートークが行われ、TPPの危険性を参加者に訴えた。

 集会の最後には、「貿易をはじめとする経済活動は、人々の豊かな暮らしのためにあるべきであり、主権を尊重しあうものでなければならない。まだ遅くない。日本はTPP交渉の席につくべきではない。日本のTPP交渉参加を撤回させよう」という集会アピールを、満場の拍手によって採択した。その後、トラクターを先頭に銀座方面をデモ行進し、沿道の市民らにTPPの危険性を訴えた。

■全編動画

  • 内容
    12:00~ プレ集会(TPP反対の文化イベント)
    12:30~ 大集会 1時間程度「集会」
    13:45~ デモ行進(全体終了16:00)(銀座を通り東京駅横・鍛冶橋駐車場解散)
  • 日時 2013年5月25日(土)12:00〜
  • 場所 芝公園(東京都港区の芝公園)
  • 主催 STOP TPP!! 市民アクション(詳細

 集会では、14人の登壇者によるリレートークが行われ、TPPの危険性を熱く語った。このうち、主催者を代表して挨拶に立った白石淳一氏(農民運動全国連合会会長)は、北海道の現役農家としての立場から、「安倍政権が掲げている『聖域確保』は何ひとつ担保されていないばかりか、アメリカの要求を次々と丸飲みしている。TPPへの参加は、経済主権や食料主権を放棄し、国民生活全般に取り返しのつかない影響を与えるのは明白である」と述べ、政府の姿勢を厳しく批判した。

 長瀬文雄氏(全日本民主医療機関連合会事務局長)は、「TPPは、日本が世界に誇る国民皆保険制度をズタズタに壊すものだ。日本の平均寿命は世界ナンバーワン。これを実現したのは、いつでもどこでも、誰もが公的な保険が受けられるという制度の結果である。TPPの問題は経済の問題ではない。人間の命の問題であり、健康の問題であり、日本の主権の問題である。TPPとは、アメリカという煮えたぎった鍋に、カモがネギを背負って自分から飛び込むような馬鹿げた制度であるということを、多くの国民に知らせよう」と訴えた。

 金子勝氏(慶應義塾大学教授)は、「メディアは壊れている。TPPの中身の恐ろしさについて、ごく初歩的な報道すらないことに、私は『この国のメディアは、北朝鮮メディアなのではないか』という疑いを向けはじめている」と述べ、さらに、「北朝鮮との違いはただひとつ、アナウンサーが勇ましいか、勇ましくないかだけの違いだ」と皮肉った。

 集会の最後に、「貿易をはじめとする経済活動は、人々の豊かな暮らしのためにあるべきであり、主権を尊重しあうものでなければならない。まだ遅くない。日本はTPP交渉の席につくべきではない。日本のTPP交渉参加を撤回させよう」という集会アピールを、満場の拍手によって採択した。その後、トラクターを先頭に銀座方面をデモ行進し、沿道の市民らにTPPの危険性を訴えた。

リレートークの発言要旨

◆白石淳一氏(農民運動全国連合会会長)
「安倍政権が掲げている『聖域確保』は何ひとつ担保されていないばかりか、アメリカの要求を次々と丸飲みしています。TPPへの参加は、経済主権や食料主権を放棄し、国民生活全般に取り返しのつかない影響を与えるのは明白であります」

◆はたともこ氏(生活の党・参議院議員)
「安倍総理はオバマ大統領と聖域交渉をしてきたのではありません。単に『読み上げてきた』だけです。TPPに加入してしまうと、例えば、打つ必要が全くない『子宮頸がんワクチン』の法定接種を中止することになった場合、ISD条項によって日本政府が数千億円の損害賠償を請求される懸念が生じます。イレッサ(肺がん治療薬)でもそうでしたが、日本は『人体実験パラダイス』です。TPP加入によって、それがさらに拡がってしまいます」

◆紙智子氏(日本共産党・参議院議員)
「TPPの本質は、アメリカ主導で多国籍企業の利益のために他国のルールを変えさせていくというものです。今後、際限のない譲歩が迫られる可能性があります。私は、国会質疑で安倍総理に対し、『TPPは、震災の被災地にどれほどの打撃を与えるのか、考えているのか』と質問したら、『経済全体にとってはプラスになる』と相変わらずの答弁でした」

