「国会は一体何をやっているのですか!」大手メディアに無視された児玉龍彦氏「国会での熱弁」~岩上安身の緊急インタビュー 第150回 で見せた25秒間の沈黙の意味とは 2011.8.6

記事公開日:2011.8.6取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・富田)

 「私は満身の怒りを表明します」――。2011年7月27日、国会の衆議院厚生労働委員会での参考人答弁で、福島第一原発事故後の国の対応を厳しく批判した児玉龍彦氏(東大アイソトープ総合センター長)の姿は、当時、多くの共感を呼んだ。

 インターネット上の言論空間は、しばらくの間、この児玉氏の質疑でもちきりとなり、ユーチューブ(動画投稿サイト)では、その動画が次々にコピーされ拡散。再生件数は高止まりした。

 原発事故当時、枝野幸男官房長官(当時)が「直ちに健康に影響はない」と連呼していた時から「これは大変なことになる」と危機感を持っていたという児玉氏は、「政府と東電は今回の事故で放出された放射線量の総量を全く出していない」と糾弾した。

 東大アイソトープ総合センターは、「(今回の事故で)広島原爆の29.6個分、ウラン換算では20個分が漏出した」と事故による広範囲に及ぶ汚染を独自に計算。質疑では、「汚染地で徹底的な測定をできるようにしなければいけない」と訴え、「なぜ政府は全面的にお金を使わないのか。そのようなことが全く行われていないことに私は満身の怒りを表明します」と、国の消極的な姿勢を厳しく批判した。

 また質疑では、放射線による健康被害についても言及。チェルノブイリ原発事故の際にも統計学的に影響があったと分かったのは20年後であったことに触れ、「疫学的な証明は非常に難しく、全部の症例が終わるまで証明できない」と指摘。住民の健康被害と事故の因果関係を調査する立法措置を急ぐよう訴えた。

 「7万人が自宅を離れてさまよっている時に、国会は一体何をやっているのですか!」。

 答弁で児玉氏が発した最後のひと言は、多くの反響を呼んだ。しかし、この当時、新聞やテレビがこの模様を伝えることはなく、辛うじて東京新聞の「こちら特報部」が報じたのみだった。

 この質疑は海外でも多くの反響を呼び、同年12月、英科学誌ネイチャーは児玉氏を「科学に影響を与えた今年の10人」の一人に選んだ。

 この答弁を無視・軽視せずに国民に伝えていれば、児玉氏の考えに共感する日本人の数はもっと増大し、その当時の、政府の原発事故対応のまずさを批判する世論は、より強いものになっていたのではないだろうか。2014年9月現在、政府・自民党は原発再稼働を推進。児玉氏の訴えは、今も無視され続けている。(加筆:佐々木隼也 2014.9.15)

 2011年8月6日、その児玉氏を、岩上安身が福島県の南相馬市でインタビューした。国会答弁の内容を意識した問いかけに対し、児玉氏は、放射能汚染された福島を徹底的に除染することの大切さを、改めて力説。日本が持つ環境関連技術のレベルの高さに照らせば、楽観的な見方も可能、との認識を示した。

「原発の復活」を要求する経済界にひと言

 インタビューの冒頭で、児玉氏は「現在、土壌の除染には3つの技術があるが、今回の福島事故のケースでは、そのうちのどれが有効かを見極める実証実験を一刻も早く始める必要がある」と口調を強めた。

 児玉氏は国会答弁でも、急場しのぎではない、長い時間をかけて行う徹底的な除染の必要性を強く訴え、「そのためには、莫大な国富投入は避けられない」としていた。岩上安身が「日本の財政が破たんしない範囲で、福島の復興につながる除染を行うことができるのか」と疑問を投げかけると、児玉氏は「われわれが先祖から受け継いだ土地を、子孫に渡すためにきれいにすることを、お金という尺度だけで論じていいものなのか」と話した。

 これに対し岩上安身は、「とはいえ、現実的な問題として、福島で抜本的な除染を行ったら、(児玉氏も試算したように、イタイイタイ病のカドミウム汚染土壌の入れ替え費用を経験値にした場合)数百兆円のお金がかかるという見方も出てくる以上、予算という要素は外せないと思うが」と重ねて訊いた。

 それに対し、「国が、まず使える金額を呈示すべきだ。一方、経団連などの財界は、今なお『原発がなければ、日本の産業界は成り立たない』と主張するのだったら、被災地の除染に金銭的支援を行う姿勢を見せてほしい」と児玉氏は言う。