◆福島瑞穂氏(社会民主党党首・参議院議員)
「茂木経産大臣は『日本はマレーシアでのTPP協議に7月23日に参加する』と言いました。協議は25日に終わるのに、日本は2日半で協議をやってしまおうということです。満足のいく交渉などできません。2日半で日本国民の生命を守れるのでしょうか。自民党は『日本を取り戻す』と言っていますが、『日本を売り飛ばす』のが自民党の政策です。『ふざけるな』と言いたいです」

◆大河原雅子氏(民主党・参議院議員)
「TPPの言い出しっぺである民主党に残り、党内闘争をしています。総選挙で多くの仲間を失いました。それは、民主党の未熟さゆえのものでしたが、多くの市民運動、労働運動に課題を投げかけたのではないかと思っています。TPPは『異次元の協定』です。農業だけではない21もの分野に影響を与えます。安倍政権はTPP参加を既定路線とし、日米同盟を絶対無二としている、アメリカに『YES』と言うしかない政権であります」

◆久保田みき子氏(農民運動全国連合会女性部長)
「どこの国の首相かわからない安倍政権の暴走を止めるために、この国を本当の意味で守るために、我々は農繁期にもかかわらず、全国から参加しています。昨年の総選挙で、TPP反対を公約に掲げて当選した国会議員の裏切りは絶対に許しません」

◆荻原武雄氏(いわて食・農・地域を守る県民運動ネットワーク会長)
「東北の復興が進んでいないときに、『TPPとは何事だ!』と思います。残念ながら、一般市民にはTPP問題が浸透しておりません。そこで、我々は県出身の国会議員に対し、『TPPに賛成なのか反対なのか』という内容のアンケートを実施し、その結果を県民に公開することにより、参議院選挙の投票の参考材料にしてもらうことにしました」

◆長瀬文雄氏(全日本民主医療機関連合会事務局長)
「日本の医療界は、医師会も含めて、すべてTPP参加に反対しているということを、まず申し上げます。TPPは、日本が世界に誇る国民皆保険制度をズタズタに壊すものです。日本の平均寿命は世界ナンバーワンですが、これを実現したのは、いつでもどこでも誰もが公的な保険が受けられるという制度の結果です。しかし、保険の自己負担率が増やされ、医療を中断するケースも増えています。代わりに民間の医療保険が伸びてきました。テレビや新聞で毎日のように、アメリカ資本のアヒルの宣伝が行われています。民間医療保険を発行しているのは、ほとんど『ア』がつきます。アメリカンホームダイレクト、アリコジャパン、AIU、全部アメリカです。これ以上自己負担が増えたら、アメリカの資本が大儲けします。これがTPPの本質です。アフラックが日本で売り上げているのは年間5兆円です。5兆円あれば、国民の医療費、窓口負担をすべて無料にできます。TPPの問題は経済の問題ではありません。人間の命の問題であり、健康の問題であり、日本の主権の問題であります。アメリカという煮えたぎった鍋に、カモがネギを背負って自分から飛び込むような馬鹿げた制度であるということを、多くの国民に知らせましょう」

◆山田真吾氏(首都圏青年ユニオン書記長)
「我々は、日頃から『低所得で生活が立ち行かない』という相談や、『始発に乗り、終電で帰っている』といった、長時間労働の相談などを多数受けています。今の日本に必要なのは、労働者の権利を守ることと、貧困問題を解決することです。TPPによって労働力の移動が懸念されています。政府は『心配ない』と言いますが、労働者派遣法ができたときはどうだったか。小さな問題からいつのまにか、大きな落とし穴に広がっていきました。『派遣切り』『年越し派遣村』の問題のように、日本全体に貧困をもたらしていきました。そういう歴史を繰り返してはいけません」

◆内田聖子氏(アジア太平洋資料センター事務局長)
「ペルーのリマで行われたTPP交渉に国際NGOの一員として行ってきました。会場にはアメリカの多国籍企業が多数押しかけていて、交渉官に対し様々な圧力を掛けていました。国と国との交渉であるはずなのに、裏側では企業の思惑が最大限に反映されています。交渉そのものは、相当難航しています。暗礁に乗り上げています。日本は7月に交渉参加したい意向ですが、『日本が遅れて参加して、(日本にとって有利な成果を得られるのは)全く無理。7月にたった2日だけ参加しても意味がない』というのが、多くの交渉官やNGOにとっては常識です。つまり、日本政府が言っていることと交渉の実態はかけ離れています。こんなことが許されていいはずがありません。TPP交渉そのものを葬り去ることに寄与していきたいです」

◆首藤信彦氏(TPPに反対する国民会議事務局長・前衆議院議員)
「ショッキングなことを言いますが、農業は、もはやTPPの議題ではありません。農業は解決済み、議論が終わったテーマです。『日本の農業は、日本政府がすべて(条件を)飲んだ。長年日本と交渉してきたが、いすから転げ落ちるほど、気を失いそうなほどうれしい』とアメリカの農業団体は言っていました。これが事実であります。日本政府や自民党はずっと嘘を言ってきています。日本の農業関係者を騙した日本政府や自民党を絶対に許してはなりません。アメリカがTPPで日本に求めていることは、日本の自動車メーカーに部品を供給している日本の中小企業の職を奪うことです。TPPは我々が考えているよりもはるかに恐ろしいものだということを理解していただきたいです。日本のみならず世界にとって害のある邪悪なシステムであります。TPPそのものを潰しましょう」

◆大出友記子氏(東都生協組合員常任理事)
「我々は、『安全・安心な食料が安定的に確保できる社会』『環境にやさしい、持続可能な農業ができる社会』『持続可能な社会を求める消費者が、主体的に参加できる社会』を目指しています。TPPはこれらの願いを根本的に無視するものです。消費者にとっては、食品添加物、農薬、BSE、遺伝子組み換え食品への不安があり、TPPは安全性のリスクを高めるものです。生産者にとっては、TPPによって、安い外国産食材が入ってくる影響で、昔からやさしく営んできた日本の原風景を破壊してしまい、ただでさえ低い自給率をさらに低下させてしまう恐れがあります」

◆金子勝氏(慶應義塾大学教授)
「民主党はマニフェストを投げ捨てるのに2年掛かりましたが、自民党は3ヶ月で投げ捨ててしまいました。ISD条項についても、国民皆保険についても、聖域なき関税撤廃についても、安全基準についても、政府調達や金融における日本の特殊性を考慮するなど、あらゆる交渉参加の6原則が、一切書かれていません。これほどの公約違反をしても、民主党がやればメディアはいっせいに叩くのに、自民党がやると、『TPP交渉に向かってがんばれ』というエールを送っています。メディアは壊れている状況です。TPPの中身の恐ろしさについて、ごく初歩的な報道すらないことに、私は『この国のメディアは北朝鮮メディアなのではないか』という疑いを向けはじめています。北朝鮮との違いはただひとつ、『アナウンサーが勇ましいか、勇ましくないか』だけの違いです。そういう現実に愕然としています。政府調達、急送便(国際速達便)について、日米合意の中にはっきり書かれているのに、日本政府の発表から漏れています。郵便が政府系企業で優遇措置があることに対し、激しいプレッシャーが掛かってくるでしょう。競争条件を郵政民営化のときのように逆戻りさせれば、地方の小さな郵便局は潰れていくでしょう。あるいは、かんぽ(簡易保険)のガン保険参入を自ら投げ捨て、BSEがらみの牛肉輸入制限を緩和しましたし、危険部位もOKになってしまいました。さらに、医療器械の審査基準の認可をアメリカ並みに緩和することによって、日本製の医療器械がどんどんアメリカ製やドイツ製に駆逐されつつあります。医薬品の知的所有権の問題も、その期間を延長させて、米韓FTAでは薬価の保険基準決定にまでアメリカが介入することが認められています。これまでは、新薬が入ると、診療報酬改定のために(薬価が)落ちていく仕組みだったのに、これが高止まりしていくことになります。そうすると保険財政が圧迫されるので、診療報酬を上げずに、医療器械と医薬品の支払いのために、わが国の保険料が使われていくことになります。多くの、小さな、地方の健康保険は、財政が苦しい状況にありますが、これからも圧迫をされていくことに違いありません。診療報酬が上げられないと、民間の病院は好んで保険外診療で収益を上げようとするでしょう」

◆秋山豊氏(JA茨城県中央会専務理事)
「自民党色の強いJAの中で、『最も過激な県』として、この2年間闘ってきました。フランスの記者に、『日本の農民はあまりにおとなしい』と言われましたが、今日は怒りをぶつけるために、トラクターを動員してデモに参加します。TPP交渉は不利な状況ですが、我々は諦めていません。3つの山場があると思っています。第1。7月にアメリカ議会が日本の参加を認めるのを、いかに阻止するかです。ワシントンポストに記事を載せようといま努力をしています。第2。仮に参加しても、日本が自民党の公約6項目を主張し通せば、合意には至りません。年越しになって延長になります。第3。万一、そこも過ぎてしまったら、日本の国会での批准。私たちは推薦議員から、『批准には反対する』という誓約書を取っています。この最後の砦を主張して、何が何でもTPPは阻止します」

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