 さらに、「科学者は(除染という)具体的な目標ができると、ものすごい力を発揮し、グッドアイデアを生み出す」とも語り、もっとも大切なのは「早期に徹底的な除染をやり抜く、という日本人の総意だ」と力を込めた。

25秒間の沈黙 ~低線量被曝を軽く見る学者らを、どう思うか

 岩上安身は、福島の被災地で、福島県立医科大学副学長の山下俊一氏と(同じく2011年3月19日に福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就いた)長崎大学教授の高村昇氏が被災地を回り、「100ミリシーベルト以下の被曝は恐れなくていい、避難は不要」という内容の講演(山下氏は後日、この発言に関して補足説明をした)を重ねていることに言及した。

 その上で、「事故直後の福島は情報が入りにくく、そういう中で、『低線量被曝は、人体にそれほど悪影響を及ぼさない』という話をされると、かりそめの安堵感が広がってしまう」として、次のような質問を児玉氏にぶつけた。

 「そこでお聞きしたい。低線量被曝をあまり怖がるなと説く有識者と、そうではない児玉さんらとでは、根本的な部分で、だいぶ温度差があるように思えてならないが、その辺をどう考えているのか?」。

 児玉氏は25秒間の長い沈黙のあと、「意見がないわけではないが、現時点で、いろいろなことがわかっているわけではないので、もう少し考えさせてほしい」と応えた。

 その上で、「自分のメッセージは、皆が持っている能力の良い面が生きるようにしたい、ということ。単に、国会で怒って終わりにしたくない。国会議員でも研究者でも、いろいろな意見を持ってやっていることに対しては、原発事故の被害に遭った住民のためになるように、がんばってほしいと思う」と述べた。

 岩上安身が「その通りなのだが、絶対に避けては通れない知的議論があるはずだ。本当に(年間の被曝量が)20ミリシーベルトや100ミリシーベルトでいいのか、そこに住んでもいいのか」と畳み掛けると、「その、神学論争みたいなものに時間を取られていいのだろうか。ひとつの数値にこだわっていると、変な議論になる」と児玉氏は答え、自身が妻への生体肝移植手術のドナーになった経験から、「肝移植の時はCTスキャンを3回行い、合計21ミリシーベルトの被曝になったが、私は全然気にしていない」と笑った。

 さらに、児玉氏は「もっと具体的に、こういう健康被害が出たから対応しようとか、ここが放射線量が高いから下げよう、安全に除染しようということをやったほうがいい。前向きに、みんなで知恵を絞っていくことだ」と話した。 (サマリー執筆・2014年8月)

補償を安く上げたい思惑がからむ安全基準

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  1. ななしのごんべ より:

    私は、児玉龍彦氏が国会答弁をした当時から、子供の避難を全然訴えない。除染を必要なまでに訴えるところが、おかしいと思っていた。移染したところで、放射能は消えない。別の場所に移動するだけだ。だから、除染ではなく、移染に過ぎない。さらに、住人の住んでいる住宅地で、高圧スプレーなどで移染作業をしたら、除染作業員や住人に二次被爆をうみ非常に危険だし、隣近所に放射能が撒き散らされること事態、正気の沙汰ではない。福一原発から放射能の放出は止まっていない。一時的に染量は下がっても、又元に戻る。移染作業自体、まったく税金の莫大な無駄だ。そんなことをするより、県民の命を守る為には県民を避難させる意外に無く、避難費用に使うべきだと当時から思っていた。多額の税金を使って、汚染地で徹底的な測定、住民の健康被害と事故の因果関係を調査する立法措置をしたところで、(後に、国際医療マヒィア、エートスプロジェクトが福島に乗り込んで調査を始めている)避難させなければ、福島県民、子供の命は守られない。福島県民は人体実験用のモルモットではない。児玉龍彦氏は、測定、立法措置をしないことで 何を怒っているのか? 私にはまったく理解出来なかった。共感など出来る訳がない。共感してる人々のことも理解できなかった。「福島県民、子供の命を守る為に、国がなぜ、今直ぐ避難させないのか、私はそのことに満身の怒りを表明します」と答弁したなら、共感したであう。今にして思えば、児玉龍彦氏の国会答弁は、福島エートスと移染作業を正当化させる、非常に悪質なパホーマンスだったと思えてならない。シェルノブイリ事故の健康被害は、チェルノ事故6年後にパンデミックを迎えている。日本は2017年頃には、パンデミックを迎えるはずだ。この頃になれば、なぜ、県民を避難させなかったのか? 国の間違いが嫌でも思い知ることになるだろう。そして誰が、悪魔だったのか、白日の下に晒される時が必ず来る筈だ。

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